マガジンのカバー画像

花に嵐の映画もあるぞ(邦画編)。

250
わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦…
運営しているクリエイター

#ロードムービー

ヒトとサルのわかれ道、訣別。パンデミック後を期せずして描いた「猿の惑星 聖戦記」。

なんか地味。 一面銀世界を、寂しくサルが彷徨いているだけ。 2017年にひっそり公開されたシリーズ第3作「猿の惑星 聖戦記」 観賞後の感想は、これ一色だったと思う。(そもそも新シリーズ未見の人にとっては「なぜ、いま、猿の惑星なのか」 で止まっていたことだろう。) ヒトとサル、対立する二者、文明の衝突、地球を継ぐのは誰か? ひりひりとした緊張感を保ったまま、ひとつの寓話を現在進行形で描いたところに、新シリーズの存在価値はあると思う。 そして、期せずして「ウイルスによる人類の

いい日旅立ち、ワインの休日。アレクサンダー・ペインの「サイドウェイ」。

いずれ何処かへ行きたい。無理にでも、何か理由を見つけて。例えば、気の置けない男ともだちと、何処かに旅するのを夢見ては、いかがだろうか。 その気分をユーモアにのせて描いたのが、アレクサンダー・ペイン監督の「サイドウェイ」だ。 カリフォルニア州サンディエゴに住む、×イチで小説家志望の中年教師マイルス。 彼の大学時代からの悪友であり、落ち目のテレビタレントであるジャック。 凸凹ばかりの二人の人生も、マイルスはようやく書き上がった小説を出版社に持ち込み、ジャックは不動産屋の娘と結婚

映画「荒野にて」…美しい馬のために、どうか、逃げ出す力を。

なんというか、いま ここから逃げ出したい という気分がある。 それを、「青春の煽動者」寺山修司は あゝ、荒野。 の感嘆符込めた一言で、的確に捉えた。 荒野は不毛な土地のこと。 身も心も枯らしたこれ以上渇くことない大人には住める土地でも、 みずみずしい情感を持った少年には、とうてい住むに耐えきれない土地だ。 だから少年は荒野を出て他所を目指そうとする、 しかし いくらはなれてもはなれても「ここより他の場所」に到らない心の焦りは75セント分の切符ではどうにもならないの

映画「旅の重さ」_これは、誰もが持っている、まっしろな青春のさけび。

_ここより外に出たいと思う。なんならむかし だって、いい。 それが、70年台の日本 だとしても。 70年台の青春映画を選り好みせず観てみると、 時々、面食らうほど「ピュア」で「感傷的」な作品に出くわすことがある。 洋画だけでない、邦画においても。 それも、実録、アクション、アート系、ロードムービー、形式をいっさい問わずに。 70年代とは、まだまだ日本が貧しく、古い因習があちこちに残っていた時代。  その中で青臭くもじたばたしながら生き抜こうとする少年や青年の姿を、映画の

フランス映画「グッバイ・サマー」…忘れられない、キミとの夏休み。

まず目を引くのは、このデカブツだろう。 (公式サイト TOPページから引用) なるほど、これは突拍子もない「夢の車」。ハタからみれば「変わった子」同士のテオとダニエルとが出会う。 二人は、自分たちで作った「夢の車」で旅に出る。 それは、一軒家がにょっきり脚に車輪を生やしたすがた。 車の中で食事を作り、寝泊まりできるだけではない。 パトカーの接近を知るや、道路の脇に寄せて車輪をフタで隠すだけで、「タダの小屋」に擬態し、通り過ぎるのを待つことができる、優れものだ。 『こ

山田洋次が描いたディアスポラ、過酷な旅路「家族」。

ある大家族が、南の島・長崎県伊王島から北の大地・北海道へと、移住を決める。 これが70年代ニッポンの話か⁉︎と驚かされる、過酷でシビアなドラマだ。 (「男はつらいよ」ほか松竹の顔・笠智衆だけが癒し。) そのシビアさを伝えるには、旅の経緯から途上までを記した方が、よっぽど早いだろう。 1.思いを胸に、いま、旅立ちのとき。炭鉱ではたらく夢みがちな父ちゃん(演:井川比佐志)が、そもそもの言い出しっぺだった。 毎日毎日黒炭に塗れてあくせくする肉体労働、単調といえば単調、今の仕事は