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花に嵐の映画もあるぞ(邦画編)。

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わたしの好きな映画を、「褒めること」意識してつらつら書いていきます。 取り上げる映画は、時にニッチだったり、一昔前だったりしますが、 そこは「古いやつでござんす」と許して、ご容赦…
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#アカデミー賞

「統計学アレルギー」も、今の時代じゃ笑い話。「常識」に楯突くブラピの姿に、喝采挙げろ。それが「マネーボール」。

ポン・ジュノ、韓国映画、そしてアジア映画、ここにあり。 の結果に終わった第92回アカデミー賞であった。日本映画も続かなくちゃ。 さて、今回、助演男優賞を受賞したのが「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のブラッド・ピット。 「ムーンライト」「マネー・ショート 華麗なる大逆転」「それでも夜は明ける」等この数年間自ら製作した作品は確かに賞レースを賑わしていたが、純粋に自身の出演だけで賞レースに加わったのはずいぶん久しぶりのことになる。 そして、男優賞獲得は本人にとって

幽霊を超えた神々が降り立つ地平。小泉八雲原作 小林正樹監督の日本映画「怪談」

60年代、日本映画が何度もAcademy Award for Best International Feature Filmにノミネートされた歴史は、意外に忘れられている、しかしこれは誇るべき歴史と思う。 1965年(第38回)で本賞にノミネートされるも受賞を逃した 小林正樹監督「怪談」もこのひとつ、今では忘れられた悲運の傑作、というべきだろうか。 (だが、同年のカンヌ国際映画祭 審査員特別グランプリを受賞している。) 小泉八雲原作の『怪談』に収録されている「黒髪」「雪女」

味噌汁なアメリカ映画「黄昏」_ 老いていくものの、名残のひかり。

「レッズ」と同年(第54回)アカデミー賞で作品賞を含む10部門の候補となり、そのうち主演男優賞、主演女優賞、脚色賞の3部門で受賞したのが 「黄昏」(原題:On Golden Pond)だ。 本作において、名優ヘンリー・フォンダが史上最高齢の76歳での主演男優賞を受賞している。 アメリカ映画なのに、味噌汁の味がする。 衰えていくことを受け入れつつも、老いてゆく悲しみを感じずにいられない。 とはいえこれは、 夕陽にきらめく黄金のさざなみは 私の人生の最高の輝きだ と、本邦公

激動の時代、男は革命と愛を…両方、夢見た。ウォーレン・ベイティ主演・監督「レッズ」。

昨日の記事で「米アカデミーならざれば」の時代があった、と書いた。 その一方で、米アカデミー賞を獲得したに関わらず、日本で公開してもぱっとせず、そのままマイナーに終わった作品もある。 1981年度アカデミー賞で最優秀監督賞(ウォーレン・ベイティ)、最優秀助演女優賞(モーリン・ステイプルトン)、最優秀撮影賞(ヴィットリオ・ストラーロ)を受賞した「レッズ 」がその顕著な例だろう。 (この年作品賞を受賞したのが「炎のランナー」。間違いなく、喰われた。) ※あらすじ・キャスト・スタ

苦悩と忍従のひと。それが「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」。

第92回アカデミー賞で、メイクアップ&ヘアスタイリング賞に輝いた「スキャンダル」。受賞したのは日本人のメイクアップアーティストである辻一弘。 彼が同賞を受賞するのは、2回目。 今回は2017年(第90回)にて彼が他2名と共にメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」を紹介。 主演のゲイリー・オールドマン直々のオファーにより、その特殊メイクを担当。 結果、ずんぐりで、髪がうすく、眼つきは鋭く、背中は曲がっていても、荒

映画「厳重に監視された列車」_いつ、どの時代にもある戦時下の凄春。

60年台後半、フランス・イタリアとAcademy Award for Best Foreign Language Filmの最終選考で幾度も競り合った国がある:チェコスロバキアだ。 60年代、「雪解けの季節」に訪れたチェコ・ヌーヴェルヴァーグの波。 その特徴をまとめてみれば、軽快な台詞、スピーディーで意表をついた展開、日常生活へのまなざし、ペーソス、何より大事な味付けは「自分のことを真面目に捉えすぎない、ちょっと距離をとってアイロニーに満ちた姿勢」。 「先鋭」を走ることに拘

「ねぇ、お墓を作ったことある?」 死に浸された少女のお話、それが「禁じられた遊び」。

今年もアカデミー賞のシーズンが近づいてきた。 せっかくの機会、アカデミー賞を獲得した古今の名作を取り上げようと思う。 まずは、Academy Award for Best International Feature Filmの領域から 1951年(第25回)受賞 ルネ・クレマン監督の「禁じられた遊び」を。 皆さんは、「ちいちゃんのかげおくり」(あまんきみこ・作)のことを覚えているだろうか? 国語の教科書に大体は載っていた、一度は読んだことであろう。 戦火の後、家族で唯一生