ぬけだせない理由。それを黒澤明は「どん底」で70年前から見抜いていた。
直球のタイトルだ。
原作はマクシム・ゴーリキーの戯曲「どん底」、
この舞台を日本の江戸時代の貧しい長屋に置き換えて、黒澤明が映画化したものだ。
長屋と言っても、そこは低い湿地に建っている小部屋の多いスラム街だ。
物理的にも抜け出せないのは、この1カットから観て取れる。
彼らは、外界から見下され、隔離されている。
取り立てていうべき筋も、重要な謎もない。
住人たちの無気力な(そして何のシンパシーも抱かせない)日々が描かれる。
彼らは、どん底から這い上がろうとも思わない。
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