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全部ゆるせらたいいのにを読んでみて
一木けいさんの「全部ゆるせたらいいのに」という作品を読ませていただきました
小説を読むと毎度のことなのですが、物語の世界にスッと引き込まれてしまい時間を忘れて一気に最後まで読んでしまいます
小説を読みながら何度も胸が締め付けられたり、涙が溢れて出てきたりとものすごく感情を揺さぶられる作品で
愛というのは何でこんなにも複雑で難しいものなのだろうと考えさせられました
どのような形の家族であったとしても、必ずそこに愛はあって親は子を子は親を愛し、愛したいと願っているのだろうなと
だけれどもその形が歪であったり、複雑であるがゆえに、愛をまっすぐに送ることも受け取ることも難しい現実がこの世にはたくさんあるのでしょう
それは決して他人ごとではなく私自身も含まれています
物語の軸に「酒」というものがあり、アルコール依存によってどんどん歪な形になっていく家族の姿が描かれていました
「酒」がキーワードになっていることは間違いないのですが、それよりも小説を読んで一番強く感じたことはお酒の怖さではなく
人間の不器用さとコミュニケーションの大切さです
そんなこと改めて言うようなことではないかもしれないし、私があえて焦点を当てなくてもこの世界で生きている人であれば、誰しもが痛感していることなのでしょう
だけれども、あえて伝えたくなるほどにこの小説にはこの二つのメッセージがギュッと詰まっていて、痛いほど突きつけられるのです
どうして人はこんなにも素直になれないのだろうか
どうして人はもっと深くコミュニケーションを取ろうとしないのか
いつも自分の頭の中だけで世界が完結して、周りはもちろん自分自身の本音すら気づかずに妄想の世界にとらわれています
もっと自分の気持ちを素直に伝えればいいのに
もっと相手の心の内を尋ねてみればいいのに
それが容易にできたらどんなに生きやすいことか
妄想の世界で繰り広げる愛の物語は、愛するということがどれほど尊く残酷なものなのかを教えてくれました
それでもこれからも誰かを愛することをやめたくはないし、誰かに愛されているという事実をなかったことにはしたくはないですし
それがたとえ歪な形だったとしても、それすらも愛であったと受け止めて
そして本当に「全部ゆるせたらいいのに」と、そう感じさせられた小説でした