読書感想『レーエンデ国物語』多崎礼
超絶王道ファンタジー…ファンタジーど真ん中な一冊。
騎士団長で英雄な父と、叔父により政治の道具にされそうな娘ユリア、英雄に命を救われたことのある弓の名手トリスタン。
物語の中心であるレーエンデは自然豊かであるが、同時に不治の病である風土病を抱えた土地でもある。
満月の夜にレーエンデは銀の霧に包まれ、その霧の中にいたものを銀の病で蝕むため周りの国々から畏怖されている。
自分たちの覇権のためにレーエンデの土地を奪おうとするもの、風土病の治療法を見つけたいと考えるもの、レーエンデを豊かにしたいと願うものなどの思惑が交錯しながら物語は進んでいく。
めちゃくちゃ王道…なので、こう…状況だけを並べるとどこかで見たような…感が若干あるのはご愛敬である。
そこはもう、様式美として…その様式美の中でどれだけの展開力やそれぞれの人物の厚みがあるかを読んでほしい。
それぞれの抱える事情と思惑と、その中での変化、そして個々の力だけではどうにも出来ない現実など読み飛ばすのは勿体ない圧倒的スケールがぎゅと詰まっている。
どんなに願おうと、どれだけ抗おうと、一人の人間がすぐに変えてしまえるものなどはそこになく、でも彼らが必死にこれからをつかみ取るために種子を巻き続ける、そういう一冊だ。
読んでいる途中で「あれ?これ一冊でどう持っていくの?めちゃくちゃシリーズ続いちゃうやつ??」と不安になる壮大さはなのだが、 父、ユリア、トリスタンの物語としてはきちんと終わりを迎えるのであまり長期で刊行待って読むのは苦手という方でも手を出して問題ない。
ただやっぱりシリーズにはなるようで、レーエンデの別のキャラクターたちの話が出るとのことなので私は迷わず購入予定である。
恐ろしい病を抱えながらも魅力的な土地レーエンデ…その魅力を是非一読してほしい。
・上橋菜穂子『鹿の王』『香君』
・高殿 円『忘らるる物語』などで胸躍った人にオススメ!
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