読書感想『菅原伝授手習鑑』三浦 しをん翻訳版
学問の神様ともいわれる菅原道真こと菅丞相。
かつて菅丞相の家来だった四郎九郎には三つ子の息子、松王丸・桜丸・梅王丸がいる。
梅王丸は親に従い菅丞相の牛飼に、桜丸は斎世親王の牛飼に、しかし松王丸は菅丞相の失脚を狙う藤原時平の牛飼となったことで、三つ子は敵対関係になってしまった。
天皇を亡き者にして自分が天下をとろうとしている藤原時平は菅丞相を左遷に追いやる。
浄瑠璃や歌舞伎の名作のひとつである『菅原伝授手習鑑』を三浦しをんの翻訳で楽しめる一冊。
古典とか文芸とかにとんと疎いのだが、興味がないわけでもないので三浦しをん先生に惹かれて読んでみたり…。
なんだが、お、おぉ…昔の日本人の思考回路…やべぇな、ぶっとんどる。
主君と庶民の命の重さに差がありすぎて…主君のためなら自分の子の命も差し出せるとかおおうん、凄いな、どういうことなの…
責任感じて切腹しちゃうのもあれだし、それの介錯を務められる親とか…なんかもう…凄いね、凄いわ。
いやぁ…タイトルは何となく知ってるものの内容など全然知らなくて…ちょっとした興味本位で読んだんですが…面白いし勉強にはなったんだけどそれ以上に困惑が強い。
自分の目的のために嫁を殺す…はわかるんだが(いやそれもどうよ)、切腹して忠義を果たすとか、若君を助けるために息子を身代わりに差し出すとか…えぇぇぇぇ…それが美徳とされてきた異常性にぎょっとしちゃった…。
そういう理解しきれない感覚には呆気にとられつつも、話の流れとしてはなるほどなかなか興味深い。
そして、三浦しをん先生の文章はちょっとコミカルで読みやすく、知識ゼロでも面白く読める一冊でした。
いや、うん…話の筋はわかったけど、理解はできてないが…(笑)
なんか…なんていうか…強烈…うん、強烈の一言に尽きる。
ただこの筋を知ったうえで歌舞伎とか浄瑠璃をきっちり見てみたくはなりました。
そうなのよ、現代エンタメが好きだからここ何年かのヒット作は相当数摂取してきてるんだけども、文学とか古典とか、礎になってきたような作品をほとんど読んだことがなくて、知識が不足してるんですよね…。
そもそもの教養不足のせいで魅力を感じきれてない作品があることも理解してるので少しずつでも触れていきたいなぁとつくづく思ったり。
その流れで実は今「千夜一夜物語」の一巻も並行して読んでるんだが…
読みたい本、読んでおきたい本が多すぎて全然時間が足りないですね…。
もっと昔からちょっとずつ勉強しとけばよかったね…と後悔先にたたずな気分になりました。
うん、興味があるときの入り口としてはとても読みやすい本だったと思います。
こんな本もオススメ
・森見 登美彦 他(翻訳)『竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土左日記/更級日記』
・森見登美彦『新釈 走れメロス 他四篇』
僕の読んだ古典やら文豪は、基本モリミーの現代訳である(笑)
森見登美彦先生大好きなのよ…