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日本の喫茶文化の歴史

文 / 橋本素子 写真 /『和華』編集部

著者:橋本素子
神奈川県出身。奈良女子大学大学院修士課程修了。現在京都造形芸術大学非常勤講師。専門は日本中世史(喫茶文化史)。著書に『日本茶の歴史』
(淡交社 2016 年)、『中世の喫茶文化』(吉川弘文館 2018 年)他。社会人向け講座に力を入れ「お茶の歴史講座」を開催している。

日本の喫茶文化の歴史

p2 右後ろに見えるのは中国杭州市経山寺の茶園

▲右後ろに見えるのは中国杭州市経山寺の茶園


日本の喫茶文化の歴史とは、中国から喫茶文化を受容し、それを長い年月をかけて日本の風土に合うようにアレンジし、「日本茶」となるまでの、渡来文化の日本定着化の歴史です。日本には、過去三度、当時の先進国である中国から喫茶文化が伝えられました。


中国からの伝来

一回目は、9世紀前期、唐から茶を煮出して飲むことに特徴がある喫茶文化が伝えられました。この飲み方を煎茶法といいます。この煎茶法という用語は、茶種(茶の種類)をあらわす煎茶と紛らわしくなりますが、この場合の「煎」は「煮出す」という本来の意味で使っています。
二回目は、12 世紀末、宋から抹茶に湯を注いで飲むことに特徴のある喫茶文化が伝えられました。この飲み方を点茶法といいます。三回目は 17 世紀半ば、茶を湯に浸してその抽出液を飲むことに特徴がある喫茶文化が伝えられました。この飲み方を淹茶法といいます。これらの喫茶文化を最初に伝えた人物については、よく知られた話でも、史料的に裏付けが取れない伝承も多く、確定することはできません。ここでは、その有力候補をあげるという形にいたします。

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