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高すぎる自己評価が成長を阻害する #160 ダニングクルーガー効果

企業は、その目的を果たすために、経営理念に基づいた戦略を立案し、それに沿って事業活動をマネジメントします。

そして、それらの活動には、資金調達、販売、人材管理、経営管理などの諸々の力の集合体である経営資源が不可欠となります。
経営資源とは、一般的にヒト、モノ、カネ、情報といわれています。
この経営資源を必要な部署や取り組みに供給するのも、インフラストラクチュアの取り組みとなります。

なかでも、筆頭のヒト、つまり人事の重要性が高まっています。

最近は、人事的なキーワードとして、HRが定着しています。
これは、Human Resourcesの略であり、単なる人材ではなく、人的資源を意味することとなります。

さらに、経営目標の達成を目指す機能として、HRを戦略的に有効活用するための仕組み、すなわち採用、教育、人事評価、人材配置などのすべてを統括するHRM(Human Resource Management)が重要視され始めています。

HRMでは、単に制度を整備して運用するだけでなく、評価、育成、採用などの様々な切り口から、組織と人材、人材と人材、それぞれの相乗効果によって事業に貢献できるように促す機能も含まれます。

人には、自己肯定感が強まると、無意識に、自分自身を自己評価で、実際の能力以上の過大評価をしてしまうことがあります。
これらの傾向は、認知バイアスの一種であるダニングクルーガー効果と呼ばれます。
結果的に、実力を伴わない、根拠のない自信を持ってしまい、学びや他者からの助言を受ける必要性を感じなくなってしまいます。

日本固有の人事制度として代表的な終身雇用や年功序列は、基本的に降格や解雇がなく、手厚い雇用体制であったために社員のエンゲーメンジント力が高く、高度経済成長期の日本経済を支えてくれました。
反面、本来、本来は若手社員よりも高い能力を発揮して然りのベテラン社員が評価に見合った能力を発揮しなかったとも言われています。

更に昨今は、若手を中心としてキャリアアップの手段として転職意識が高まっています。
これが労働不足と相まった売り手市場であることも後押しして、能力と評価に乖離が出る傾向が高まっています。
企業としては、高額の紹介料を仲介会社に支払って、やっとキャリア採用した社員が期待値を大きく下回ったとする事例を多く耳にします。

将来的に懸念されるのが学びの姿勢です。
自分の能力を実際よりも高く自己評価していまう訳ですから、どうしても、学ぼうとする姿勢が希薄となります。
さらに周囲からのアドバイスにも耳をかさなくなリ、成長する努力を怠り、事態に一層拍車をかけてしまいかねません。
結果、知らず知らずに、なまけものになってしまっているかもしれません。

そこで、ダニングクルーガー効果への対策としての第一歩が、自分が自覚している自身の能力と実際の外部からの評価とギャップを客観的に把握することです。

その意味でも、まずは、能力を誰とでも客観的に比較し易いように数値化することです。
その上で、自信過剰を認識させる意味でも、様々なことにチャレンジさせ、他者との交流を多く持つ環境が大切になります。

また、チャレンジでは、結果の評価検証を論理的に行わせて報告させます。
報告によって、自身のおかれた状態を自覚できるようになるはずです。
そこから、上長などからのフィードバックを受けられる環境づくりも大切です。

人事評価制度も、これらの考え方を反映させるべきと考えています。
例えば、コンピテンシー評価の導入です。
コンピテンシー(competency)とは、「高い業績に結び付く行動や思考の特性」のことを意味します。

その基準は、経営として「求める人材像」と考えています。
しかしながら、架空の「求める人材像」と比較するのではなく、実在する人材を基準に実在する人材を評価します。
そこには、ベテランも若手もありません。
何度も、基準とする人材を変えて、相対評価あるいは衆目評価を繰り返します。
そのため査定者の恣意的な評価も撲滅できる公明正大な人事評価も可能となります。

さらに意欲的に行動する人も、そうでない人も、不公平に平等な評価される様な従来型の人事制度から、意欲的に行動し、成果に結び付けた人が高く評価され、そうでない人は低く評価される信賞必罰な人事制度も可能となります。
結果的に評価と経営への貢献度がリンクし易くなると考えております。

また、終身雇用や年功序列は、現代に合わない考え方なのかもしれませんが、会社への帰属意識を高め、定着率の向上が期待できるものでした。
ここは、別の角度から残したいところです。
その意味でも、企業理念にある行動する価値観である誠実性も盛り込み、成果だけではない部分も評価できたらと考えています。

HRMは企業として未来のためにできることの典型です。
様々な取り組みを通じて、組織内に存在する可能性があるダニングクルーガー効果を撲滅させ、これからの変動的で不確実、そして複雑で曖昧な時代に対峙して行かねばなりません。

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