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利益には質がある #191 利益のあり方
企業の業績を測定する指標であり、通信簿とも言えるのが財務諸表です。
具体的には、損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CF)であり、故に財務三表とも称されます。
財務諸表を扱う企業会計(アカウンティング)は、制度会計と管理会計に大別されます。
制度会計とは、法律など何らかの制度に従って実施させられる会計で、財務会計と税務会計に分類されます。
対して、管理会計とは、企業が経営のマネジメント、意思決定を行う上で活用価値の高いものとなります。
基本的に、社内でのみ使用しますので、作成する上での縛りは一切ありません。
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つまり、同じ企業会計でありながら、本質が全く異なります。
例えば、財務会計の取り分け損益計算書は、税務を中心とした売上中心の捉え方となります。
つまり、各項目において対売上高比率を中心に損益構造を分析する傾向にあります。
その場合の利益を増やす方法は、①売上を増やす ②固定費を減らす ③利益率を上げる の何れかだとなります。
当然、間違っている訳ではありません。
しかしながら、市況が厳しければ、売上を増やすのも容易ではない状況のはずです。
結果、競合との価格競争に陥りますので、売上を上げたところで、薄利多売で利益率を上げるどころか下げることになり、結果、売上が増えても利益は増えないというジレンマに陥りかねません。
もちろん、資金繰りの関係から売上を無視することはできません。
しかし、経営の観点からしたら利益を出す、更には現金を増やすための会計理論が必要と考えます。
その意味でも、管理会計として、MQ会計という考え方を取り入れています。
MQ会計は、利益中心の捉え方です。
MQ(Margin× Quantity)とは、粗利であり、付加価値を意味します。
つまり、売上から変動費を差し引いたものです。
その売上比(MQ/売上)が高ければ、その商品やサービスの付加価値が高いと言えます。
つまり、薄利多売は、商品やサービスの付加価値を下げて販売していることになります。
また、無理に売上を増やせば、固定であるはずの固定費も上がる可能性があります。
固定費とは、社員の給料を筆頭に、電気や水道など事業の良し悪しに関係なく事前に発生することを想定した費用です。
当然ですが、粗利を固定費が上回ると企業は赤字となります。
これでは、儲ける訳がありません。
日本では、企業が儲けることを懐疑的に捉える傾向があります。
しかし、そもそも、企業の目的とは、「顧客の創造」です。
そのために各企業は、顧客や社会に貢献する商品やサービスを提供します。
そして、それが認められたら、企業は、社会における存在意義を獲得することができるのだと言えます。
つまり、利益とは、社会や顧客に認められた証であると考えます。
そもそも利益とは何かです。
マネジメントで著名な、ドラッカー氏は、その著書の中で次のように綴っています。
①利益は成果の判定基準である。
②利益は不確定性というリスクに対する保険である。
③利益はよりよい労働環境を生むための原資である。
④利益は医療、国防、教育、社会的サービスと満足をもたらす原資である。
つまり、企業が顧客や社会に付加価値を提供し続けるには、利益が欠かせないのです。
また、どんなに損益計算書(PL)で黒字であったとしても、企業は現金がなければ潰れてしまいます。
そのために現金を生み出し続けなければなりません。
ここでも、売上を増やすことに目が行きがちです。
結果、利益が減れば現金は残りません。
そこで重要になるのが、少ない資金で現金を増やす仕組みづくりです。
具体的には、MQ(粗利)の率を向上させると共に、在庫の回転速度を高めることです。
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ここでのMQ(粗利)率とは、売上に対してではなく、変動費に対してとなります。
また、在庫の回転速度とは、変動費に対して在庫を効率よく減らすことになります。
尚、変動費とは、売上に連動して発生する材料費や外注費などの原価のことです。
つまり、現金増加力とは、在庫に対して、如何にMQ(粗利)を増やすかとなります。
ここに売上は関係ありません。
もちろん、MQ(粗利)は、売上の内数ですので、完全に無視する訳には行かないことも理解しなければなりません。
利益には質があります。
粉飾した見せかけの現金が伴わない利益には全く価値がありません。
顧客や社会に認められた上で、意義のある利益を追求したいと思います。