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ストレスからの防衛機制 #185 セルフハンディキャッピング

人には、仕事、スポーツ、学業など、チャレンジが求められる場面で、それ以上に、失敗にフォーカスを当ててしまう思考があります。
結果、失敗した場合の自尊心から、他責にできる外的要因を事前に準備します。
そして、それを周囲に風潮することで、失敗した際の自尊心を保とうとする傾向があります。

このような思考の傾向をセルフハンデキャッピングと言います。
1978年、アメリカの心理学者エドワード・ジョーンズとスティーブン・ベルグラス氏により提唱されました。

セルフハンディキャッピングには、いくつかの傾向があるとされています。
経験から、大きく3つに分けてみます。

①放棄型
意図的に自分を不利な状況に追い込む行為です。
例えば、既存の仕事が忙しいことなどを理由に、チャレンジすべき新しい仕事に取り組まない行為です。
当然、目標は達成しませんが、それは、既存の仕事の忙しさを言い訳にします。

②主張型
自分の実力不足に対する言い訳を事前に準備する行為です。
事前に既存の仕事の忙しさの影響で全力でチャレンジできないことなどを主張します。
その上で、仮に目標を達成しなかった場合は、自分の実力不足ではなく、既存の仕事の忙しさが原因であるかのように主張します。

③安全型
目標を安全に達成するために、達成が難しい外的要因を示して、目標を下げる行為です。
求められる目標に対して、既存の仕事が忙しいことなどを理由に、目標を下げてもらう行為です。
これで、目標を達成させる可能性を高めます。

セルフハンデキャッピングに共通するのは、失敗した際の言い訳は準備しておきながら、達成した場合には、自己評価を高めることです。
つまり、事前に言い訳をしておいて、いざ、達成すると厳しい外部要因を背負いながらも達成した自分を認めてもらうとします。

また、セルフハンディキャッピングは周囲を巻き込む行為です。
言い訳が先行しますので、特に目的を共有する組織内では、周囲からの印象が悪くなります。
結果的にチャレンジ意識が低く、成長するための努力を怠っている人物と評価され、周囲からの期待が下がる可能性も高くなります。

失敗は成功の種とも言います。
つまり、人は失敗した経験を糧として成長します。
ところが、セルフハンデキャッピングは、その失敗を他責にしようとします。
結果的に自分自身のダメージは軽減できるかもしれませんが、失敗を糧に成長する機会すらも失ってしまいます。

言い訳とは、失敗した原因を自分の中(インサイド)に求めず、外的要因(アウトサイド)にばかり求めることになります。
そのアウトサイドインの考え方では、人間関係は良くなりません。
良好な人間関係には、まずは、失敗した原因を自分の中に求めるインサイドアウトの考え方が大切です。

人間や企業が成長するには、常に高い目標を掲げて、その実現のために追求する思考と行動が大切になってきます。
ところが、失敗のダメージを避けることで、チャレンジする気概や向上心が失われます。
結果的に自信を失ってしまい、実現できることまでもできない状況に陥ってしまいます。

そのようにデメリットがあるセルフハンディキャッピングであるにも関わらず、なぜ、そのような傾向に陥るのかです。

最たる原因は自己防衛、つまりストレスからの防衛機制と言われています。
防衛機制とは、危険や困難な状況に直面した際に、不安や苦痛を軽減させて精神的な安定を保つために無意識に働く心理メカニズムです。
つまり、セルフハンディキャッピングは単なる怠けや逃避ではなく、自分を守るための無意識な心理欲求とも言えます。

そして、過去の失敗経験は、トラウマとなり、同じ経験をしたくない思いからセルフハンディキャッピングによる言い訳などが多くなってしまいます。
結果的に新たな挑戦や高い目標を避けてしまう状態に陥ってしまいます。

また、人は失敗が続くことで、心理的負担を増やし、自信と共に、モチベーションや向上心を低下させます。
自信がないと人の心は不安定になります。
結局、失敗を恐れ、そのストレスを避けるために、セルフハンディキャッピングが生じてしまいます。

しかし、捉え方次第です。
このセルフハンディキャッピングを克服することが出来たら逆に、自身の潜在的な能力を引き出してさまざまな可能性を広げられることを意味しています。

克服する方法としては、まず、すべきことは、セルフハンディキャッピングがどのような状態であるかを正しく理解することです。

その上で、客観的に、自分がどのような状態なのかを受け入れ、何を改善しなければならないのかを理解できなければなりません。
特に言動に耳を傾け、振り返ることで、言い訳がないかを確認する必要があります。

もし、言い訳があると捉えたのであれば、如何にして抑えるかです。
例えば、逃げ道である外部要因をなくして言い訳できない環境をつくるのも有効です。

また、失敗することによって、周囲からの評価が低くなることを恐れてしまう心理です。
しかし、実際のところ、失敗しても周囲は思うほど気にしていません。
むしろ、セルフハンディキャッピングによる言い訳をする方が、余程、周囲からの評価を下げている現実を理解する必要があります。

人は成功するより、失敗した時の方が記憶に残りやすいといわれています。
これは利益と損失を天秤にかけた場合、利益を求めるよりも、損失を避ける方を選択する心理傾向です。(損失回避の法則)

そのため失敗が続くと自信を喪失し、更にセルフハンディキャッピングを発してしまいます。
その悪循環を断ち切るために、成功体験を積み重ねて自信をつけることが必要です。

その意味でも、もし、部下がセルフハンディキャッピングの傾向の強い場合には、プラシーボ効果を活用する手法もあります。
プラシーボ効果では、敢えて実力より低い目標を与えて上げて、実現する体験を重ねさせることで自信を付けさせます。

また、一人で失敗を回避することばかり考えていると、どんどんネガティブ傾向が高まり、セルフハンディキャッピングを克服するどころではなくなります。
まず、現実的で達成可能な目標を設定します。
その上て、複数の人たちと、互いにチャレンジする意識を言語化して宣言し合うことも効果的です。
そこから互いに組織における自己効力感を認識し合い育成することが可能かと思います。

セルフハンディキャッピングは、個人の成長を妨げるだけではありません。
組織がイノベーションを創造し、成長する上でも、その撲滅に努める必要があります。

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