見出し画像

激情 進化 特異点

ラプトルは走る
ビルとビルの間を抜けて
人間達を退け反らせながら
車を踏んづけては爪を振り回し
雄叫びをあげた

人間は逃げ惑う
ビルに登り
体勢を崩しながら
他人のヒールを踏んづけては
悲鳴をあげた

ラプトルは思う
恥ずかしいから
早く人混みを抜け出し
自分だけの巣に帰りたいと

人間は思う
恐ろしいから
早く誰かが
あいつを倒してくれないかと

ラプトルは暴れる
ふざけんな
ふざけんな
ふざけんな

ラプトルは泣く
僕はいつからこんな鉤爪が生えたのかと
牙が鋭くなったのかと

僕は悟る
自分はもう元には戻れないのだと

僕は諦める
このまま暴れて世界を壊そうと

僕は思う
硬い鱗を受け入れてほしいと

僕は願う
もう一度家族に逢いたいと

ラプトルは笑う
自衛隊に囲まれながら

ラプトルは空を仰ぐ
どこで僕は変身してしまったのかと
だだっ広い空はなにも応じてはくれない

本当はこんなことしたくない

僕はなに

僕はだれ

これからどうすれば

僕はもう撃たれて終わりだ

ラプトルなんか
大嫌い

人間だって

大嫌い

だって
僕をこんなにしたから


ラプトルは思う
嘘をついたと

僕は思う
嘘をついたと

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集