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彷徨うは慕情の夢

途方に暮れればくれる程
少年は街を徘徊した

商店街の八百屋の看板の色褪せや
無くなった電線のことなど
頭の隅にも伸びきった爪の中にも入ってこない


なにも考えずただひたすらに歩くことで
少年は見たくもない愚かな自分と
向き合う時間を
言い訳の様に削っていった


これが散歩ならば
風を感じ
街並みに恋をし
今いる場所の一部に少年はなろうと願うのだろう

情け無い己が
自室の真ん中で大の字になり居眠りこくのは
少年にとって余計に格好の悪いこと


暗くなりつつある街中を
ただただ歩いていることだけが
唯一の逃げ道になったのだ


まだ歩けるだけでましなのだと
擦り込む様に言い聞かせながら

彷徨うは慕情の夢


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