マガジンのカバー画像

詩集 幻人録

317
現代詩を書いてます。
運営しているクリエイター

2022年3月の記事一覧

浮遊体

浮遊体

私の心は私しか解らんもんで
ふわりと漂う掴めない心は
浮遊霊と同じで行き場がない

重い身体 重い思考
重く無駄に豊かな心には
虎が噛み付いてるもんで
私は今日も動けない

外の世界は美しく
濁りのない空の破片
私は地を這う浮遊体
低空飛行の分離体

心に噛み付く虎との散歩は
もうとうに飽きている
とっくの昔に飽きている

ピエロの心臓

ピエロの心臓

新しい心臓はバクバクと音をたてる
今までの音より大きく間隔も短い
胸の内側からパンチを撃ってくる様な
ガトリング銃で撃たれているような
とにかくまだ落ち着かない生活

部屋から一歩出たら
心臓音が一人歩き
車の騒音でバクバク
自転車の呼び鈴でドキドキ
疲れちゃうったらありゃしない

静かな心臓が嫌で
無理を言って変えてもらった心臓なもんで
文句を言うわけにもいかない
私はピエロの心臓のように
静か

もっとみる
蛇声

蛇声

蛇にあげたショータイム
巻きついたからには解けぬ
舌を出しながら
天井を見上げ鳴いた

観客席から
誘った少女
ぐるぐる巻かれては
苦しそうなのに
どこか嬉しそう
ご自愛ください

スポットライトが
美しい程の螺旋をとらえて
邪魔のしない
手の込んだBGM
愛故の縛り
嘘も空虚も飲み込んで抱いた

心いくまで
もっと強く
服が裂ければ
今度は憂いも
裂いてほしいの
このまま私の脱皮を観て
このまま

もっとみる
勇敢

勇敢

勇敢な朝に
溶け込むあなた達は
綺麗な顔をしているね

夜更かしの癖に
瞬きを恐れない
三日月の盾をかざして

虚ろな気迫が
何遍も巡り巡って
嫌いなストーリー
語りだす為に
産まれたわけじゃない

何食わぬ顔をしてすれ違った
そこのあなたも
そこのあなたも
本当は疲弊の色をもって
立っている
凛として歩いている
僕に同じことはできるだろうか

錯乱のうた

錯乱のうた

目ざましいくらいの他者の声
息切れするほどの祈り
みんな私に言ってくる
何百人の無観客

慌てる指先
心の貶し合い
潤うのは目頭だけ
乾燥地帯に私の炎が引火したら
燃えてしまう
この家まるごとに無くなります

苦しいとは未来への自己投資
きっと救いが其処にはある
だから私は生きていける

罵ってばかりの無声の音を
ぐちゃぐちゃにして捨てられたなら
文句は言わない
美しい日常にキスがしたい
側にいて

もっとみる
赤い蝶々

赤い蝶々

赤い蝶々はルビーの瞳
花弁の上で鳴いている
小さな声
澄んだ音
花粉は綺麗に光った宝石
私にとっても身近な奇蹟

心の鼓動が聴こえるの
赤い蝶々の小さな心臓
花弁はそれを優しく包み
ひらりと護ってあげている
優雅なベット
妖艶な布団

美しい鱗粉の軌道は
風とは関係のない道を
パラパラと飛んでいく
赤 橙 白 黄
散り散りに
私の街から
どこまでも

赤い蝶々はルビーの瞳
花弁の上で鳴いている

もっとみる