映画日記#7 『おもかげ』
今日はDVDでスペイン映画『おもかげ』を鑑賞。先日行われた東京国際映画祭で最高賞の東京グランプリを獲得した『ザ・ビースト』のロドリゴ・ソロゴイェン監督の2019年の作品で、第91回アカデミー賞の短編実写映画賞にノミネートされた短編『Madre』を長編へとアレンジした、異色の映画だ。
<あらすじ>
エレナは元夫と旅行中の6歳の息子から「パパが戻ってこない」という電話を受ける。人気のないフランスの海辺から掛かってきたその電話が、息子の声を聞いた最後だった。10年後、エレナはその海辺のレストランで働いていた。ある日、彼女の前に息子の面影を持つ少年ジャンが現れる。エレナを慕うジャンは彼女のもとを頻繁に訪れるようになるが、2人の関係は周囲に混乱と戸惑いをもたらしていく。(映画.comより引用)
オープニングの緊張感が凄まじく、一気に引き込まれる。迷子になっている息子とその母親との電話のやり取りだけで、母の焦燥感の高まりを観客にも伝播させていた。
このオープニングは圧巻だ。
全体としては、オープニングシーンで短編をそのまま使い、その10年後の物語を長編にアレンジしていて、当初の緊張感とは異なり、子どもを失った女性の内面を、ゆったりと描いていた。
やはりスペイン映画、ロケーションが素晴らしい。フランス人がバカンスで訪れる海辺のリゾート地の美しさに目を奪われる。
『ザ・ビースト』もそうだが、異国の地に定住した外国人の境遇を描いていて、監督の実体験なのかは分からないが、細かなニュアンスにリアリティが宿っているように感じた。
物語としては、親子愛と恋心をお互い履き違えているのに、心が通じ合っているのが不思議だった。愛とは、細かく区分できないものなのだろうか。
側から見れば容易に分類できるが、やはり当事者同士にしか分かり合えないものがあるのかもしれない。
ただ家族だから、という話ではまとめ切れないような、母の愛情の深さと多彩さを感じさせられた。
全体的に『ハナレイ・ベイ』(18、松永大司監督)に近い雰囲気を感じた。
オープニングのシークエンスを大切にしながら、全く異なるテイストへとアレンジさせた監督の手腕が見事な作品だった。
(画像はFilmarksより引用)
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