わくと

映画好きの大学院生、社会福祉士です。 高齢臨床心理学、高齢福祉学を専攻しています。 映画をソーシャルワーク的な視点から捉えて、映画をどう社会に還元するのか、考えていきたいです。

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マガジン

  • 東京国際映画祭日記

    2022年の東京国際映画祭の映画鑑賞日記です!

最近の記事

チネ・ラヴィータ閉館に寄せて

1月22日、宮城県仙台市にあるミニシアター「チネ・ラヴィータ」が閉館することを発表した。 このニュースを聞いた時、僕はとても驚き、罪悪感が胸の中に渦巻き、すごく落ち込んだ。 なぜなら、僕は宮城県出身で、この映画館には、たくさんの思い出が詰まっているからだ。 中学2年生の冬、初めての彼女とのデートで、チネ・ラヴィータで『orange』を観た時の思い出。 彼女の映画を観る表情ばかり気にして、内容を全く覚えていなかったことも、今となっては懐かしい。一緒にポップコーンを食べたな

    • 2023年映画ベストテン【邦画(新作)】

      2023年は、映画に関わる仕事を始めるなど、単に映画を観るだけでなく、世の中における映画の観られ方や、映画業界の動向についても知ることのできた一年だった。 また、昨年よりもかなり忙しくなったため、見逃してしまった作品も数多くあったのは残念だった。しかし、今年も沢山良い映画と巡り逢えたと思う。 まずは、邦画(新作)のベストテンから発表する。 【2023年邦画(新作)ベストテン】 1.『PERFECT DAYS』 2.『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』   3.『シン・仮面

      • 2022年映画ベストテン(邦画編)

        2022年キネマ旬報ベストテンの発表も間近に控えているということで、ここで2022年のマイベストテンを発表させていただく。 まずは邦画ベストテン。 <邦画 2022年公開> 1.春原さんのうた 1.ケイコ 目を澄ませて 1.LOVE LIFE 4.メタモルフォーゼの縁側 5.こちらあみ子 6.ちょっと思い出しただけ 7.マイスモールランド 8.ある男 9.愛なのに 10.恋は光 <スペシャル・メンション> そばかす ハケンアニメ! 窓辺にて THE FIRST SLAM

        • 映画日記#19『ピアニスト』

          今日はDVDで『ピアニスト』を鑑賞した。 2001年カンヌ映画祭でグランプリに輝き、イザベル・ユペールが最優秀主演女優賞、ブノワ・マジメルが主演男優賞を獲得した作品だ。監督はミヒャエル・ハネケ。 イザベル・ユペールの気持ちが痛いほど分かる。一方で、ブノワ・マジメルの気持ちも物凄く分かる。だから、通じ合っているはずなのに噛み合わない2人を見ていると気持ち悪さだけが残ってしまう。頭の中でいくら妄想していても、いざ現実として起きてしまうと、ただただ嫌悪感しか残らないこともある。ま

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        • 東京国際映画祭日記
          8本

        記事

          映画日記#18 『カルメン故郷に帰る』

          今日はDVDで日本映画『カルメン故郷に帰る』を鑑賞した。 日本最初の総天然色映画(カラー映画)であり、脚本と監督は『二十四の瞳』などの名匠・木下恵介だ。主な出演者は高峰秀子、佐野周二、「宗方姉妹」の笠智衆。 めちゃくちゃ面白かった! いきいきとした女性の開放感が、軽井沢の青々とした空と非常にマッチしていた。 田舎の閉塞感は昔から変わらないのだなと思いつつ、失われつつある連帯への郷愁も感じた。 一人ひとりのキャラクターの、良い所と悪い所を描く人間らしさの匙加減が絶妙だった。バ

          映画日記#18 『カルメン故郷に帰る』

          映画日記#17 『ファイブ・デビルズ』

          今日は新宿武蔵野館でフランス映画『ファイブ・デビルズ』を鑑賞した。 『パリ13区』でジャック・オーディアール、セリーヌ・シアマと共同脚本を手がけたフランスの新鋭レア・ミシウス監督の最新作で、主演は『アデル・ブルーは熱い色』のアデル・エグザルプロコス。 今年のカンヌ国際映画祭でクィア・パルムを受賞したタイムリープ・スリラー。前評判がかなり高かったことから、公開を楽しみにしていた作品だ。 村社会における女性の抑圧と同性愛への偏見を、特殊能力を持った少女の視点を通して、観客が共に

          映画日記#17 『ファイブ・デビルズ』

          映画日記#16 『東京公園』

          今日はDVDで日本映画『東京公園』を鑑賞した。 今年3月に急逝した青山真治監督の2011年の作品で、ロカルノ国際映画祭では金豹賞審査員賞を受賞した作品だ。主演は三浦春馬。 青山真治監督の映画愛が詰まった佳作だった。 ゴダールのジャンプカット、明らかに小津を意識した構図とカット割りなど、どれも模倣品ではなく、自分のものとして物語を紡いでいた。 ゾンビ、SF、コメディなど様々なジャンルの要素も含んでいて、意外性のある展開も多いが、近くにいる人を見つめて、愛することの大切さを伝え

          映画日記#16 『東京公園』

          映画日記#15 『ある男』

          今日は映画館で日本映画『ある男』を鑑賞した。 平野啓一郎の原作小説を『蜜蜂と遠雷』『愚行録』の石川慶が監督した作品で、妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、柄本明だと豪華キャスト揃い踏みした期待の一作。 今年のヴェネチア国際映画祭のオリゾンティ部門にも正式出品されており、石川慶監督は世界的にも注目が高まっている。 この邦画は、世界で戦える邦画だ。 知的好奇心をくすぐられるヒューマンミステリーでありながら、物語の筋は分かりやすく、エンターテイメント作品としても見応えがある。 芸術性

          映画日記#15 『ある男』

          映画日記#14 『キル・ビルvol1』

          今日はアメリカ映画『キル・ビル vol.1』を鑑賞した。 クエンティン・タランティーノ監督が映画へのオマージュを捧げた怪作で、テーマ曲はあまりにも有名だ。 友達から「人がバンバン死んでいく映画を観たい」と言われたので、この映画を選択した。 3年前ほどに初めて鑑賞した時は、ひたすらに面白かったという記憶がある。 やっぱりめちゃくちゃ面白い。日本映画、カンフー映画へのオマージュが詰め込まれていた。 全ての映画に愛を持って、B級映画を作る事にも全力で取り組む姿勢が、タランティーノ

          映画日記#14 『キル・ビルvol1』

          映画日記#13 『天国にちがいない』

          今日はDVDでパレスチナ映画『天国にちがいない』を鑑賞した。 パレスチナの名匠エリア・スレイマン監督が自ら主演を務めた紀行風映画で、2019年のカンヌ国際映画祭で審査員特別賞と国際批評家連盟賞をW受賞した作品だ。 「固定カメラの範囲内で、どのようにして登場人物たちに面白い出来事を起こさせるのか」という映画の原点を、スレイマン監督が徹底的に突き詰めたことで、極上のコメディ世界が作り上げられていた。 全編を通して、画面に映る登場人物たちのシンメトリックな動きが、全く場に合ってお

          映画日記#13 『天国にちがいない』

          映画日記#12 『羅生門』

          今日はNetflixで日本映画『羅生門』を鑑賞した。 世界映画史に多大な影響を残した黒澤明の代表作で、説明不要の傑作だ。 1950年のヴェネチア国際映画祭でグランプリを獲得したことで、日本映画が世界に知れ渡ったきっかけとなった一本。 人間の不条理さを抉り出した、前人未到の大傑作だ。 同じ場面を見ているはずなのに、語り手によって、全く違う話になっていた。 自分を正当化してしまう人間の性と、事実というものの不確かさを浮き彫りにすることで、いかに、人間という存在が愚かであるか、痛

          映画日記#12 『羅生門』

          映画日記#11 『パルプ・フィクション』&『台風クラブ』

          今日は体調が悪い。メンタルの方だ。 自ずと体が起き上がらず、布団から出られない。 やるべき課題も手につかず、食事をする気も起きない。昨日までは特に何もなかったのに、突然おかしくなる時がある。 こんな、何もできないような日は、映画を観るしかない。 ということで、本日1本目はDVDでアメリカ映画『パルプ・フィクション』を鑑賞した。 言わずと知れた名作中の名作で、天才クエンティン・タランティーノの代表作だ。世界の映画史に残るマスターピースであり、タランティーノ風の作品が世に溢れる

          映画日記#11 『パルプ・フィクション』&『台風クラブ』

          映画日記#10 『土を喰らう十二ヵ月』

          本日は映画館で日本映画『土を喰らう十二ヵ月』を鑑賞した。 沢田研二主演で、松たか子が恋人役という、渋くて安心感のあるキャスティング。 スペインのサン・セバスティアン国際映画祭の食をテーマにした部門に正式出品された作品ということもあり、食事シーンがメインの作品だ。 平日朝イチの上映回だったが、高齢者の夫婦の方々がたくさんいらっしゃっていて、やはり沢田研二人気は健在なのだと実感した。 白馬を舞台に、失われつつある日本の美しい四季を自然体のまま描いていて、とても穏やかな気持ちに

          映画日記#10 『土を喰らう十二ヵ月』

          映画日記#9 『RRR』

          今日は映画館でインド映画『RRR』を鑑賞。 インドの興行収入記録を塗り替えた豪快なアクションエンタテインメントで、『バーフバリ』シリーズの創造神S•S•ラージャマウリが監督した。 超絶面白かった! バチ極まりの構図がカッコよすぎて、ずっと楽しかった。 映画鑑賞中の楽しさでいえば『トップガン マーヴェリック』と肩を並べるほどだった。 単純なカッコよさを突き詰めまくった結果、圧倒的で唯一無二の、奇跡的なエンタメ作品が誕生した。一方で、イギリスによる抑圧の歴史も、インド側の視点か

          映画日記#9 『RRR』

          映画日記#8 『私の少女』

          今日はAmazonプライムで韓国映画『私の少女』を鑑賞。 信頼のおける映画評論家・児玉美月さんが以前から推している映画で、ようやく観ることが出来た。 韓国のチョン・ジュリ監督のデビュー作で、『バーニング 劇場版』(18)などで知られるイ・チャンドン監督がプロデューサーを務め、2014年のカンヌ国際映画祭ある視点部門に正式出品された作品だ。 主演は是枝監督の『空気人形』(2009)や『ベイビー・ブローカー』にも出演したぺ・ドゥナで、韓国屈指の子役キム・セロンが共演した。 登場

          映画日記#8 『私の少女』

          映画日記#7 『おもかげ』

          今日はDVDでスペイン映画『おもかげ』を鑑賞。先日行われた東京国際映画祭で最高賞の東京グランプリを獲得した『ザ・ビースト』のロドリゴ・ソロゴイェン監督の2019年の作品で、第91回アカデミー賞の短編実写映画賞にノミネートされた短編『Madre』を長編へとアレンジした、異色の映画だ。 <あらすじ> エレナは元夫と旅行中の6歳の息子から「パパが戻ってこない」という電話を受ける。人気のないフランスの海辺から掛かってきたその電話が、息子の声を聞いた最後だった。10年後、エレナはその

          映画日記#7 『おもかげ』