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2025年1月映画レビュー(『敵』『どうすればよかったか?』『サンセット・サンライズ』)

今更ながらですが、2025年1月に鑑賞した映画の内、3作品のレビューを書いていきたいと思います。映画初めから強烈でした。


『どうすればよかったか?』

医学系研究者の両親の元で厳格に育てられ、医師を目指していた姉が、ある日突然統合失調症を発症したものの、両親はその事実を受け入れず、自宅に南京錠をかけて閉じ込める。両親の対応に疑念を抱いた弟が、機能不全に陥った家族の様子を二十年以上撮り続けた壮絶なドキュメンタリー映画。
二十年という時の重みと、どうすれば「よかった」のかという、監督の無念の思いが痛烈に突き刺さった。姉のための支援よりも、家族としてのバランスや世間体が優先され続けて、医療福祉につながるタイミングが完全に失われていた。明らかに様子がおかしい姉を前にしても、まるで何のトラブルも無いかのように、淡々と生活を続ける両親が恐ろしくもあった。ただ、誰が悪いというわけではなかったため、行き場のない感情が常に漂っていたのも苦しかった。監督が、最期に残された父と対話するラストシーンが心から離れない。姉の人生とは何だったのか?永遠に考え続けてしまう。
私はこの映画を観て、精神保健福祉士を取ることを決意しました。

劇場ポスター

『敵』

第37回東京国際映画祭グランプリ作品。
妻に先立たれた元大学教授の、優雅で丁寧な一人暮らしを美しいモノクロ基調で描くのかと思いきや、徐々に夢と現実の境が無くなるような奇妙な世界に引き込まれていった。こんなに先が読めない映画は観たことがない!
歳を重ねたからといって、成長し、達観していくわけではないという現実を面白おかしく描いていたのも正直で良かった。瀧内公美さんと河合優実さんの役柄が非常に艶やかで、ファム・ファタールへの憧れはいくつになっても消えないものだと思わされた。
敵の正体とは何だったのだろう?自分が何者か分からなくなっていくことや、人から忘れ去られることへの潜在的な恐怖が、歳を重ねることで顕在化していく様子を描いた映画なのかもしれない。
長塚京三さんだからこそ表現できる、上流階級の男性の悲哀が本当に素晴らしかった。

テアトル新宿にて(トロフィー付き)

『サンセット・サンライズ』

菅田将暉演じる都会の若者が宮城県の三陸に移住し、地域の人たちと衝突を重ねながらもお互いに関係性を深めていく、という物語。
海の幸がどれも本当に美味しそうだった。宮城県民の淡々としたもてなし方が、少し懐かしくてグッと来た。東京と地方の格差や、土地への捉え方のズレもリアリティがあり、震災が遺した溝の大きさを、改めて実感した。
竹原ピストルが東北を語るシーンが本当に素晴らしかった。多くの人の気持ちを代弁してくれていたように思う。

ムービックスつくばにて

今年も楽しみな作品が目白押し!
1月見逃してしまった映画としては『アプレンティス』や『リアル・ペイン』『ゴールドフィンガー』などがあるので、今後見る時間があれば嬉しい。

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