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妊娠・出産のタイパ・コスパ?私たちワーママ世代が植え付けたもの
前回、「ワーママはムリゲー?SNS発信が作る私たちの思考の枠」を書いた。SNSで「ワーママしんどい」とつぶやくことで、無意識に自分の気持ちに影響を与えているのではないか、そんな仮説を考えたのだ。
そんな中、またこの件につながる、考えさせられる出来事が起きた。会社の後輩とのランチで耳にした一言がきっかけだ。
20代後半、結婚3年目の彼女がこう言った。
「子どもを持つのって、めんどくさそうですよね。私は欲しくないんです」
それまで仕事のキャリアについては目を輝かせて話していた彼女が、家庭については一気に冷めたトーンに。その一言が妙に胸に刺さった。
理由を尋ねると、彼女はさらっとこう答えた。
「妊娠したら仕事のペースが落ちますよね?産後は自由な生活ができなさそう。育休から復帰したあとの生活も、みんな必死って感じじゃないですか。タイパ・コスパを考えると、リスクが大きすぎるなって」
タイパ?コスパ?
いや、確かに私も「なんで仕事が一番楽しい時期と出産期がかぶるんだろう」とか、「昇格が遅れたらどうしよう」と心配していた。でも、妊娠や出産にタイパコスパなんて観点はなかった。これが世代間ギャップ?と思った次の瞬間、頭に浮かんだのは、「これ、私たち(主に30代後半~40代前半)世代の影響かも」という思いだった。
私たちが普段から、妊娠や子育ての苦労話をリアル・SNS両面で語ってきた結果ではないだろうか。
「産後ボロボロ」「夜泣きで眠れない」「育児と仕事の両立は地獄」。こうした「大変さ」を強調してきたせいで、若い世代が「子どもを持つこと=リスク」と思うようになったのではないか。効率や合理性が重視される時代において、子ども持つことは確かに非効率で予測が難しいものだ。だけど決してそれだけでは…。
もちろん彼女に「産んでみてもいいんじゃない?」なんて軽々しく言うつもりはない。それがどれだけ無責任な言葉になるかは、さすがに分かっている。
考えた末に出た私の返答は、「まあ、どれぐらい大変かは人それぞれだから…」だった。我ながら何の答えにもなっていない。「おいおい、もっとマシなこと言えないのか」と内心ツッコミながらも、それが精一杯だった。
後輩の言葉をきっかけに、私たち世代が次の世代にどんなことを伝えたら良いのか、改めて考えさせられた。少子化の原因は色々だけど、「両立は無理」というイメージが若い世代を遠ざけているのだとしたら、その精神的な影響は小さくないだろう。
そういえば、5年前に私がキャリアコンサルタントの資格を取ってその界隈と交流していたとき、「自分が仕事と子育てとの両立に苦労したから後輩の役に立ちたい」と考える女性が多いことに驚いた。
キャリアカウンセリングをしたり、セミナーを開いたりと熱心な姿勢には感銘を受けた一方で、その「苦労話」を何度も聞かされた後輩たちが、「やっぱり両立って大変なんだ」と思い込んでしまう可能性はないだろうかと心配にもなる。支援をすること自体は素晴らしいが、その前に、私たちが普段どんな言葉で次世代に影響を与えているのか、一度立ち止まって考える必要があるのではないか(私自身も含めて)。
そもそも。子どもを育てながら働くのは、しんどいのが前提ではないだろうか。出産したからといって1日が48時間になるわけでもなく、やることはどんどん増えるのだから。だからといって、「気合いで乗り切れ」とか「根性を見せろ」なんて言うつもりはない。そんなの、誰も幸せになれない。だからこそ、社会全体で支え合い、両立がもっと自然にできる環境が当たり前になることを、私だって心から願っている。
それでも、親になるということは、しんどさと切り離せない部分があるのも事実だと思う。私たち世代が伝えるべきなのは、その「大変だけど幸せ」というバランスの取り方なんじゃないだろうか。子育ては、タイパコスパでは測れない。けれど、その中には、希望や楽しさ、そして何より「人生で一番大切な瞬間」が詰まっている。そんなことを、少しでも次世代に伝えていけたらと思う。
2/7(金)22時~23時、ゆるーく、お話会を開催します☕️参加のしやすさを考え「顔なし(ビデオオフ)」の形式です。「SNSを見るとモヤモヤする。起業の成功事例や素敵なライフスタイルに触れるたびに焦る…」という方、SNSとの付き合い方を一緒に考えてみませんか?
https://peatix.com/event/4237207