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周りに火をつけるのが、僕の役割。職人にスポットライトを当てたい|有限会社家具のあづま 東福太郎さん
昨年11月に開催された和歌山ものづくり文化祭2022に出展した有限会社家具のあづま 代表取締役 東福太郎さんのインタビューを紹介します。
(聞き手:和歌山ものづくり文化祭事務局長 吉田圭吾)
―今、めちゃくちゃ勢いのある東さんですが、和歌山ものづくり文化祭にはどのようなきっかけで出ることになったのでしょうか?
以前から交流のあった菊井委員長から声がかかったんです。
菊井くんと出会ったきっかけは5年ほど前。彼が美容師のはさみに漆を塗れないかと考えていた時に、県からの紹介で僕に行き着いたところから知己を得ました。僕の師匠に、日本トップの漆の神様という人がいて、たまたま僕が金属に漆が塗れる技術を持っていたんです。
そんなきっかけから、お互いに交流を続けていました。
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―なるほど。和歌山のものづくり企業どうし、もの文以前から良く知っていたわけですね!そんな東さんですが、普段はどのようなお仕事をされているのですか?
元々、家業で桐箪笥の製造販売をやっていたんですが、時代の流れ・ライフスタイルの変化があり、箪笥自体が売れなくなってきていました。
どうやって家業を持続させていこうかと考えていた時に、東京出張で偶々入った家具屋で短時間で100万円のベッドが4台売れたのを目の当たりにしたんです。技術的に高いものはないのになぜ売れているのかを考えたとき、お客さんはブランドで買っているということに気づいたんです。
それ以降は、いかにブランドを作るか、価値を作るかということに主眼を置いて、誰もやったことがないこと・人があっと驚くことをやってきました。
レクサスの匠プロジェクトで評価していただき、ミラノサローネで海外ブランドに評価していただき、家具のあづまという名前が価値を持ってきました。そこから、桐のライフスタイルブランドである「MEMAMORU(みまもる)」や桐箪笥ブランド「SAMA(さま)」をローンチしました。
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―めちゃくちゃすごいですね!すでにすごい世界でビジネスをされているように見えるのですが、そんな東さんがもの文に出る目的ってなんでしょうか?
声をかけてもらって思ったこととしては、これまで和歌山で面白いイベントがあまりなかったので、菊井くんの思いやもの文のコンセプトを聞くと「これは出たい!」と。そして、出展予定のメンバーを見ると、和歌山のものづくりオールスターみたいになってるから、ますます「もはや出なあかんやろ!」と熱が入りました。
―昨年のもの文にかける東さんの行動力や勢い、熱量は印象的でした。実行委員長や運営メンバーだけでなく、参加企業みんなが助けられたように思います。
僕は自分の役割をジャンヌダルクだと思っているんですよね。こういう初めてのイベントのときはみんな様子を見ちゃうから、誰かが前に出なきゃいけない。そんなときに、僕が先頭に立ってみんなに火をつけるということを意識してやっています。
初めは僕に注目が集まる部分があるんですが、その勢いにみんなが付いてきて、雰囲気掴んできたところでそれぞれが色を出してもらう。そうすればそれぞれにスポットライトが当たるし、それがあちこちで起こることで盛り上がってくるんじゃないかなと思います。
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―確かに、出展企業とコラボ商品を作って販売されていましたね。
せっかくすごいものづくりの職人・会社が集まってるんだから、コラボしたいという気持ちがありました。岩橋シートワークさんとのコラボでは椅子を制作しました。自社でできることって限界がありますが、このもの文という場では横のつながりができるので、どんどんチャレンジできるのがうれしいです。
先ほど紹介した「SAMA」でも、岩橋シートワークさん、金剛ダイス工業さんに一部工程をご協力いただいているんです。もの文のおかげですね!
―常に色々とチャレンジしている東さんですが、今年のもの文でやりたいことってもう決まってますか?
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やはり体験ワークショップの売上で今年も一番を取りたいですね。前回は数千円差で菊井鋏製作所を破って体験売上1位となりましたが、今年も負けられないです(笑)
また、反省点としては、お客さんがめちゃくちゃ来てくれた結果、キャパオーバーでお断りした方がすごく多かったんです。ですから、多くの方に体験してもらえて、楽しんでもらえるコンテンツを考えています。
こういうイベントは2年目が一番難しいと思っているので、僕自身絶対1年目より良くしないといけないという思いでいます。
―最後に、もの文を今後こうしていきたいという思いを語っていただきましょう!
もの文は、「職人がヒーローになれる場所」だと思っています。実力はあるけど、日の目をみていない職人に光があたってほしい。やっぱり職人が目立たないと、職人になりたい次の世代が出てこないんですよね。そのために、僕自身も頑張って、職人がヒーローになれるもの文にしていきたいです。
もの文って、業種も年齢も超えた参加企業全員が一体となっていて、対等な関係なんですよね。こういうイベントってなかなかないので、そこが良いところでチャレンジしがいがあると思います。
あと、僕は万博の伝統工芸プロジェクトに関わっているので、ぜひもの文も万博と関わっていければと思います。
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―今年も盛り上げてください!ありがとうございました。
有限会社家具のあづま
所在地 和歌山県紀の川市名手市場1169-1
会社HP http://azuma-kiri.jp/
聞き手
吉田圭吾 和歌山ものづくり文化祭 事務局長
和歌山県企業振興課。2013年和歌山県入庁。入庁後は、一貫して商工行政に従事し、経済産業省での勤務も経験するなど、商工行政のスペシャリスト。実行委員長に巻き込まれ、いつの間にか事務局長に。お酒を飲んでない時が一番しゃべれるタイプ。