#10-1 日常で余白を楽しむ。広がる無限の可能性ー湯本理絵さん
こんにちは。「ワーク・ライフチャレンジ〜未来をひらく私たちの働き方〜」10話目前編は、” 時間(過去・現在・未来)を書き留め、自分を知るツール ”として、日常で余白を楽しむ手帳 「paso」をプロデュースしているあわい舎 代表の湯本理絵さんをお迎えし、大阪府よりお送りいたします。
>>後編記事 #10-2 手帳は定点観測ツール。自分と向き合い未来をデザインするー湯本理絵さん
自己紹介
──本日お話しいただく湯本理絵さんのプロフィールをご紹介します。
前川 本日お話をいただく、湯本理絵さんのプロフィールをご紹介します。あわい舎の代表として関西を拠点に活動されています。大学では文化人類学を専攻し、卒業後は数社でマーケティング、広報、新規事業の企画、運営などを担当。
社外ではゴスペルチームの参加や、社会人の学び合いコミュニティや育休復帰後の対話イベントなどを複数運営。日常で余白を楽しむ手帳 「paso」を制作し、販売。手帳を活用したワーク・ライフバランスの実践や、振り返りによる自己理解、キャリアデザインにも力を入れられています。
ワーク・ライフバランスとの出会い
仕事もプライベートも充実。両立の秘訣
──具体的な活動内容をお伺いできますでしょうか。
湯本さん 大学を卒業した後は、いくつかの会社で一般事務を経験し、その後は、マーケティングプランナー、大学職員も経験しました。
ワーク・ライフバランスについては、大学職員の時代に興味を持ち、2010年にワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座を修了しました。当時、ボイストレーニングやフラメンコなど、プライベートの活動にも積極的に取り組んでいて、両立できる働き方を模索しておりました。
そんな時に小室淑恵さんの本に出会い、「きちんと定時に終わらせ、その後の時間を充実させることがより良い仕事にもつながる」ということに共感しました。仕事とプライベートを両立させることの大切さを学んで、ワーク・ライフバランスの実践を始めました。
前川 ありがとうございます。プライベートも仕事も充実させたいという思いから、ワーク・ライフバランスの実践を始められたということですね。
ワーク・ライフバランスの取り組み
子育て経験から独立という新たな道へ
── その後、独立されていると思いますが、そのきっかけをお伺いできますでしょうか。
湯本さん 大学の職員として働いていた時に、出産と育児を経験しました。育休を経て、職場復帰をし、時短勤務制度を利用したのですが、時短分が片道1時間半の通勤時間に消えていたのです。実質的に、フルタイムで働いている時間帯と変わらない状況でした。
子供がちょうど小学校に入学する時に、自分の働き方を見直す必要性を感じて、今までの働き方から思い切って、2018年に個人事業主として活動を始めました。最初は、「ecorazón(エコラソン)」という名前で個人事業主になりました。
活動していることや目指していることのベースは、ずっと変わりませんが、5年ほど経った頃、もう少しわかりやすい名前にしようと思い、現在の「あわい舎」という名前で活動をしています。
前川 ありがとうございます。お子さんの小学校の入学を機に独立されたということですね。
──小1の壁という言葉がありますが、 保育園と比較して、仕事と子育ての両立が難しくなるといったような影響はあったのでしょうか。
湯本さん そのような影響も多少は考えましたが、子育てを通して「さらにワーク・ライフバランスが大事だ」と実感したことが大きいです。育休中に、同じ立場の方々とも、交流していましたが、同じような悩みを抱えている方が、意外と多いという事を知りました。
その時期に、ワーク・ライフバランスコンサルタント養成講座に続いて、キャリアカウンセラーの資格も取得しました。その後、同じように育休中の方々と一緒に、コミュニティを立ち上げて、応援し合いながら、新しい働き方を探っていた時もありました。復帰後も、そのイベントは続けていました。
子供が小学校入学するタイミングとなった時、「コミュニティでのお話や自分の実践の中での経験を、もう少し活かしたい。もっとキャリアやワーク・ライフバランスに向けて、力を入れていきたい。」と、思い切って、個人事業主としての活動を始めました。
前川 ありがとうございます。育休中から積極的にキャリアカウンセラーの資格を取得されるなどして、本当に素晴らしいと思いました。育休中は、育児だけで精一杯だったので、その時期に湯本さんと出会えていたら、コミュニティにも参加して、自分も勉強とかできていたのかなと、ちょっと想像しました。
湯本さん ありがとうございます。コミュニティを作ったり、新しいことを作り出したり、何かを考えて行動するということをずっとやっていた感じで、その時は、必死だったと思います。
私が通っていた大学は、当時、新設された大学で、私は文化人類学の一期生でした。日本では唯一、最初で最後の文化人類学科でした。元々、音楽をやりたかったのですが、両親が結構厳しくて、堅い考え方だったので、 「音大に進学したい」と伝えたら、「そんな、ご飯が食べていけないようなとこはダメだよ」と言われました。
もう一度考え直した時に、音楽だけではなく、音楽を取り巻いている文化や海外の事にも関心があったので、「なんかこれ面白そうだな」と感じ、文化人類学を学んでみようと思いました。
前川 ありがとうございます。文化人類学については、とても興味深い学問だなと思います。私は、全然詳しくありませんが、世界各地の様々な社会や地域の生活に入り込んで調査するフィールドワークが特徴という感じでしょうか。
湯本さん そうですね。
20年以上の時を経て完成した、理想の手帳
──あわい舎の活動の一つに「日常と余白を楽しむ手帳paso」の企画、販売をされていますが、そういった学びから繋がって、始められたのでしょうか。
湯本さん そうですね。手帳は、共働きだった両親がずっと使っていて、そのことが大きく影響していると思います。私自身も中学時代ぐらいから、徐々に手帳を使い始めるようになりました。
また、手帳にメモや予定などを書き込むことが好きで、継続してやっておりました。そのうちに、自分の好みや使いやすい方法が出てきて、理想を追求したような手帳が作りたいと思っていました。自分が個人事業主になった時、一番最初に思い浮かんだのが、その手帳のことでした。
その頃に、デザイナーの北畠さんと出会い、「手帳を作りたい」とお話ししたら、「一緒にやろうよ」と言ってくださって、実現したのです。それが、個人事業主になった2018年の翌年の2019年の手帳でした。
前川 ありがとうございます。手帳に二十四節気も載せておりますよね。
湯本さん そうですね。二十四節気は、元々、中国から発祥した季節の分け方で、1年の季節の移り変わりを、24に分けて、それぞれ名前がついているのです。多分、皆さんも、「夏至」や「冬至」のように、お馴染みの季節の名前もあると思います。例えば、「冬至にはカボチャを食べる」とか、「日が落ちるのが早くなったな」とか、日本の文化の中で季節の移り変わりを、感じながら生活できるというのがいいなと思って、手帳に載せてみようと思い、今回から掲載しました。
前川 2025年のものから、載せられたということですか。
湯本さん 最初の頃は、載せていなかったのですが、手帳を使ってくださっている方から「二十四節気があるといいな」とリクエストをいただいたのが、きっかけでした。確かに載せていると、季節の移り変わりも手帳を見ながら感じられると思いました。いつ頃から掲載したか忘れてしまいましたが、今では定番になっています。
──それも、文化人類学の「文化を感じさせる」という学びからですか。
湯本さん そうですね。それぞれ国には文化があると思いますが、先にお伝えしたように、日本は、中国から影響受けているところがたくさんあると思います。実は、想像以上に影響を受けているなと、振り返ってみると思います。
前川 Instagramに、ご自身が書かれた「書」をご発信されていて、いつもいいなと思って拝見しておりました。
湯本さん ありがとうございます。毎回、筆ペンで書いています。
前川 すごく素敵で、ぜひ皆さんに見ていただきたいなと思います。ご両親の影響で手帳を使い始めて20年ぐらいですか。
湯本さん そうですね。もう20年以上になります。
前川 そうですか。手帳と20年以上向き合って作られたものが、pasoだと思いますが、私も2025年の分から使い始めております。いいなと思うところが、まず、1週間の冒頭の部分に、自由に書き込めるスペースが、見開きページの3分の1ぐらいとられていますよね。
湯本さん そうですね。メモスペースを、取っています。
前川 それが、すごくいいなと思っています。スケジュール自体は、1週間のバーチカルタイプになっています。今まで、バーチカルタイプのものをいろいろ試してきましたが、 なかなか、定着しないというか、使い続けられるものがありませんでした。その理由が、このメモの部分がないということと、多くのスケジュール部分に時間の記載が既にあることです。
それがpasoでは、スペースもあって、時間もドットで区切られているだけなので、自分で自由に時間部分を書き入れることができるというところが、すごくいいなと思いました。スケジュール帳をpasoにした2025年、すごく楽しみだなと思っています。
湯本さん ありがとうございます。そうですね。余白をすごく大事にしたいと思っていたのと、使っている方が使いたいように、自由に考えながら、生活のスタイルに合わせて使っていただけるといいなと思っています。
とはいえ、私も理想の手帳が使いたいというのがあって、その両方をどうやったら両立できるかなと考えて、今のデザインになりました。
余白から広がる、無限の可能性
──「余白」という部分ですが、今、お話しいただいたことをコンセプトにされた理由はあるのでしょうか。
湯本さん そうですね。20代の頃、特にそうだったと思いますが、手帳に予定を書き込むと、何も予定のない空白部分がでてきます。そこを、埋めないといけないという恐怖感に似たような気持ちがありました。
もちろん埋まると忙しくなるので、充実しているような気持ちになりますが、振り返ってみると、「ただただ疲れたみたい」な時もたびたびあり、「ちょっと違うな」という違和感をずっと持っていました。
確かに充実はしているところもあるけど、この違和感はなんだろうと考えた時に、ふと「埋めるというのではなく、余白の使い方や、その時間に対して充実したなという感覚を持てていなかったのだな」ということに気づきました。余白を意識しないといけないと思ったのです。
育休明けで時短勤務のすごく忙しい時に、子供を保育園に送り出してから電車に乗るまでの、5分とか10分くらいの時間がありましたが、必ず駅の中にあるコーヒーショップの中で、コーヒーを飲むという習慣を、ずっと続けていました。
そのまま、電車に乗ってしまうと、バタバタと焦った気持ちのままで、仕事をスタートするにはよくないかなと思いました。ちょっとクールダウンする時間として、コーヒーを飲むっていうのを続けていて、たった5分、もっと短い時もあったと思いますが、時間の余白を意識するようになったきっかけだったなと思います。
前川 今、お話しされた中で、私も、スケジュール帳の余白を埋めたくなるという気持ちは、すごくわかりました。そして、出勤する電車の乗車前にコーヒーを飲む時間を、敢えて取られているというところがいいなと思いました。
特に、保育園に送り出してからの隙間の時間に、リセットするための時間を取るというところが、見習いたいなと思いました。これもやって、あれもやってという風に焦ってしまいがちで、一日が終わった頃にはくたくたになっているということが割とありました。
できる限り自分の時間を作れるように、カフェに行って休憩したり、本を読んだり、pasoの手帳に書き込んだりして、自分を見直して、余白を楽しむというのをちょうど実感させていただいた時だったので、 今のお話にすごく納得しました。
この「手帳の空白」というのが、単なるこの空きスペースではなくて、自分を見つめ直すための貴重な時間として、今後も使っていけたらなと思います。では次回、湯本さんの手帳を通じた「日常から未来をデザインする」というお話をお伺いできたらなと思います。では、来週もぜひよろしくお願いいたします。
湯本さん ありがとうございます。次回もよろしくお願いいたします。
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株式会社ワーク・ライフバランス
経営戦略としてのワーク・ライフバランス福利厚生の一環ではなく、企業業績向上のために。 現代の社会構造に適応し人材が結果を出し続ける環境を構築する「サスティナブルな働き方改革」のプロフェッショナル集団です。
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大家 三佳
東京在住、京都造形芸術大学卒。子育てをしながら、水彩画、ドローイングを中心に人、食べ物、動物を描くイラストレーター。パッケージやポスター、グッズなど幅広い分野で活躍中。透明感のある優しいタッチで、日常の風景や人物を描く。ペーターズギャラリーコンペ2014 宮古美智代さん賞受賞など。
編集、プロデュース、インタビュー:前川美紀(ワーク・ライフチャレンジ プロジェクト代表/ブランディングディレクター)
note編集:松本美奈子(次世代こども教育コンサルタント/認定ワーク・ライフバランスコンサルタント)