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サーキュラーエコノミーをヒントに考えるものづくりと材料の関係性
皆さんは材料を選ぶときにどんなことを考えますか?
こちらの記事でも紹介しているように、木材は種類によって用途や目的に合わせたそれぞれの特性があります。
しかし材料選びには、用途や目的を超えた、なにか他の理由があっても良いのではないか?
そう考えるのは、長野県の松川町で地域おこし協力隊として活動する田中大也さんです。
田中さんは「松川町の森林を循環させる環境を整えていく」ことをミッションに活動していますが、より視野を広げるため、7月に開催されたイベント「GREEN WORK HAKUBA 」に参加。
イベントを機に知ったfabula株式会社 との出会いをきっかけに、普段から馴染みのある木製ものづくりにおける材料選択について、より深く考えるようになりました。
本記事では、サーキュラーエコノミーと、田中さんが考える木製ものづくりと材料の関係性についてご紹介します。
※本記事は、学びと実践を通して職能をアップデートする「EMARF CONNECT」会員限定記事を特別に一般公開したものです。
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食品廃棄物からつくる?新しい建材のはなし
田中さんが参加した「GREEN WORK HAKUBA」とは、白馬村の事業者や村外のパートナー企業がカンファレンスやワークショップを重ねながら、サーキュラーエコノミーをヒントに未来をつくるプロジェクト。
田中さんは、イベントに参加した多数の企業の中で、食品廃棄物から建材をつくる事業を展開するfabula株式会社(以下fabula)に興味を持ちました。
fabulaが原料にする食品廃棄物とは例えば、コーヒーやお茶の出がらしなどの生産過程で出る廃棄物や、パン屋さんででるパンやパンの耳などを含む、廃棄されてしまう食品のこと。
fabulaはそれらを乾燥させ粉にし、熱圧縮で板状にすることで、新しい建材づくりに取り組む企業です。
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田中さんはfabulaと情報交換するなかで、松川町で盛んに獲れるりんごやももなどの季節のフルーツを加工する際に出る繊維カスでも、同様のことができないだろうかと考えました。
りんごを原料に使うのはfabulaにとっても初めてということで、現在10月の収穫時期に向けて実験をしている段階です。
さっそく試作で使ったのは、食パンの廃棄物でできた板。パン粉を熱圧縮しているため密度の高い点で、先日EMARFの新たな材料に加わったカラーMDFと似ているそう。
もちろんShopBotで問題なく加工でき、加工するとカラーMDFのように粉が出て、ほのかにパンの匂いが漂います。
今後、りんごの廃棄物でつくる建材を完成させ、春に控える図書館のリノベーションで活用したいと展望を語ってくれました。
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サーキュラーエコノミーとは?fabulaの事例から見る、材料とものづくりの関係性
生産後は使い捨てるしかないリニアエコノミー(線型経済)と呼ばれる消費の考え方とは異なり、サーキュラーエコノミー(循環型経済)は、メンテナンス・リユース・再製造/改修・リサイクルをサイクルにくみこんだ、廃棄物が出ない循環型の考え方です。
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衣服、食事、住まいなど、普段の生活に循環型のサイクルを適用するサーキュラーエコノミーの考え方に深く共感した田中さんは、自身が関わるものづくりの分野でもできることがないだろうかと考えました。それがfabulaとのコラボレーションに繋がっています。
それと同じくして、EMARFと木製ものづくりにおいては、サーキュラーエコノミーの考え方をどのように適用していくことができるでしょうか。
ものづくりにおける材料を選ぶ時、優先度が高いのは用途と目的に適しているか。
ですが、なぜわざわざ木材を使うのか?木材を選ぶ際に用途と目的のほかになにがあるのか?などについて田中さんと考えてみました。
●なぜわざわざ木材を使うのか?
植物には二酸化炭素の吸収効果があります。また、樹木が伐採され、木材として使用されている間も貯蔵され固定されるため、身の回りに木製品が増えるほど、大気中の二酸化炭素を減らすことになり、温暖化防止に繋がります。この効果は木製品が廃棄されて燃やされるまで有効です。
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ですが、通常のものづくりプロセスにおいては、材料が産地から使い手に渡るまでにどうしても輸送コストが発生します。
「地域のものを地域内で使う」ために、VUILDでは創業当時から中山間地域へのShopBotの導入を推進し、地域材を活用しながらアイデアを形にする、大量生産ではなく必要なものをその都度つくっていくインフラを整備してきました。
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●合板と無垢材どちらを選ぶ?
EMARFで選べる材の多くが合板です。合板とは、丸太を桂むきするように薄くスライスし、それらを接着剤で接着し、板状にしたもののことをいいます。
表面や芯に使われている材によってそれぞれ特性が異なるため、用途や目的に合わせて柔軟に使い分けることが可能です。
一方で、扱いやすく柔軟に使い分けることのできる合板に比べ、無垢材は扱いにくい材といわれることがあります。その理由として、元来合板は、反りやすい、価格が高い、など、無垢材のデメリットを解消するために作られたものだからということが挙げられます。
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一見合板の方が使用メリットが多いように感じられますが、地域材が豊富な松川町で暮らす田中さんは、長期的な視点で考えた時に、コストや持続可能性の観点から合板にはデメリットが生まれるのではないかと考えています。
例えば、合板を生産する時に使われる接着剤は、経年と共に劣化しベタベタしてしまったり、燃やした時に有害物質が排出されるため、サーキュラーエコノミーのサイクルにあるメンテナンスやリユース、リサイクルがしにくくなります。
その一方で無垢材は、文字通り無垢な材なため劣化しにくかったり、メンテナンスやリユースがしやすかったりと、長期的な使い方を考えることが可能です。
木材はプラスティックや鉄などに比べ柔らかいため、加工後であっても容易に手を加えたり微調整することができる点も木材の良いところですよね。
無垢材に循環型ものづくりの可能性を感じる田中さん。木製ものづくりをサーキュラーエコノミーのサイクルのなかでどのように実践していくかについてはまだまだ模索中とのことですが、積極的に無垢材を使っていくこと、そしてその理由をこれから見つけていきたいと考えています。
例えば、合板と無垢材で全く同じものを作って比較する、そしてそれらをリメイクした時にどのような差ができるのか、それを踏まえて、設計段階でリメイクしやすいデザインを考える選択ができるのではないか。
そうした実践をくりかえすなかで、明確な理由を持って材料を選べるようになりたいと語ってくれました。
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コストが高くても環境に良い材や、扱いにくくても面白い材、fabulaがつくる食品廃棄物の建材のように生産のストーリーが見える材、などというように、用途や目的を超えて想像の余白があるということは、その材を選択する理由になり得る。
そして、工業的なメリットだけじゃなく、そのものの良さをより引き出す可能性があるはず。それが、達成感とか、ワクワク感とか、愛着のような感覚値であっても良い気がする。サーキュラーエコノミーはそこから始まるのかもしれません。
おわりに|VUILDが取り組むタンコロ運動のはなし
VUILDでは、通常林地に放置され流通に乗ることもなくほとんど活用されていない現状のある「タンコロ」という材を活用する取り組みを行っています。
また、10月2日(日)までBaBaBa(高田馬場)で開催中の「EMARF DESIGN FES 01」でもタンコロ運動の取り組みを展示しているほか、タンコロを使ったワークショップなども開催しています。ぜひ体験しにきてください!
COMING SOON|ワークショップ@ 松川町
本記事でご紹介した田中さんが暮らす長野県松川町で、タンコロを使ったワークショップを企画中。先日、タンコロを3Dスキャンしてプロダクトの試作をしたとのことで、写真を送ってくれました!
どんなワークショップになるか、情報公開をお楽しみに!ご興味ある方はぜひEMARF CONNECTの新規会員募集 もチェックしてくださいね。
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