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【詩】サーカスの散文詩

仕事場に向かう、暗い細道をひと足踏みしめるたびに、ぎこちなく顔がひきつったからやり切れない。気だるさも引き摺っていた。

わたしは、今日もまた繰り返さなければならない手足の緩慢な動きを仮構し、追いかけ、眉をひそめたのだ。

ひとときの労苦を厭うだけならまだしも、明日の生活の難渋にこごめた背を伸ばし、座長のそばで大きく息を吸い込んだ。これだけで一仕事だった。

ため息を、とどのつまり吸い込むのは、サーカスのテント内にいる観客たちだ。

鞭がしなり、わたしは、総毛立ちながら尻尾をくるりと巻きつけると、黄色い照明がにわかにかがやき始めた。




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voyant(まみえる人)
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