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猫乃目映画譚「Pearl」

映画「Pearl」を観ました。

いわゆるA24作品です。
(A24は映画の配給などを行うエンターテイメント企業。)
大好きなデラックス×デラックスのサクラちゃんがTwitterのリプで「A24映画がおすすめ!」と言っていたので、その中からずっと気になっていた「Pearl」を観てみました。

「Pearl」は「X」という映画の前日譚なので、両方観るとより楽しめそうです。
「X」も近々観ようと思います。

以下個人の感想です。
ネタバレ有りです。
残酷なシーンもあるのでご注意ください。

「Pearl」を語るとしたらキーワードは「毒親」「抑圧」「残忍性」でしょうか。

パールは隔絶された農村に住む少女で女優を目指しています。しかし現実は、厳格な母親との生活、病気で動くことも話すこともできない父親の介護という鬱屈した環境で暮らしています。
冒頭のシーンで、動物たちの前で歌とダンスを披露していたパールは、たまたま目が合ったガチョウが癪に障り、殺して池のワニに食べさせてしまいます。この時点でパールの残忍性が見え隠れします。

パールには夫がいますが、夫は戦地に赴いているため、ずっと帰りを待っている状況です。
パールは薬を買いに町に出かけた際に寄った映画館で映写技師のジョニーと出会い惹かれてしまいます。その帰りに気分が昂り、畑のかかし相手に自慰行為。
このシーンは「Pearl」の見せ場の一つなのではないでしょうか。
パールの抑圧されている欲望が爆発します。

そしてパールのもとに「オーディション」の話が舞い込んできます。
どうしても行きたいパールは反対する母親と揉み合いに。
この母親が本当嫌な話し方をするのです。
「お父さんみたいになりたいの」とか、「あなたに見られている私の気分が分かる?」とか。
映画「キャリー」の母親を思い出させるような毒親です。

揉み合いになり、パールの母親の服に火がついてしまいますが、パールはそこに鍋の中身をかけ母親を見殺しにしてしまいます。
パールはこの時点で殺意はあったのでしょうか。
私はこの時点では殺そうと思っていたようには見えなくて、たまたま火がついてしまった時に、パニックになってしまったようにも感じました。
そして鍋の中身をかけてしまい、母親は床に転がります。パールの「殺意」が芽生えたのはここだと思いました。そして息も絶え絶えの母親を地下室に引きずり込みます。これは「殺意」の元の行為でしょう。

この最初の殺人のあと、パールは映写技師ジョニーの元で一夜を過ごしますが、
初めは甘い言葉をかけていたジョニーもだんだんパールのことが煩わしくなっきているのが伺えました。
早朝、パールはオーディションに行かなければならないと言いジョニーの元を去ります。

そして自宅に戻り、父親のことも手にかけ、パールはオーディションの行われる教会に向かいます。
ここは明確な殺意を持っていますね。
教会では夫の妹ミッツィと合流します。
オーディションの話を持ってきたのもこのミッツィです。
ミッツィもまた可愛いけれど、どことなく意地悪な感じにする女の子です。
ミッツィは「オーディションに合格するのは町ごとにひとり。だから私たちのどちらかが合格ね」と非常に嫌なことを言います。
案の定パールは不合格になり、泣き崩れてしまいます。
その後オーディションに合格したミッツィがパールを訪ねてきますが、パールはミッツィのことも殺し、ワニに食べさせます。
そこにパールの夫ハワードが帰宅し、惨劇と不敵な笑みを浮かべるパールを目の当たりにする、というシーンで映画は終わります。

パールはいわゆる「サイコパス」なのでしょうか。
確かにパールは残忍です。
だけどその残忍性は元々生まれ持ったなのかというと、私は違う気がします。
パールの残忍性は、抑圧によって積み重ねられていったものだと思います。
それなら抑圧されてたから、という理由なら何をしても良いのかというと、勿論違います。
動物を殺すことも、人を殺すことも当然あってはならないことです。
だけど、抑圧はここまで人を壊す。
そしてそれが家族からの抑圧ならいっそう惨劇に繋がるのです。

ところで、今は「毒親」という言葉は割とよく聞くようになりましたが、実際はこの言葉で片付けられるほど簡単な問題ではないように思います。私も一時期家族のことで色々あったので、当時「毒親」という言葉を知った時はなんともいえない気分になりました。

パールの母親が発する「お父さんみたいになりたいの」という台詞、私はこれがとても嫌でした。
父親を蔑ろにする発言。
こういう言動ってなぜか罪悪感を煽るし、本当に傷つくんですよね。(フラッシュバック…)
でも、「毒親」がよく表現されています。
そしてパールは「ヤングケアラー」でもあるでしょう。
あらゆる問題が積み重なって心身のバランスを崩してタガが外れてしまったパール。
もしパールがこの環境にいなかったら…
女優になれなかったとしても、平穏な家庭があったとしたら…
そう思うとパールはとても可哀想な存在かもしれません。

ここまでが「Pearl」を観ての感想です。
続編の「X」を観たらまた感じ方が変わるかもしれないですね。


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