そもそもボランティアって何?(最も重視される自発性)|ボランティア入門①
よく耳にする「ボランティア」ってどんなもの?
今回は、その語源から「ボランティア」という言葉がもつ意味と価値を探っていきたいと思います。
「volunteer」の語源は、ラテン語の「voluntas(自由意志)」
ボランティア(volunteer)の語源は、「自由意志」を意味するラテン語「voluntas(ウォルンタース)」と言われています。
この「voluntas(ウォルンタース)」は、「volo(ウォロ)」から派生した言葉なのですが、この「volo」には、「喜んで〜する」「〜したい」という意味があり、また、英語の「will(意思、進んで〜する)」という言葉と関連しています。
つまり、「ボランティア活動をしなさい」というのは正しい表現ではなく、そもそもボランティア活動は強制されて行うものではないということですね。
学校の先生が言いそうな言葉ですが、残念ながら児童・生徒に「ボランティア活動をさせている」学校もあります。
実際、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会には、都立高校の生徒が「とりあえずボランティアの応募用紙に記入して出しなさい」と、教員に応募を強制された事例が報道されました。
ボランティア活動は、「やりたいからやるもの」とも言えますし、「やりたくなかったらやらなくても良いもの」とも言えます。
これを「自発性」と呼び、「ボランティア」を形づくる概念の中で、最も重要視されています。
「ボランティア活動=奉仕活動」という誤解
日本では、権力に対して仕え、奉る「奉仕活動」の文化が定着しています。
構造的に、誰かのための自己犠牲を「強いられる」わけですが、ここで奉仕活動を強いるのは「特定の誰か」だけでなく、社会の構造・文化だったり、同調圧力を含むその集団の雰囲気だったりすることもあります。
私がやらなかったら、誰かにその役割が回ってしまうからやらなきゃいけない
みんながやっているから、自分だけやらないわけにはいかない
やりたくないけど、今までみんながやってきたことだからしょうがない
みなさんもそんなことを感じた経験があるのではないでしょうか。
これらは「奉仕活動」と呼ばれるものの典型的な例ですが、「ボランティア活動」と言われたら違和感を感じます。
やりたくない、でも、やらなければならない。そこに「自発性」がないからです。
ここで取り上げたのは、ネガティブな感情ですが、「奉仕活動」「ボランティア活動」ともに、誰かのために何かをする、役立つということは共通しています。その行動によって、良い効果が生まれる(期待される)ことにも変わりありません。
しかし、それがどのような動機で人が集まり、それがどのような仕組みで行われているかに違いがあるわけです。
奉仕活動ならではの良さもある
奉仕活動には奉仕活動の良さが、ボランティア活動にはボランティア活動ならではの良さが、それぞれにあります。
自発性を前提にするボランティア活動では、どうしてもその分野の内容に関心があったり、その趣旨に共感する人が集まりやすい傾向にあります。そのため、同質性の高い集団となり、多角的な視点が得にくく、無批判に物事が正当化されていくかもしれません。
一方、奉仕活動の場には、全員ではないにしろ自分の意思とは別に参加を決めた人たちが居合わせます。学校で強制的にやらされるものそうです。
だからこそ、そこでの活動を通して、自分の考えの対極にあったような価値観に触れることができたり、自分だけでは踏み出せなかった機会で貴重な経験をしたりすることができたりします。
偶然性が高いからこそ得られる経験や気付きがあるわけです。
奉仕活動をボランティア活動と称する危うさ
それぞれの良さがあるにも関わらず、なぜそれらを混同させてしまうのでしょうか。
もちろんそれぞれが違うものだと思っていない(むしろ同じものだと思っている)という人もいるでしょう。
しかし、もしもそれぞれの違いを知った上で、あえて奉仕活動をボランティア活動と称しているものがあれば、そこに危うさが存在しているかもしれません。
例えば、学校のPTA活動を見ていると役員が輪番制になっていることが多く、いつか回ってくる義務として捉えられています。それでもなかなか役員が決まらず、お互いの顔色を伺いながら殺伐とした雰囲気の中で立候補を待つ場面が多いです。
大半のPTA活動が奉仕活動になっているわけですが、それをボランティア活動と称することで、いかにもその人たちが「やりたくてやっている」ように見せ、参加してくれる人を増やそうとしている場合があります。
つまり、義務感が強かったり、実際に取り組んでいる人の負担が大きかったり、活動内容がおもしろいものでなかったりすることのような、ネガティブな印象を与え、参加のハードルを上げてしまうような要素を隠そうとしているわけです。
このように、「ボランティア」の自発性がもつ印象を悪用されることもあります。ボランティア活動を隠れ蓑にした奉仕活動にはぜひご注意ください。
その実態や活動内容を知り、趣旨に共感したうえで参加してくれる人がいる、そのような仕組みが持続可能な取り組みにつながるはずです。
人が集まらない活動に携わっている方は、参加を強いる方法を強化するのではなく、活動内容を見直すことで「参加したい」「おもしろそう」と思ってもらえるようにしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
ボランティアで最も重視される概念は、語源が意味する通り「自発性」です。
これらを意識しながら身近な市民活動を見てみてください。
それがボランティア活動なのか、奉仕活動なのかを見極めることで、自分が求めているものに合った活動に参加できるようになると思います。