そもそもボランティアって何?『開かれた活動であること(社会性)』|ボランティア入門②
よく耳にする「ボランティア」ってどんなもの?
今回は、ボランティア活動のキー概念の一つである「社会性(公益性・公共性)」の観点から、その価値を探っていきたいと思います。
社会性=不特定多数の利益を生み出す
「自分の部屋の掃除をする」
自発的な活動であっても、この活動によって利益を得る者(受益者)は自分だけなので、私的な活動と言えます。
このように私的な活動は、個人の趣味の範囲に留まり、社会課題の解決などにつながるとは言えません。
「自分の会社の掃除をする」
社員が自発的に行う活動であった場合、先ほどとは「自分だけに利益があるのではなく、他の社員にも利益がある」という違いがあります。
つまり、私的な活動ではなく、共益的な活動と言えます。
しかし、一つの会社という単位で見ると、利益の範囲がその会社に限定されていますので、先程と同様に社会課題の解決などにつながるとは言えません。
ボランティア活動の「キー概念」となっている「社会性(公益性・公共性)」は、上記のような限定された個人・団体内での利益にとどまらず、”不特定多数の利益を生み出す(と期待される)もの”と言えます。
とはいえ、私的、共益的、公益的と、範囲を明確にできるわけではありません。
また、活動の成果を見た時に、結果的に不特定多数の利益を生み出すことができなかったということもあるでしょう。
私は、この「社会性」という概念が捉えているのは、結果的にどうだったかという評価ではなく、当初の思いや意識であったり、その活動(による効果)がもつ可能性なのではないかと考えています。
「私」的な思いを「公」に開く
例えば、自分が自然災害によって被災したとしましょう。
きっと自分の被災経験を通じて、「こうしておけばよかった」というような教訓が得られるはずです。
その被災経験や得られた気づき・学びなどの教訓を今後の自分の防災・減災活動に生かしていくというのは、次の災害への対策として大きな価値があります。
少し視野を広げ、日本という災害大国を見てみると、次の災害に備えようと考えている人が自分以外にもたくさんいることに気づきます。その中には、被災経験がなく、「災害時にはどんな状況になるのか、何が必要になるのか、どう行動すれば良いのか」と悩んでいる人も多いはずです。
もしもそのような人たちに対して、被災経験のある自分がそこで得た教訓を伝えることができたらどうなるでしょうか。
被災経験の一例を知るに過ぎないにしても、実際の被災経験を通して、災害がどのようなものかを想像したり、教訓を生かした対策を具体的に考えたりすることができるようになるはずです。
このような「語り部」活動は、「私的な経験」を語る・伝えるという活動を通して「公」に開いている(共有している)と言えます。
これにより、災害に対する防災・減災対策という社会課題の解決、つまり不特定多数の社会的な利益を生み出すことを実現しています。
他にも、自分の家の庭を誰でも利用できる駐輪場として開放したり、自分のコレクションルームを美術館として公開したりするなど、自分の所有物を開くことによって、公益的なものにするということもできます。
想いや経験といった自分がもっているものを自分だけのものにせず、「公」に開くことによって、社会性(公益性・公共性)を高めることができるのです。
社会と「かかわる」「つながる」
情報・ネットワーク組織論を専門としている金子郁容は、自身の著書において、以下のように述べています。
ある社会課題を「他人の問題」とし、自分から切り離すのではなく、自身のかかわりによって、その課題と自分を結びつけること、これも「私」的な思いを、少し規模の大きな「公」のものに結びつける(開く)という点で、ボランティア活動の「社会性」について説明していると言えます。
ボランティア活動への「参加」は、まさに社会課題と自分を結びつける一歩であるわけですが、活動自体は多種多様で、それらがもつ社会性も多様なので、自分が共感できるような活動を探すことが重要になります。
例えば、災害による「被災者支援」に関心があるとしましょう。
被災当事者を支援するもの、被災者支援を行う団体やボランティアを支援するもの、全体的な支援の仕組みの改善を試みるもの、どれも社会性(公益性・公共性)をもつ活動ですが、その方向性は様々です。
どれも価値のある活動だからこそ、どれに参加すれば良いか迷ってしまうのも自然なことだと言えます。
ここで思い出してほしいのは、ボランティア活動が「私」的な思いを「公」に開くというものであるということです。
様々な活動がある中で、あなたの「私」的な思いに一番近いのはどれですか?どの活動に共感できますか?
「社会性」は、不特定多数の利益を生み出すためにあなたを他の誰かと同質化して消費するものではありません。
「私」的な思いを開く先に「公」があるというのは、つまり、等身大のあなた自身として社会にかかわる・つながることが重要だということを示しています。誰でも良いのではなく、あなたの個性があるからこそ、社会が前進する(社会的な利益を生み出せる)のです。
金銭的な報酬を得るために働く場合、自分の個性という質的なものよりも、労働力という量的なものが重要視される傾向にあります。
だからこそ、「私」から「公」につながるという仕組みは、ボランティア活動の一つの価値であり、魅力になっているのです。
まとめ
ボランティア活動は、限定された個人・団体内での利益にとどまらず、不特定多数の利益を生み出す(と期待される)ものを意味する「社会性(公益性・公共性)」が、「キー概念」の一つとなっています。
「誰かの役に立つ」ということは、何かのボランティア活動に参加することによって実現するかもしれませんし、自分の経験や学びを他者に開くことによって実現するかもしれません。
いずれにせよ、「私」的なものを「公」に開くこと、社会とつなげる・結びつけることがその前提となっていますので、自分であること、その個性を大事にしながら社会との連帯感を高めていってください。