片方のイヤフォンを渡されて、勘違いしなくてよかったという話
「これ、僕がやっているバンドの曲なんだけど、聴いてくれる?」と彼は言って、イヤフォンの片方を私に勧めてきた。
もう片方のイヤフォンを彼は自分の耳に持っていく。
(なんだ、この距離の近さは)
彼は長身で童顔だけど爽やかで、性格もよくサークルの人気者だった。
(なぜ、私に、聴かせてくれるの?)
(ごめん!ぜっんぜん曲が頭に入ってこないよ!)
(私の心臓の音しか聞こえない)
(勘違いするな!! 勘違いするな!)
(彼はいい人なんだ。たまたまそこを通りかかった私にも聴いてほしかっただけなんだ。そう。それだけ。他に何も意味などない。)
(だから、勘違いするな)
(ハナレロ!ハナレロ!)
(これ以上、何かを考えてはいけない。だから早く!)
「ありがとう! すっごくカッコいい曲だね!」
「私、まだあっちで仕事が残ってるから、じゃあね」
1週間くらい、ぼーっとしていた。
でも、あの時勘違いしなくて正解だった。
彼には素敵な彼女がサークル外にいるって後になって分かったから。
ん! よかった。よかった。勘違いしなくて。
そんな、経験ある?
学生時代、まだスマホがなかったから、何で音楽聴いてたのかな・・・。
ドキドキしすぎてイヤフォンのことしか、覚えていない。
ウォークマンかな?ボタンをがっちゃん、がっちゃん押すやつね。
見出し画像は、栃尾江美(とっちー)さんの作品をお借りしました。
ありがとうございます!
最後までお読みいただきありがとうございます。
また、次のnoteでお会いしましょう。
♢追記 2024.6.24♢