
【読書感想文】瀧羽麻子『あなたのご希望の条件は』
読むまでの過程
瀧羽麻子さんの『あなたのご希望の条件は』は、以前にも読んだことがあった。
「内容を忘れたけどいい話だった気がする!」と思って再び図書館で借りたのだが、読んでいるうちに「そうそうこういう話だった!良さ!!!」と思い出した。
以下ネタバレ注意です。
印象的ポイント①:留まりつつも進む主人公
とにかく主人公の香澄が優秀すぎる。優秀すぎて距離すら感じるかも。だって親身になってくれるし賢いし人間味のある転職エージェントでありカウンセラーでありキャリアアドバイザーなんて、最高じゃないですか。身近に欲しすぎるんだが?
そんな人間にも抜け出せない過去があったり、進めないと感じるもやもやがあったりして停滞しているのをみると、性格が悪いかもしれないが少し安心する。
それでも最後は自分の役割を改めて確認して、前を向いて人と関わっていく姿に「なんてかっこいいんだ」と思った。
明言はされていないけれど、きっと香澄はピタキャリアで多くの人の人生に少しずつ関わることを選んだのだろう。
志を新たに進んでいく香澄を見て、同じ職場に居続けることは必ずしも停滞ではないと感じた。
大事なのって気持ちとか志とかだよね。
印象的ポイント②:月の数字を冠した会員たちの魅力
主人公がキャリアアドバイザーなこともあり、本作にはいろんな転職希望者(ほぼピタキャリア会員)が登場した。
章の月の数字とキャラクターの名字に含まれる数字が対応しているので、この人誰だったっけというのが読者に分かりやすい。助かる(例えば一月の章には一ノ瀬さんが出てくる)。
まず良かったのは、個性的な会員は出てきても憎むべき悪しき会員が出てこない点。これすごい大事。あんまりやばいやつが登場するとこっちの神経磨り減るから。
(会員じゃないので省いてたけど、裕一はマジで痛い目みたほうがいい。単なるキャラクターなのにすごいムカつく〜〜〜!うお〜〜〜香澄と栄子と酒を酌み交わしたい!!!あんなやつ忘れてしまえ!!!)
次に、会員や転職希望者たちの多くも最終的には前向きに人生を進めていて、こうありたいと自然と思えた点も良かった。
転職ってもちろん良いことばかりではないけど、少なくとも人生の駒を進めているという点においてはポジティブな意味を持つと思う。
私は転職経験があるので、転職にはかなりパワーと根気が要ることは知っている。
そのパワーと根気が出なくて転職活動を諦めたことも全然ある。
もし今後「今よりステップアップしたい」「違う環境に身を置きたい」と思ったら、(もちろんメリットデメリット考えた上で)思いきって転職するのはやっぱりありだなと思った。
まとめ:平常時にも停滞を感じるときにもおすすめの一冊
いろんな人がいろんな事情を抱えながら、それでも前向きに生きていく姿に勇気をもらえる。
『ほたるいしマジカルランド』のときも同じようなことを書いたかもしれないけど、仕事にまつわる小説は良い。自分が仕事をしているうちは自分事として読めるし、行き詰まったときのリフレッシュになる。
「自分ってこのままで良いのかな」と思い悩むときや人生に停滞を感じるとき、もちろん別に悩んでないときにもおすすめです。ぜひぜひ。