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【読書感想文】近藤史恵『ときどき旅に出るカフェ』
読むまでの過程
坂木司さんの和菓子アンソロジーを読んで、気に入った作家さんの本を図書館で借りてみようコーナーの時間です。
前回は柴田よしきさんの『風のベーコンサンド』。
今回は近藤史恵さんの『ときどき旅に出るカフェ』。
こちらもタイトルで選びました。
旅に出たい。
以下、ネタバレ注意です。
雑記
店主の葛井円が経営するカフェ・ルーズ。
コンセプトは旅に出られるカフェ。
円は月初めに旅に出て、そこで買ってきたものや見つけたものをカフェで出す。
するとお客さんも旅を感じられるというわけだ。
なにそれめちゃくちゃいいじゃん。
そういうカフェ探そう。でも珍しそうだよなあそんなカフェ。あるのかな。いいなあ〜〜〜。
まず家の近くにあるっていうのが素晴らしいよね。
各話の内容は、各国の珍しい料理の紹介と、主人公の奈良瑛子と円を中心とした会話、そしてちょっとしたミステリーといった具合。
美味しそうな料理の話をしているなと思ったら、いつの間にか謎に巻き込まれている。
そしてそれはおおよそ食べ物に関係する形で解決される。
独身の自由気ままさを謳歌しているように見える瑛子が、それ故の不安や悩みを抱える様も印象に残っている。
一人だからこそできることもあれば、できないこともある。
どんな状態の人間にもメリットとデメリットがあるんだなとしみじみ思った。
後半の「おがくずのスイーツ」「ホイップクリームの決意」「思い出のバクラヴァ」「最終話」は、正直余裕を持って読めなかった。
人間関係の軋轢を読むのはしんどすぎる。
瑛子と円の会話がほのぼのとして楽しい分、敵役のようなキャラクターが出てくると途端に雰囲気がギスギスして読むのがつらい。
最終的にはハッピーエンドというか、丸く収まったかな?という様相を呈するものの、過程がきつい。きついんじゃ。
精神衛生上、この本を読むときは話を選ばないといけないかもしれない。
オチがわかってればまた違うのかも?
最後のシーンで、「おいおいおい百合か?!百合なのか?!」と叫びだす己の中の百合大好きおじさんを抑えるのに苦労した。
なんとなく「円って男性と付き合ってるとは思えないんだけど…」と思っていたけど、やっぱりそうかー!と予想が当たって嬉しくなった。
確かに過剰なくらい瑛子に優しかったし。
円と彼女との話もぜひ読ませてほしい…。美味しいご飯とデザートを交えて…。
まとめ:視野を広げてくれるカフェの物語
「その食べ物をそうやって食べるの?」「それとそれを組み合わせて食べるの?」というような、海外では当たり前に食べられているけれど、日本では馴染みのない食べ物や飲み物が作中にはいくつも登場する。
この本を読んでいると、「自分では当たり前と思っているけど、実は全然当たり前じゃないことがたくさんある」と気付かされる。
世界って広いなー。
当たり前じゃないわけだから逃げちゃってもいいし、当たり前じゃないからやってみてもいい。
普段の生活の中に世界の広さを見つけることはとても難しいけれど、視野を広く持つことの大事さを教えてくれる本だと思った。
世界の料理を知りたい人、視野を広げたい人、カフェにまつわる物語が好きな人におすすめです。ぜひぜひ!