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【読書感想文】瀧羽麻子『うちのレシピ』

読むまでの過程


瀧羽麻子さんの『うちのレシピ』。
なんだかんだで読むのは3回目くらいな気がする。そのくせ内容はほとんど忘れている。便利な頭だと思う。
定期的に「ご飯にまつわる物語を読みたい」と思う私にぴったりの本だ。今回もそう思って図書館で借りた。
表紙、裏表紙が美味しそうなのもポイント高し。
以下ネタバレ注意です。

印象的ポイント①:ストーリーが魅力を際立たせる、美味しそうな料理


この本では「ファミーユ・ド・トロワ」という名前のレストランを中心に、店にまつわる6人の視点から物語が展開する。
各章のタイトルは、ストーリーの中で重要な料理の名前となっている。どのタイトル(の料理)も魅力的だ(それこそ表紙、裏表紙に各料理のイメージが描かれている)。
描かれる人間関係は、なかなか素直にはなれない、けれども思いやりに満ちた素敵なものだ。
そんな人間関係から生み出される物語が、各料理をとても美味しそうに見せている。
料理に彩りを加えているというか。なんというか。

特に私は『真夏のすきやき』『花婿のおにぎり』が好きだ。
『真夏のすきやき』については、まずすきやきといえば秋冬のイメージがあったので、真夏というのが意外だった。
涼しい部屋で食べる熱々のすきやき、なんと贅沢なことか。
娘に好きな子ができたことを喜ばしく思い、ちょっとしたお祝いごととして捉える父、母の会話に心温まった。
わざわざ「真夏」であることにも意味があるのかなと思った。
『花婿のおにぎり』については、単純にストーリーが好きだった。
美奈子がいかに忙しいかの描写、その中で感じている感情、家族の絆がビシバシ伝わってきて「大変だろうけどいい家族だな〜〜〜」と思った。
具なし海苔たっぷり塩むすび、シンプルでいいなあ、がっついて食べたい。

印象的ポイント②:親から子への複雑な感情

心配で声をかけたい。手元に置いておきたい。活躍してほしい。話してほしい。
子どもに対していろんな気持ちはあれど、押しつけてはいけない。程よく距離をとることも大事。
これがいかに難しいかというのが、物語を通してめちゃめちゃ伝わってくる。

自分は子どもを育てた経験はないけれど、もしそんな状況になったら適切な親になれる自信が全くない。
絶対過干渉になると思う。よくない。芳江の母親みたいになってしまうかもしれない。いやだ〜〜〜。

啓太や真衣の両親の言動からは、形は全く違えど息子・娘を本当に大切に思っていることが読み取れる。
もちろん読者は各登場人物の内面や過去を読ませてもらっているから、余計に分からせられるというか。
家族というものの素敵な面を見ることができて、読んでいて気持ちが良かった。
最後の章の『ハンバーグの日』の中で、真衣を侮辱するような課長の言葉に、父である正造が塩を撒きながら怒鳴る姿が描写されるけど、あれこそ家族愛そのものじゃん。
いいよなあ。同じことが起こったとき、うちの父はどうするかなあ。怒ってくれるといいよね。

家族と言えど邪で汚い感情が渦巻く物語もあるが、それらは読むのに非常に体力が要るので、この本は本当に読みやすくて良い。助かる。あらいぐまラスカル。
理想論じゃん作り物じゃんと言われようと、私は家族の絆が適度に見える作品を推す。
あんまり前面に押し出されるとそれはそれで引く。めんどくさいね。

まとめ:不安を感じることなく一気に読める作品

何事も起きず、というわけではないけれど、穏やかに日常が進んでいく、2つの家族の物語だった。
美しい、とまでは言わないけれど、読んでいて気持ちがいい本です。
出てくる食べ物も美味しそうで食欲が湧いてくるし。あ、でもそれはデメリットになることもあるかも。ダイエット中とか。

安心して物語を読み進めたい人、食べ物にまつわる話を読みたい人におすすめです!ぜひぜひ。

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