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【受容】②バイスティックの7原則に基づくシリーズで学ぶ関係の築き方
このシリーズでは、バイスティックの7つの原則を学んでいます。
今回はその中でも「受容」について考え、ケースワーカーの役割とクライエントへの適切な対応について説明します。
ケースワーカーの役割
ケースワーカーは、クライエントが自分の問題を認識し、現実と向き合う過程をサポートします。
クライエントの感情や考えを理解し、彼らが自由に表現できる環境を作ることが重要です。
ケースワーカーの目標は、クライエントが自分をよく理解し、成長できるよう手助けをすることです。
ケースワークでは、クライエントも援助の主たる参加者である。現実を把握する作業は、ケースワーカーとクライエントの両者にとって、それぞれに重要な意味をもつからである。
クライエントに対する適切な反応
1.クライエントのニーズに応じた援助
クライエントには、友人のような共感やアドバイスではなく、現実的で積極的なサポートを提供する必要があります。
2.クライエントの自助能力を促進
ケースワーカーは、クライエントが自分の力で問題を解決できるように支援します。
クライエントは自分の問題に直面しなければならない。彼がその直面をワーカーに肩代わりしてもらうことはできない。・・・ケースワーカーは、クライエントの問題に対する感情のみを受けとめるべきである。
3.自己理解の深化
ケースワーカーは、自分の反応や感情を理解し、それをクライエントへの援助に活かします。
ケースワーカーも、彼の人生において何らかの問題をもっており、自分自身がそれらの問題にどのように対処する傾向があるのかを考えることができるのであり、その経験が問題に対するクライエントの反応を検討する時に役立つのである。
4.援助計画の実現可能性
提供する支援が実行可能であるかを考慮し、現実的な援助計画を立てます。
受容における障害
クライエントを受けとめる上で障害になりうる要因は非常に多い。しかし、障害となるものの源泉は、ほとんどつねに一つである。それは、いくつかの領域におけるケースワーカーの自己理解の欠如である。
クライエントを受けとめる上で障害となる要素
1.十分な知識がないこと
ケースワーカーは、人間行動やストレス反応に関する知識を持つことが必要です。
2.ケースワーカー自身の自己理解の不足
自分自身の未解決の問題を抱えている場合、クライエントの援助が難しくなります。
われわれが他者に係わる際もっとも重要なことの一つは、まずわれわれがわれわれ自身を理解し、自身に直面することである。・・・ケースワーカーはこの過程でつらい痛みを感じることもあるだろう。しかし、ワーカーは自分の内にある悪しき衝動と良き衝動を認められるように学び、またそれにもかかわらず多くの人を「愛する」能力を高めてゆかなければ本当の意味で援助者にはなれない。
3.感情の転嫁
自己理解とは、自分の態度や感情がもつ傾向を自覚することである。
ケースワーカーが自分の感情をクライエントに転嫁すると、適切な援助ができません。
4.偏見と先入観
偏見や先入観が援助関係に影響を与えないようにすることが大切です。
5.口先だけの励まし
口先だけで励ますのではなく、現実的な支援が必要です。
6.受容と許容の混同
許容できない行動でも、その人の現実を受け入れることが必要です。
ケースワーカーが受けとめる対象は現実である。 すなわち、ケースワーカーはクライエントをあるがままの姿で捉え、あるがままの現実に係わろうとする。
7.クライエントへの敬意の欠如
クライエントは、自分の弱さや失敗経験を語ったり、そのような現実を自ら直視するとき、自分をダメな人間として見なしたり、人としての尊厳や価値を見失いやすくなる。
クライエントには、どんなに困難な状況でも敬意を払い、共感的に接することが必要です。
8.過剰同一視
自分の経験をクライエントに投影することなく、クライエントの個別のニーズを尊重します。
まとめ
ワーカーから受けとめられていると感じることによって、自己に対する尊敬の念を失うことなく、限界をもち失敗を重ねてきた彼自身を語ることができるようになるのである。
受け入れの態度は、ケースワークの中で最も重要です。クライエントが自分の問題を認識し、解決に向けて進むためには、自己理解と他者理解が欠かせません。
ケースワーカーは、自己理解を深め、クライエントのニーズを的確に捉えることで、より効果的な支援を提供することができます。
感想
クライエントを受容することは、自身の自己理解(自己覚知)と自己受容を深めることだと思いました。また、人間哲学や愛が重要であることも学びました。受け入れられるものと受け入れられないものを保ちつつ、クライエントのあるがままを受け入れることで、クライエントは自身を語り、抑圧されていた感情から解放され、問題解決に向けて自ら取り組むことができます。
しかし、ワーカーは自身の感情労働による疲弊も早期に解消しながら、効果的なケースワークを行わなければなりません。
ワーカー自身が自己管理をし、必要に応じてスーパービジョンなど他の支援を活用しながら、自分を大切にすることが重要だと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
私が目指しているのは孤立のない共生社会の実現です。
参考引用文献
F.P.バイスティック著 尾崎 新ほか訳 『ケースワークの原則新訳改訂版援助関係を形成する技法』誠信書房 2022年、121~139頁
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