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【個別化を極める】バイスティックの7原則で学ぶ関係の築き方-8回シリーズ

このシリーズでは、バイスティックの7つの原則をもとに、信頼を築く方法を学びます。
今回は「個別化」について考えていきます。

1.クライエントを個人として捉える

メアリー・リッチモンドは、クライエントを個々の存在として捉え、その人に合った支援が大切だと考えました。
人はただの「人間」としてではなく、個性を持った「特定の人」として扱われるべきで、人間の権利に基づいた援助原則と述べています。


2.個人として認められることは権利であり必要なこと

ケースワーカーは、クライエントのニーズに応じて、彼らの力や資源を活かして問題解決をサポートします。
クライエントは、「一人の個人」として大切に扱われたいという強い気持ちを持っており、ケースワーカーがその気持ちに応えると、クライエントは支援関係に積極的に参加するようになります。

クライエントは、ワーカーが彼を権利とニーズをもった一人の個人として尊重していると感じるようになれば、ワーカーから理解されたという感覚をもつ。

F.P.バイスティック著 尾崎 新ほか訳 『ケースワークの原則新訳改訂版援助関係を形成する技法』誠信書房 2022年、39頁

援助関係が形成できるか否かは、クライエント一人ひとりを個人として捉えるか否かにかかっている。

F.P.バイスティック著 尾崎 新ほか訳 『ケースワークの原則新訳改訂版援助関係を形成する技法』誠信書房 2022年、36頁

3.ケースワーカーの役割

1.偏見や先入観をなくす

ケースワーカーは、クライエントの問題を冷静に理解する必要があります。そのため、自分の偏見が影響しないように気をつけることが大切です。

他者を援助する上で不可欠な要素の一つは、自分を理解し、自分自身と向き合うことである。

F.P.バイスティック著 尾崎 新ほか訳 『ケースワークの原則新訳改訂版援助関係を形成する技法』誠信書房 2022年、40頁

2.人間行動に関する知識

人間の行動に関する知識を身につけることで、クライエントをより良く理解できるようになります。

医学、心理学、精神医学、社会学、哲学などの知識をワーカーの体験や常識に加える必要がある。

F.P.バイスティック著 尾崎 新ほか訳 『ケースワークの原則新訳改訂版援助関係を形成する技法』誠信書房 2022年、40頁

3.聴く力と観察力

クライエントの話をよく聴き、言葉以外の表現にも注意を払うことで、彼らの気持ちや問題を理解します。

クライエントは、友人のようにではなく、有能で専門的な能力をもつ人に話を聴いて欲しいと願っている。

F.P.バイスティック著 尾崎 新ほか訳 『ケースワークの原則新訳改訂版援助関係を形成する技法』誠信書房 2022年、43頁

クライエントの話の内容ばかりでなく、彼が話さない事柄にも注意深く耳を傾けるときだけ、援助を進める上で役に立つ資料を収集することができる。

F.P.バイスティック著 尾崎 新ほか訳 『ケースワークの原則新訳改訂版援助関係を形成する技法』誠信書房 2022年、43頁

4.クライエントのペースで動く能力

クライエントのペースを大切にすると、自分から参加したり信頼できる関係が作れます。無視すると、クライエントが問題解決を他の人に任せてしまったと感じ、信頼が失われてしまいます。

インテークから最終面接までクライエントのペースを尊重し、適切なペースを保つと、個人として捉える作業を進める上での道しるべや試金石でもある。

F.P.バイスティック著 尾崎 新ほか訳 『ケースワークの原則新訳改訂版援助関係を形成する技法』誠信書房 2022年、43頁

5.クライエントの感情に寄り添う

同じ問題を抱えていても、クライエントの感じ方はそれぞれ違います。
ワーカーが反応する際にまず必要なのは温かさです。
クライエントの感情に共感し、彼らと一緒に問題解決を進める姿勢が必要です。

6.バランスのとれた見方を持つ

クライエントの全体を見ながら、感情の変化にも気をつけ、援助の状況に合わせて自分の情緒的関与を考えます。
いつもバランスの良い視点を持つことが大切です。


4.クライエントを個人として捉える方法

1.きめ細かく配慮する

例えば面接の予約や準備を丁寧に行います。

2.プライバシーを尊重する

面接では、場所や内容に気を配って信頼を築きます。

3.時間を守る

面接では、時間を守ってクライエントに誠意を示します

4.面接の準備をする

ケース記録を読み返し、目的を明確にします。

5.クライエントを活用すること

彼の能力を活かし、援助目標の選び方や決定に参加してもらうことで、他の人に頼ることを減らし、自信や回復を促します。

6.柔軟でいること

状況に応じて支援内容を見直し、臨機応変に対応します。


感想

ワーカーがすべての人をかけがえのない存在であり、権利と個別のニーズを持っていると「理解し、尊重している」していると、クライエントがそのように感じることで初めて個別化が実現し、信頼関係が築かれ、共に問題解決に取り組むことが可能になります。

これまで私は個別化を単に「他の人も同じではない」ので、比較しないことだと捉えていました。

また、ワーカーの役割は「自分を理解し、自分自身と向き合うこと」です。
つまり、自己覚知が個別化に関連しています。
偏見をなくすことは、この自己覚知から始まります。

そして、感情に寄り添うためには、ワーカーには温かさや親しみやすさが求められます。
この「温かさ」は単なるスキルではなく、不可欠な要素だと感じました。

まずは自己覚知を深め、自分を知ること、そして温かさがあるかどうかを問いかけながら、目の前にいる人との「個別化」を始めていきたいと思います。

次回、クライエントの感情表現を大切にする(意図的な感情の表出)に続きます。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
私が目指しているのは孤立のない共生社会の実現です。

参考引用文献
F.P.バイスティック著 尾崎 新ほか訳 『ケースワークの原則新訳改訂版援助関係を形成する技法』誠信書房 2022年、33~50頁

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