【個別化を極める】バイスティックの7原則で学ぶ関係の築き方-8回シリーズ
このシリーズでは、バイスティックの7つの原則をもとに、信頼を築く方法を学びます。
今回は「個別化」について考えていきます。
1.クライエントを個人として捉える
メアリー・リッチモンドは、クライエントを個々の存在として捉え、その人に合った支援が大切だと考えました。
人はただの「人間」としてではなく、個性を持った「特定の人」として扱われるべきで、人間の権利に基づいた援助原則と述べています。
2.個人として認められることは権利であり必要なこと
ケースワーカーは、クライエントのニーズに応じて、彼らの力や資源を活かして問題解決をサポートします。
クライエントは、「一人の個人」として大切に扱われたいという強い気持ちを持っており、ケースワーカーがその気持ちに応えると、クライエントは支援関係に積極的に参加するようになります。
3.ケースワーカーの役割
1.偏見や先入観をなくす
ケースワーカーは、クライエントの問題を冷静に理解する必要があります。そのため、自分の偏見が影響しないように気をつけることが大切です。
2.人間行動に関する知識
人間の行動に関する知識を身につけることで、クライエントをより良く理解できるようになります。
3.聴く力と観察力
クライエントの話をよく聴き、言葉以外の表現にも注意を払うことで、彼らの気持ちや問題を理解します。
4.クライエントのペースで動く能力
クライエントのペースを大切にすると、自分から参加したり信頼できる関係が作れます。無視すると、クライエントが問題解決を他の人に任せてしまったと感じ、信頼が失われてしまいます。
5.クライエントの感情に寄り添う
同じ問題を抱えていても、クライエントの感じ方はそれぞれ違います。
ワーカーが反応する際にまず必要なのは温かさです。
クライエントの感情に共感し、彼らと一緒に問題解決を進める姿勢が必要です。
6.バランスのとれた見方を持つ
クライエントの全体を見ながら、感情の変化にも気をつけ、援助の状況に合わせて自分の情緒的関与を考えます。
いつもバランスの良い視点を持つことが大切です。
4.クライエントを個人として捉える方法
1.きめ細かく配慮する
例えば面接の予約や準備を丁寧に行います。
2.プライバシーを尊重する
面接では、場所や内容に気を配って信頼を築きます。
3.時間を守る
面接では、時間を守ってクライエントに誠意を示します
4.面接の準備をする
ケース記録を読み返し、目的を明確にします。
5.クライエントを活用すること
彼の能力を活かし、援助目標の選び方や決定に参加してもらうことで、他の人に頼ることを減らし、自信や回復を促します。
6.柔軟でいること
状況に応じて支援内容を見直し、臨機応変に対応します。
感想
ワーカーがすべての人をかけがえのない存在であり、権利と個別のニーズを持っていると「理解し、尊重している」していると、クライエントがそのように感じることで初めて個別化が実現し、信頼関係が築かれ、共に問題解決に取り組むことが可能になります。
これまで私は個別化を単に「他の人も同じではない」ので、比較しないことだと捉えていました。
また、ワーカーの役割は「自分を理解し、自分自身と向き合うこと」です。
つまり、自己覚知が個別化に関連しています。
偏見をなくすことは、この自己覚知から始まります。
そして、感情に寄り添うためには、ワーカーには温かさや親しみやすさが求められます。
この「温かさ」は単なるスキルではなく、不可欠な要素だと感じました。
まずは自己覚知を深め、自分を知ること、そして温かさがあるかどうかを問いかけながら、目の前にいる人との「個別化」を始めていきたいと思います。
次回、クライエントの感情表現を大切にする(意図的な感情の表出)に続きます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
私が目指しているのは孤立のない共生社会の実現です。
参考引用文献
F.P.バイスティック著 尾崎 新ほか訳 『ケースワークの原則新訳改訂版援助関係を形成する技法』誠信書房 2022年、33~50頁
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