中央がくびれた優しい二次曲線の姿
ミナト神戸を象徴するポートタワーが盛夏の空に、海に、映える。
タワーはキリリと澄ましているが、撮影するこちらは汗だくだ。
正式名称は〈神戸ポートタワー〉、高さ108m、完成は昭和38年。
電波塔ではなく、最初から展望タワーとして造られた。
塗装はやっぱりこの赤、これしかないよなと思っていたら、計画段階では銀にするつもりだったところ、航空法で目立つ赤に変更させられたとか。
航空法さまさまだ。
日本で初めてライトアップされた建造物としても知られ、夜間も美しい。
日本の伝統楽器である鼓のような、中央がくびれた優しい二次曲線の姿は「鉄塔の美女」と呼ばれ、日本建築学会賞など数々の受賞歴も。
その形状から、ぐにゃっと湾曲した鉄骨を束ねたと勘違いされやすい。
実は垂直方向の鉄骨はすべて直線なのだ。
箸でもストローでもいい、それらを20本ほど束にして持ち、上下を逆方向にねじってみれば、はい、ポートタワーのできあがり。
その目でもう一度冒頭の青空に映える写真を見れば、構造がよく分かる。
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ポートタワーは、当時の神戸市長がオランダ・ロッテルダム港の展望タワー〈ユーロマスト〉にヒントを得て4年後に造りあげた。
当時の神戸港は、ニューヨーク港、ロッテルダム港に次いで世界第3位のコンテナ取扱量を誇っていたのだ。
ロッテルダムを目標にしてポートタワーを建てたというのは十分頷ける話だし、実際その10年ほど後にはロッテルダムを抜いて世界第2位となる。
まさに神戸港の黄金時代だ。
その後、阪神大震災で壊滅的な被害を受け、現在は国内でも東京港、横浜港に次ぐ第3位に沈み、世界では第64位と低迷する。
関東大震災で横浜から神戸へ、阪神大震災で神戸から横浜へ。
日本の主力港が震災のたび入れ替わるのは何とも辛いが、地震大国にあって東西の港が補い合っていると思えば、これほど頼もしいことはない。
ポートタワー今昔(左:1963年/右:2016年)
まもなくポートタワーはリニューアルに向けていったん閉鎖となる。
2年後の営業再開時には、屋上にも上がれるようになるらしい。
リニューアル完成予想図(©神戸市)
昭和38年に完成して10年後に神戸港が大躍進したように、願わくばこのリニューアルが神戸港に新しい活気をもたらすものであってほしい。
(2018/8/10記)