姫路に来たら、ぜひ〈えきそば〉を
〈えきそば〉を知っているだろうか。
あぁ、駅によくある立ち食いそば? と思って閉じないでほしい。
ここに書こうとしているのは、一風変わった〈えきそば〉の話。
姫路駅の名物だ。
これは、同じく姫路名物である穴子丼と〈天ぷらえきそば〉のセット。
――ふつうの蕎麦じゃないか。
違う、姫路の〈えきそば〉は、うどんだしにラーメン。
これはお稲荷さんと〈天ぷらえきそば〉のセット。
これは単品、〈天ぷらえきそば〉。
――はいはい、もう分かったから。
姫路に寄ったら結構な確率で食べている。
ホームには立ち食い店が、新幹線乗換口には座って食べられる店がある。
うどんだしにラーメン、と聞いて怪訝な顔をしないでほしい。
嫌いな人は当然嫌いだろうけど、それは食べてみてからの判断で。
個人的にはなんの違和感もない、というよりラーメンはあまり得意ではないのに、この〈えきそば〉ならおいしく食べられるのが不思議だ。
ラーメンのように油ギトギトじゃないからだろうか。
この〈えきそば〉、ルーツは終戦直後に遡るらしい。
統制で入手困難だった小麦粉ではなくコンニャク粉で作ったうどんを使っていたが、時間が経つとまずくなるのでラーメンに切り替えたとか。
昭和24年、〈えきそば〉の誕生だ。
注文してから出てくるまでざっと20秒。
この速さも人気の秘密で、関西ローカルのテレビではたまにストップウォッチで計られたりもしている。
〈えきそば〉を提供しているのは、姫路の駅弁屋〈まねき食品〉。
日本で最初の幕の内弁当を、明治22年に販売したという超老舗だ。
とはいえ駅弁は食べたことがなく、いつも〈えきそば〉一択だけど。
姫路に来たら、ぜひ〈えきそば〉を食べてみてほしい。
ほかにアナゴ、チーかまドック、ひねぽん、姫路おでん、アーモンドバターなど誇れる名物目白押しの姫路だが、まずは〈えきそば〉を。
たとえ姫路に用がなくても、いったん電車を降りてホームでチュルッと。
なんせ20秒で出てくるから、次の電車が来るまでに食べ終えられる。
猫舌でなければ、ね。
(2021/7/12記)