「読書情報」[禅的]持たない生き方 金嶽宗信
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[禅的]持たない生き方
「持たない生き方」は、禅の哲学に基づく考え方の一つであり、物質的な所有や執着から解放される生き方を指します。これは、物事に執着することなく、簡素でありながら充実した生活を追求する姿勢を表しています。以下に、禅の観点から「持たない生き方」に関連するいくつかの考えを紹介します。
無欲の追求: 「持たない生き方」は、欲望や執着を抑え、物質的な豊かさだけでなく精神的な充実も追求するものです。物事に執着することなく、現在の瞬間を大切にし、物事をあるがままに受け入れることが重要です。
物質的な所有の解放: 禅の教えでは、物質的な所有は一時的であり、真の幸福や充実はそれに依存しないとされています。物事に執着せず、手放すことで心の平安を見つけることができるとされています。
簡素な生活: 不必要なものに囲まれず、シンプルな生活を大切にすることが、禅の生き方において重要視されます。物質的な豊かさよりも、心の豊かさや平穏さが重要視されます。
現在の瞬間に集中する: 「持たない生き方」は、過去や未来にこだわるのではなく、現在の瞬間に注意を向けることを強調します。この瞬間を大切にし、今を生きることが真の充実をもたらすとされています。
これらの考え方は、禅の教えに基づくものであり、個々の信条や哲学によって異なる解釈があるかもしれません。「持たない生き方」は、物質的な所有に囚われず、心の自由を追求する道の一つとされています。
現代人は豊かに見えて、豊かではない
「現代人は豊かに見えて、豊かではない」という感覚は、現代社会における様々な要因に起因している可能性があります。以下は、この感覚が生まれる可能性のあるいくつかの要因です。
物質的な過剰とストレス: 現代社会は物質的には豊かである一方で、高い生活水準や技術の進歩に伴い、ストレスや競争も増加しています。物質的な豊かさがストレスや過労といった問題を引き起こすことがあります。
社会的比較と幸福感: 現代社会では、SNSやメディアを通じて他者との比較が容易になっています。他者と比較されることで、自分の生活や達成に対する不安や不満が生じ、豊かに見えても心の中では不足感を感じることがあります。
時間の不足とバランスの欠如: 現代人は忙しい生活を送り、仕事や家庭、個人のニーズのバランスを取ることが難しいことがあります。時間やエネルギーの不足から、本来の豊かさを感じる余裕がないと感じることがあります。
精神的な充実の不足: 物質的な豊かさだけでなく、精神的な充実も重要です。しかし、現代社会では忙しさやストレスに追われがちで、自己成長や精神的な満足を追求する余裕が減っていることがあります。
これらの要因は一般的な傾向であり、個々の人々の状況や価値観によって異なるかもしれません。一部の人々は物質的な豊かさだけでなく、精神的な充実や人間関係の豊かさを追求し、バランスを取っていることもあります。
禅とは修行ではなく、「生活そのもの」
禅は、修行としての一面も持ちながらも、その本質は「生活そのもの」に根ざした哲学や実践を指します。禅のアプローチは、日常の生活を通して直感的な理解や悟りを得ようとするものであり、厳格な修行を通じてのみ得られるものではありません。
禅の特徴的な要素には、次のような点があります。
座禅(ざぜん): 禅の代表的な実践形態として知られる座禅は、静かな状態で座り、呼吸や心の動きに意識を向けることを通じて、深い覚醒や洞察を得るための実践です。しかし、これは単なる修行だけでなく、日常生活への応用が期待されます。
一切合切の注意: 禅の実践では、日常のありとあらゆる瞬間において、全体的な注意を払うことが強調されます。これは、食事を摂る、歩く、座るなど、どんな些細な行為も「今ここ」に完全に参加することを意味します。
日常生活の中での実践: 禅は日常生活を修行の一部と見なし、掃除、料理、仕事などの日々の活動を通して、悟りや深い理解を追求します。禅の教えは、あらゆる状況において覚醒した状態を維持し、平穏な心を育むことを目指しています。
無心の境地: 禅では「無心」の境地が重要視されます。これは、過去や未来への執着を断ち切り、現在の瞬間に完全に集中することを指します。これによって、心に余計な思考や心配事がなくなり、真の自己や宇宙との一体感が感じられるとされています。
このようなアプローチによって、禅は日常生活においても悟りや内面の平穏を追求し、修行と生活を一体化させる哲学とされています。
いさぎよく「捨てる」
「いさぎよく捨てる」という表現は、物事や感情、考え方などを軽やかに手放し、心や環境を整えることを指しています。この考え方は、禅やミニマリズムなどの哲学にも通じる概念です。以下は、「いさぎよく捨てる」に関するいくつかの考え方です。
物質的な捨てる: 物理的な物品を整理し、不要なものを手放すことで、生活空間を整え、必要なものに焦点を当てることができます。物質的な捨てるは、余計なものに固執せず、身軽でシンプルな生活を追求する一環となります。
感情や過去の出来事を捨てる: 過去の出来事や過ち、心に残る感情を手放すことは、心の軽さや平和をもたらすことがあります。過去に囚われず、現在の瞬間に生きることができます。
不必要な思考や期待を捨てる: しばしば、不必要な心配や期待がストレスの原因となります。これらをいさぎよく捨てることで、心の余白が生まれ、クリアな判断や冷静な対応が可能になります。
過度な欲望や執着を捨てる: 物事や状況に執着せず、過度な欲望から解放されることも、心の豊かさを生む一因です。何かに執着せず、変化や不確実性を受け入れることで、心の平穏を保つことができます。
「いさぎよく捨てる」ことは、物事や感情に固執せず、柔軟で開かれた心を持つことを意味します。これによって、余計なものから解放され、本質的なものに焦点を当てることができ、豊かで充実した生活を築く手助けになります。
無駄なものは「買わない」
「無駄なものは買わない」という考え方は、ミニマリズムやシンプルライフの哲学に基づいています。このアプローチは、物質的なものに固執せず、本当に必要なものに焦点を当て、無駄な消費を避けることで、物理的な簡素さや心の豊かさを追求しようとするものです。以下は、この考え方に関連するいくつかのポイントです。
本当に必要なものを見極める: 購買前に慎重に物事を考え、本当に必要なものかどうかを見極めます。感情的な衝動に駆られず、冷静な判断で物を選ぶことが重要です。
消費者主義からの解放: 無駄なものを買わないことは、消費者主義からの解放を意味します。新しいものに魅了されるだけでなく、既存の持ち物を大切にし、長く使うことで、環境への負荷も減らすことができます。
物質的なシンプルさの追求: 無駄なものを買わないことで、物理的な簡素さを追求します。余計なモノに縛られず、整理整頓された生活空間を保つことができます。
経済的な節約: 無駄なものを買わないことは、経済的な節約にもつながります。予算を無駄なものに使わず、大切なことや経験に資金を充てることができます。
このアプローチは個人の価値観や生活スタイルによって異なりますが、シンプルライフや環境への配慮を大切にする人々にとって、無駄なものを買わないことは、物理的な軽さだけでなく、精神的な充実を追求する一環となることがあります。
「よけいな人間関係」を持たない
「よけいな人間関係を持たない」という考え方は、人生をシンプルにし、真のつながりや豊かさを重視する哲学に基づいています。以下は、この考え方に関連するいくつかのポイントです。
本当のつながりを大切にする: よけいな人間関係を持たないというアプローチは、本当に価値のあるつながりや関係を重視します。深くて意味のあるつながりが、質の高い生活や幸福感に寄与すると考えられています。
エネルギーの集中: 余計な人間関係や対人トラブルから解放されることで、自分のエネルギーを本当に大切な人や目標に集中できます。ストレスの少ない生活が精神的な健康に寄与するとされています。
自己成長への注力: よけいな人間関係を排除することで、自己成長に焦点を当てることができます。時間や精力を自己向上や個人的な目標の達成に注ぎ込むことができます。
ただし、この考え方には注意が必要です。人間関係は複雑で、予測不可能なものであり、意外な場面で助けやサポートを提供してくれることがあります。完全に他者を排除するのではなく、バランスを保ちつつ、本当に価値のあるつながりに焦点を当てることが重要です。人間関係においても質が大切であり、よけいなものを排除することで、本当に意味のあるつながりにフォーカスできるでしょう。
著者
金嶽 宗信(かねたけ・そうしん)
1961年、東京都青梅市に生まれる。12歳で京都大徳寺大仙院住職尾宗園師に就き得度。
1983年、二松学舎大学文学部卒業。10年間の小僧生活、10年間の大徳寺僧堂での雲水修行を経て、東京・渋谷区広尾の臨済宗大徳寺派香林院住職となる。
宗会議員、保護司、教誨師などを務めるほか、NHK大河ドラマ「功名が辻」「風林火山」などの仏事監修・指導や各種講演も行っている。
著書に、『貧しく辛いさきに真理がある ―本当の禅的生き方』(さくら舎)、『禅語 ちょっといい話』(芙蓉書房出版)、『禅の心で生きる』(PHP研究所)、『寺子屋「般若心経」』(三笠書房)、『心と体を整える朝坐禅』(大和書房)、『いい人生をつくるはじめての禅のことば』(あさ出版)などがある。
[禅的]持たない生き方 金嶽宗信
はじめに
現代人は豊かに見えて、豊かではない
十二歳で仏門に入り、十年間の小僧生活
十年間の雲水修行を決意した理由
毎日三時半起床、厳しい禅僧の修行
二十年間の禅寺での修行で得たもの
第一章 禅的「持たない生き方」のすすめ
持たない暮らし1玄関
玄関とは「玄妙なる関門」
脱ぎっぱなしの靴は、心が乱れている証拠
持たない暮らし2お寺のお堂
持たない暮らし3台所
禅僧にとっては、食事も修行の一つ
調味料も、調理器具もシンプルに
持たない暮らし4トイレ
持たない暮らし5寝室
持たない暮らし6タンスの中
今こそ、「禅」の考え方を取り戻す
禅とは、「日本教」のようなもの
禅とは修行ではなく、「生活そのもの」
現代人は、「禅」とのかかわりが薄くなっている
第二章 いさぎよく「捨てる」
いさぎよく「捨てる」ための三つの心得
1「所有とは、すなわち執着である」と考える
2「物がある」のが当たり前だと思わない
3 持たない工夫を楽しむ
いさぎよく「行動に移す」ための四つのヒント
1 まずは「リサイクル」に出してみる
2 自問自答を繰り返す
3 自分なりの基準を決める
4 小さいものから捨てる
第三章 無駄なものは「買わない」
「物欲」とうまくつき合う
なぜ、ついつい買ってしまうのか?
物欲とうまくつき合うには?
十を求めずに、一で足ることを知る
物欲は年とともに変化するか
「収集癖」をどうするべきか
極力、物を買わないための知恵
「お金」とうまくつき合う
何のためにお金を使うのか
生きたお金の使い方をするために
無駄なものを買わずに生活する工夫
「衣」――ボロボロになった着物は雑巾に
「食」――食材は一切捨てずに有効活用
「住」――茶がらや米ぬかを掃除に活用
第四章 「悪い感情」を持たない
「悪い感情」を持たないための三つの心得
1 人と比較しない
2 自分の短所と長所を知る
3 置かれた場所で、無心になってみる
坐禅で心を整える
イライラが落ち着き、リラックスできる
自然治癒力が上がり、思考が前向きになる
自分の内側や周囲への感覚が研ぎ澄まされる
そのほか、心を整える四つの方法
1 深呼吸する
2 お風呂に入る、シャワーを浴びる
3 掃除をする
4 自分なりのリフレッシュ法を知っておくそれでも、不安が心から離れないときは?
第五章 「よけいな人間関係」を持たない
人間関係は「良い加減」で
自分にとって「プラス」となる人とつき合う
孤独に生きるな、自立して生きよ
変えられるのは、他人ではなく自分だけ
人は「変わる」ことができる
おわりに
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