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堀井和子さんの世界に浸る

ウェル・ビーングについてはちょっと考えが止まってますが
見ていると幸せだった本のことを思い出して、手にとっています。

堀井和子さんの本。
堀井さんの人気はすごかったな~と思います。
年代でいうと80年代後半から90年代が特に、でしょうか。

堀井さんを知らない人に紹介するとしたら、なんと書けばいいんだろう。
一時期は「粉料理研究家」になってましたが、
そうではないと思います。

プロフィールによれば
上智大のフランス語科卒。中学のころから料理が好きで、料理スタイリストになる。1984年から3年間、ご主人の仕事でニューヨーク郊外で暮らす。
家事が合理的に済むアメリカで自由な時間ができて、食をはじめ生活の中で”創り出す楽しみ”を見つけられたのだなと思います。

絵やオブジェ、食器やクロス、いいもの、素敵なものを見ていくうちに、自分は何が好きなのか少しづつわかってくるようになります。とても手に入らないものに出会うと、ふと、自分でなんとかあんなふうな雰囲気のものが作れないかな・・と思ってしまいます。
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リトグラフはできなくても芋版なら試せるし、デザイン次第で額に入れればかなり見られるようになると思います。アンティークによくあるホワイトワークの繊細なキルトは買えなくても、白に白で文字を刺繍してみたら素敵なクロスになりそうです。難しくて大変なのはだめでも、組合せやアレンジを自分なりに工夫すれば簡単なものでもいい感じに決められそうです。
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シンプルなもの、素朴なもの、手がきの文字、透き通ったもの、澄んだ色ーーそしてその一つ一つになにか温かいニュアンスのあるものが私は好きです。自分の生活している空間にそんなものがあるとうれしくなります。

「テーブルのメニューABC」堀井和子(文化出版局)

帰国後、シンプルなレシピやテーブル周りの雑貨や旅についてのエッセイなど、本や雑誌で発信されて人気が出たよう。

見出し写真の「堀井和子の気ままなパンの本」(白馬出版)は最初の著書で、書店で見つけたとき、なんてお洒落な本だろうと思いました。
リング綴じになっていて、透明のケースに入っています。
中は、アメリカでの生活のエッセイと写真、自身のイラスト(挿絵)と31種類のパンのレシピ。
この本のアメリカの生活や旅のエッセイは大好きで、レシピに比べてページ数はほんの少しなのに、繰り返し読みました。
まだ海外暮らしのことや、日々の生活の楽しみをこまごまと書くようなエッセイ本が少なかった時代だと思います。
そして、エッセイの内容ももちろんのこと、お世辞にも上手とは言い難い(失礼!)手書きの文字やイラストも、味があってなんだかとってもおしゃれに見えてしまうのでした。

今でこそ日本にも入っているDEAN&DELUCAは、当時はまだなくて、この本でニューヨークのグルメマーケットとして紹介されていて、初めて知りました。
お洒落だな~と思って憧れのお店でしたが、NYに行かなければ一生見ることはないと思っていました。

 入ってすぐ正面が野菜のコーナーです。といっても、ただの野菜売り場といったふうでなく、木の枝やつるなどで編んだフランスふうのかごやトレーに並べられた野菜やハーブは新しくてみずみずしく、ほんとうに美しくて、ハッと息をのむほどです。繊細な葉先のイタリアのチコリの淡いグリーンのきれいなことといったら、じっと見入ってしまいます。ハーブには小さな薄紫の花をつけたものもあってブーケにしたいほどです。

 キドニービーンズやホワイトビーンズ、スプリットビーンズ、ランティーユなど各種のビーンズも透明な袋にピチッと包装され、Dean&Delucaの銀の印刷のラベルに黒の手書き文字で豆の名前が入れられて、かご一杯に入っています。そのワイン色、白、クリーム、グリーン、茶系の豆の色、そのままの色とりどりの袋がすてきで、全部そのかごごと買えたら・・といつも思います。

「堀井和子 気ままなパンの本」より
本のなかにあるDEAN&DELUCAのスパイスの銀の缶の写真を見て、
以前スケッチしたもの(まだ時短スケッチを習う前)。


「気ままなパンの本」のパンの写真は、明るい光でとても気持ちのいい空気感で撮られていて、まだ写真を撮っていなかった私は「こんな風な世界を撮れたらいいな」と思いました。
もしかするとこのあたりから、パンやお菓子などの食、そのテーブル周りの写真(テーブルフォト)に興味を持ったかもしれません。

「ベーグル」という名前で、堀井さんとお仲間?で作っていた食器があって、手がき文字をデザインしたお皿などが販売されていたのはキャトルセゾンだったかな?
もうありませんが、買っておいても良かったかなと今頃思ったりします。

でも、何年か前からご主人と「1丁目ほりい事務所」というデザイン事務所をされていて、いま調べたら食器やラッピングペーパーのデザインをされてもいるみたい。

好きな感じに焼けたクルミ入り米粉ビスコッティ―をミルクティー(ほんとはカフェオレがいい)にドボンしながら、堀井さんの「テーブルのメニューABC」(1991年発行)を久しぶりに開いてみる。
至福の時間。

緑の表紙の「ヴァカンスのあとで」は、一番好きなエッセイ集かもしれません。のちに文庫になってましたが、このハードカバーのほうが好きでした。
フランスのブルターニュの家庭料理、盛岡の光原社で見つけた日本の物、秋田の木の公園、週末ごとに出かける松本のこと、白州での炭火焼きトーストのこと・・・いろいろな短いエッセイがまとめられた本です。

「気ままなパンの本」のようにリング綴じにされたシリーズは全部で5冊くらいあったようです。私は「パン」と「気ままな朝食の本」の2冊しか持っていなくて、でもさすがにもう絶版。
今さらながら他のも買えばよかったと思っていましたが、先日なんとなくメルカリを見たら、ありました!
赤い表紙の「お菓子の本」。
なるべく状態が良さそうなものを選んで購入しました。
明日くらいに着くかもしれない。楽しみ。

そうそう、数年前のことですが
青山通りで堀井さんとすれ違ったことがあります。
一瞬のことでしたが、一緒にいたのはご主人だったかな。
生まれ年からすると、もう70歳近いはず。
ちょっと信じられない気がします。
時の流れは早いです。

書くこと、描くこと、撮ることで表現し続けたいと思います。サポートいただけましたなら、自分を豊かにしてさらに循環させていけるよう、大切に使わせていただきます。