悩める沼女子達へ
私は大学一年の冬、とある男の子に沼りました。
口数が少なく、何を考えてるか分からない。
そんな男の子に沼りました。
彼は他大学の男の子で、私が彼の大学へサークルの活動のために行った時に出会いました。
「二人で遊びに行こうよ。」
無口な彼が、私にだけ懐いた。
そんな感覚がして、沼るのに時間はかかりませんでした。
毎週のように一人暮らしをする彼の家へ行き、体を重ね、朝帰りをする。
『今日何時頃になりそう?』
そんなLINEが日常化し始めた頃には、私は彼との関係に名前が欲しくて堪らなくなっていました。
「付き合ってないのに、毎週会うの?」
相談する友達は皆口揃えて同じことを言います。
「そんなのセフレじゃん、やめた方がいいよ?」
私もそう思う。
何度も何度も理解して、これで辞めようと、心の中で何度もさようならを練習して、私は彼に会いに行きました。
さようなら
そう言うはずだったのに、私の口から出たのは、
好きになっちゃった
そんな言葉でした。
「…そうなんだ。」
ごめん、とも好きじゃない、とも言わないところが、彼らしくて、憎らしくて。
「でも、俺、友達だと思ってた。」
友達、なんて言ったもん勝ちだ。
そんな無責任な感情で私と向き合ってる以上、私が幸せになれる訳がない。
彼とはもう会わない。
私は彼の部屋を飛び出して、泣きながら夜道を走って帰りました。
以降、彼へのLINEに既読がつくことはなくなり、私は彼を忘れたい一心で男漁りを始めました。
「かわいいね」
「大好きだよ」
言葉の価値は、段々軽くなりました。
体のラインを強調させる服を着て、ボディタッチをすれば、彼らは簡単にそう言ってくれます。
とにかく彼の代わりが欲しかった私は、そんな軽い言葉を放つ男達へ次々と沼りました。
切られたら次、切られたら次。
一回一回切られる度に吐くほど泣いて、こんなの辞めたいって思うけど、一週間後くらいには別の男の胸元で寝ている私がいました。
誰か私を一番にして?
そんな想いは、叶わず、なんて言うところですが、これは案外叶います。
無数の男に会っていれば、そりゃ私の事好きになってくれる男もいます。
世の中には何をしても自分の事を好きでいてくれる人間が三割はいると聞いたことがある。
会う男の母数が多ければ、その三割を引き当てる事など難しいことではありません。
ですが、ここが一番面倒臭いところです。
私は、私のことを好きになってくれた男がどうも好きになれません。
最近巷でよく聞く蛙化現象ってやつです。
私のことが好きな男がキモくてたまりません。
私が彼のことを忘れられず、いつまでも引きずっていたのは、彼が私のことを好きじゃないからでした。
誰か私を一番にして?
そんな願いを心に持ちつつ、一番にしてくれる男の子を拒絶してしまう。
どうしようもありません。救いようがないです。
切り取る場所が上手ければ、私は悲劇のヒロインにだって見せることが出来ます。
でも全貌は、ただの理不尽な女なんです。
世の中には、案外そんな女の子が存在します。
そんな女の子が沢山いるから「片想い」や「沼女子」なんて言葉が蔓延っているのです。
私は少々特殊かもしれませんが。
話を戻しますが、私はあれから二年間、その沼を引きずり続けていました。
ところがつい先日、そんな彼からInstagramでDMが来ました。
『二年前、酷い振り方したの後悔してる。会って話がしたい。会いたい。』
二年間、待ち続けていた彼からの連絡。
私は心臓が止まりかけました。
私は二年ぶりに彼の家へ向かいました。
「久しぶり、部屋覚えてたんだね。」
「うん、体が覚えてたみたい。」
彼は、二年前から何も変わらない素振りで私を部屋に招き、映画を観始めました。
気づいたらベッドの上で私達は体を重ね、二年前と同じことを繰り返し始めていました。
ただ一つ、違うことがありました。
………なんか、全然、楽しくない?
しばらく無感情で彼に抱かれていましたが、事後、シャワーを浴びる彼を待ちながら私はベッドの上でぼけっと考えていました。
………彼、もしかして、下手くそ?
私はこの二年間で、無数の男に会って、抱かれてきました。
ほぼ未経験だった二年前とは訳が違います。
その瞬間、私はサーッと恋愛感情が消え、彼に抱かれた事が時間の無駄と思い始めました。
え?こんな下手くそな男に抱かれる価値ある?
え?泊まらず帰りたいレベルなんだけど。
一度切れた気持ちが戻ることはなく、彼への気持ちは失せていくばかりでした。
「…ごめん、今日帰るわ。」
私は彼の戸惑う顔を始めて見ました。
でも、それが最初で最後でした。
私は彼の部屋を出て、LINEとInstagramを両方ブロックして消しました。
この二年間、何だったんだろう。
あまりにも呆気ない脱沼は、私に残ったセフレ達からの脱出を困難にさせました。
翌日、上書き保存をするようにセフレに抱かれながら、私は悟りを開きました。
私はきっと恋愛なんてするべきじゃないんだ。
こうやって無責任な関係で何人とも繋がっていた方が楽なんだ、飽きないんだ。
そんなクソみたいな悟りです。
一人旅や、将来の夢を持ったりしたことなど、自分の機嫌を自分で取れるようになってきたことも、悟りを開いた要因の一つだと思います。
誰と会っても深く沼らず、すぐに切り替え、割り切り、それでも割り切れなければ一人旅にでも出て気分転換。
そんなルーティーンが生まれました。
でも、今は少し沼っていた頃が懐かしいな、とも思います。
夜中に部屋着でコンビニまでアイスを買いに行ったり、
夜景を観に行って心霊スポットだと騒いだり、
映画なんて毎回最後まで観れなくて、
無駄だと思った二年前も、思い返して見れば、幸せな思い出達です。
汚くて、穢れていて、世間からしたらしょうもない関係かもしれない。
けど、私からしたらそれは愛おしくて仕方のない、私の思い出達です。
だから今これを読んで、思い浮かべる男の子がいる貴方、すごく辛いかもしれません。
私もその気持ち何度も味わいました。
なんの涙かも分からないくらい、男の子に泣かされまくったりもきっとしているでしょう。
こんなの辞めたいって思うでしょう。
無理に抜け出せなんて言いません。
抜け出せる訳がありません。
でもいつか、その辛い思いが愛おしい思い出に変わる時があります。
私は悟りを開くなんて限界女の結末を迎えてしまったけれど、そんな結末じゃない可能性だって無数にあります。
もし、愛おしい思い出に変わった時に、その思い出達を大事に心にしまっておけるように、少しずつ自分を大事にしてください。
過去なんて無理に捨てなくても、自分の経験値にして、しまいこんじゃえばいいんです。
この辛い気持ちのおかげで、メンタル強化出来た、レベルアップだ!くらいでいいんです。
自分の食べたいものを食べたり、日の出を観に行ったり、一日の中のほんの少しの時間でいいから、自分のために時間を使ってください。
ほんのちょっとだけ心が軽くなった気がすれば、それで大丈夫です。
特にオチのない話ですが、ここまで読んでくださってありがとうございました。
みんな、頑張ろうね。