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Netflixドラマ『新聞記者』現象~講演会行脚を経て思う違和感
(2022.1.26、2.1追記あり)
講演会行脚をはじめたきっかけ
2018年地元を襲った西日本豪雨災害のときのこと。そのときの政府対応、報道をみて強烈な違和感を感じました。
「テレビは真実を伝えない。ならば、〈時の人〉のお話を聴ける場があれば、行ってみよう。この国に何が起きているのかわかるかもしれない。」
私は、西へ東へ講演会行脚を始めたのでした。講演会はナマの迫力、そこに居合わせないとわからない空気感があります。会場で販売されている講師方々の御著書も購入。
森友問題に関わった方々の講演会もさまざまな角度から考えるために複数参加しました。この問題は単純な二項対立構造ではありません。以下に書くことは、考えに考えた末に私がいま思うことです。
(※講演会内容については、講師方々のご講演活動の妨げにも似たことになりかねないので差し控えます。)
しかし、これは私自身のトラウマ(後述)と向き合う禁じ手だと気づいたのはつい最近のこと。本能的に暴露療法を行った結果、トラウマの強化をしていました。それを自覚して一旦棚上げしようとしたはずが…
Netflix『新聞記者』に熱狂するTwitter模様
Netflix『新聞記者』に熱狂するTwitterを見てしまいました。一斉にドラマを著名人、言論人も絶賛。
「よくぞ政治問題を扱う映画をつくった!」「一気に6話までみた!」
世界配信ゆえに海外メディアGuardianも話題にとりあげました。
The Journalist review – is this Japanese drama’s government more corrupt than ours? https://t.co/ql5rsN0bUB
— The Guardian (@guardian) January 13, 2022
え、ちょっと待って…
赤木雅子さんが自死余儀なくされた夫・赤木俊夫さんの手記を世に出すべく託したのは #相澤冬樹 記者であって、#望月衣塑子 記者ではない。事件当事者に寄り添う取材をしたのはどちらか?当事者不在の Netflix ドラマ『#新聞記者』映画二本に続いて三番煎じエンタメ消費することは如何なものかと思う。 https://t.co/Wu4XyIz6C2
— Veronique (@X2nkzLeITuaFpE4) January 15, 2022
尊敬するNY在住よしログさんの影響力が大きいからこそ、賛否の否の一石を投じたつもりが、面倒な話題に巻き込んでしまったことを重ねてお詫び申し上げます。
他の方から「観ないほうがいいのかな?」というリプライを頂いたときは「観るなとは言っていない」旨を丁寧にご説明しました。後日、頭を冷やして私の連続ツイートのうちの幾つかは削除しました。
政治・社会問題を映像化することに慣れっこの欧米にいる目の肥えた視聴者と、政治・社会問題タブーの日本にいる視聴者という観点からも感想はわかれるところだと思います。
例えばイラク戦争とジャーナリズムを扱う作品『記者たち』。誰が実在の誰を演じてるかエンドロールやパンフにも説明があります。日本の『新聞記者』にはそういう事実と向き合う覚悟はみてとれません。
赤木雅子さんご本人ともお会いになったフリージャーナリストさんもこのようにツイートされています(下線部クリック)。
文春オンライン
決定打はこれです。文春オンラインの閲覧期間が経過しているのでこれを元にした別記事のリンクも貼ります(下線部をクリック)
米倉涼子、小泉今日子出演……Netflix「新聞記者」で"ひどい裏切り” #新聞記者 #文春オンラインhttps://t.co/9W0SQ8g4SU
— 文春オンライン (@bunshun_online) October 6, 2020
[2020年10月文春記事一部抜粋]
その望月氏から赤木さんに連絡が入ったのは今年3月のこと。
「望月さんと、映画『新聞記者』を一緒に作ったプロデューサー・河村光庸氏のお2人から連絡があり、『お手伝いをしたい』との趣旨だったそうです」(同前)
そこで、赤木さん、望月氏、河村氏の三者は5月下旬、Zoomで顔合わせ。この場で河村氏はこう言った。
「今度のドラマ版は赤木さん夫妻がモチーフ。雅子さん役は小泉今日子さんにお願いしています」
だが河村氏は、赤木俊夫さんの死に責任があるのは精神科医だと強調するなど、事実と異なる思い込みで話を進めようとしていると感じられたという。どういう作品になるか心配を拭えず、
「結局赤木さんは『真実を歪めかねないドラマに協力はできない』と考え、協力を断わったのです」(相澤氏)
その後音沙汰もなく、企画は立ち消えになったのかと思っていると、8月6日、ネット上にこんな記事が。
〈米倉涼子と小泉今日子。 独立した2人が共演か〉(NEWSポストセブン)
「間違ったように描かれるのは凄く嫌」
その後、望月氏から「河村氏が会いたがっている」との意向が相澤氏に伝えられ、8月10日に相澤氏と赤木さんが上京。河村氏、望月氏と四者会談が行われた。
赤木さんはこう訴えた。
「これまで財務省に、散々真実を捻じ曲げられて来たんです。だから、(映画の登場人物が)明らかに私だとわかるのであれば、多少の演出はあるにしても、できる限り正しく伝えて欲しい。間違ったように描かれるのは凄く嫌なんです」
両者にはいくつかの対立点があった。例えば、赤木夫妻に子供がいたという設定にしようとする制作側に、もし子供がいれば決してああいう展開にはなっていなかったと反論する赤木さん。NHKという巨大組織を辞めて森友事件を追い続ける相澤氏に、夫との共通点を感じて連絡したのだから、女性に置き換えるのはいいが、根幹部分は変えないでほしいとも主張。映画『新聞記者』の続編では、余りに真実とかけ離れているのではないかと疑問を呈した。河村氏はこう釈明した。
「どうしても気になる設定があれば変えられます」
「脚本をある段階でお見せして、そちらが納得できるようにします」
「配役が決まったら、ご主人役と、雅子さん役と、私と監督でお墓参りしたい。礼儀として必ず実行します」
夫・俊夫さんを演じる候補は「『北の国から』の吉岡秀隆を考えています」と明かしたが、最後に引っかかったのがタイトルだった。あくまでも『新聞記者』にしたいと主張する制作側に対し、赤木夫妻がモチーフならば、映画『新聞記者』とは切り離すべきではないかと相澤氏は訴えた。最後は河村氏が「私もタイトルが『新聞記者』のままだとまずいなと思っていた。『私は真実を知りたい』というのが本質ですから、それをタイトルにするようにします」と明言した。
Twitterの反応まとめ
Netflix『新聞記者』に私が疑問を呈する理由
疑問その1・タイトル、原作
既に望月氏の原作本でドラマ仕立ての映画『新聞記者』とドキュメンタリー形式の映画『i-新聞記者ドキュメント』計2本。3度目の映像化、なぜNetflixでもドラマ『新聞記者』なのか?
私は講演会行脚をしながら、政治・社会問題を考える映画も幾つか観ています。当然『新聞記者』『i-新聞記者ドキュメント』も鑑賞済。社会派映画がミニシアター系に限定されがちな傾向があるなか、堂々シネコンで上映される2作品に良くも悪くも違和感はありました。しかも日本アカデミー賞等のハレの舞台。
【過去の投稿】
主役は新聞記者=望月衣塑子氏
あくまで記者目線のストーリーを2度、3度と重ねることになります。
それでなくともメディア露出はダントツ多い望月氏。Twitterフォロワーもまた増えることでしょう。
ただ、望月氏だけを「正義のために闘う新聞記者」としてカリスマ化、偶像化?権力対峙のアイコン?とすることにも若干の違和感と危うさを感じています。右も左も「○○氏が言う/ 書いたから正しい」という属人主義に陥ってはいないかと。
一記者を応援するFacebook公開グループに1万人越 ...(🔗画像をクリック)
望月氏の講演会も拝聴しましたが。原作本『新聞記者』のタイトルに抵抗を感じて、共著の『同調圧力』をあえて購入しました。
16日付東京新聞朝刊、特報面での米倉涼子さんの言葉を胸に
— 望月衣塑子 (@ISOKO_MOCHIZUKI) January 16, 2022
「『上からの指示』って言葉が最近よく出てくる。新聞社も上から抑え込まれることがあるのか、詳しくはわからない。
それをぶち抜いていく力、わが道を行っても伝えたいという信念。それを持つ新聞記者はいる。そんな新聞記者に期待したい」 https://t.co/n9QBtfi6l8
創2020年1月号
こちらには『i-新聞記者ドキュメント』森達也監督の映画製作にまつわるインタビューがあります。
疑問その2・フィクション、演出
なぜ赤木雅子さんの意向に反したドラマ制作が強行されるのか?
JCJ賞を受賞された赤木雅子さん(相澤冬樹記者共著)『私は真実が知りたい』をどうかお手元に。
赤木雅子さんはまだ真実を求めて闘いの真っ只中にいらっしゃいます。
法廷の場でもまだ真実が明らかとなっていない森友問題がモチーフ。当事者遺族が「事実歪曲」と協力拒否しても制作強行。赤木俊夫さんが嘘を拒んで自死を選んだ御方であるからこそ、問題提起型のドラマ制作ならば事実に誠実であってほしかった。
皆がドラマに熱狂すればするほど何重にも当事者を苦しめることになってはいないかと心配でたまりません。
もちろん皆の記憶から無くなるよりは、カタチにのこすアプローチが幾重にもあることには賛成です。ただし、事実に忠実であることが前提条件。
思い出してください。ドラマ『半沢直樹』の勧善懲悪に熱狂したはずの日本列島の投票行動に変化があったとは到底いえません。
この国の根幹を揺るがした問題をエンターテイメントとして一時的に消費するだけに終わってほしくはありません。熱狂はいつかは冷めるときがきます。熱狂特有のコワさもあります。
故人・半藤一利氏の言葉「国民的熱狂をつくってはいけない」
『昭和史』(平凡社ライブラリー)
案の定、現実とドラマを混同したツイートをいくつか確認しました。ドラマは様々な誤解を招いています。
ドラマと現実は違います。
ドラマと現実は違います。
大事なことなので2回言いました。
疑問その3・「人の不幸」の取材
赤木雅子さんが赤木俊夫さんの手記公開を決心するタイミングを待ったからこそ、相澤冬樹記者の手によって週刊文春に公開されたのは2020年3月。
このとき日本のみならず、世界がどういう状況だったかを想像すれば、スクープとして世にだすには難ありの状況であったことはわかります。当事者の気持ちに寄り添ってじっと時を待った経緯があっての週刊文春完売。
事件当時、同じく森友問題を追いかけながらも「人として書けなくなった」と心境を語っていた著述家 菅野完氏でさえ「完敗です!でも相澤さん何故、今なんですか!」とツイキャス配信で手記公開タイミングに地団駄踏んだのも見ました。
相澤冬樹記者note
「人の不幸」を取材するにあたってのお考えについて。
文春オンライン 手記公開 文春完売
創 2020年10月号
こちらには相澤冬樹記者のインダビューが掲載されています。
なぜ、どうやって赤木雅子さんが相澤冬樹記者に夫・赤木俊夫さんの手記を託した経緯も詳細に語られています。この奇跡的な経緯すらドラマには描かれていません。
相澤冬樹記者「森友文書改ざん事件の告発」インタビューが掲載されている同じ号で、望月氏は「安倍会見腕つかみ事件」について語っています。
#赤木さんを忘れない
2018年11月相澤冬樹記者がNHK退職余儀なくされて間もない頃の講演会、2019年籠池夫妻もご一緒に御登壇される講演会にも参加しました。講演会の終わりに勇気を振り絞って質問挙手までしました。
このハッシュタグを提唱したのは相澤冬樹記者です。御自身と御学友 境治氏のネット配信番組「メディア酔談」のちに「メディア粋談」(昨年秋番組終了)から始まったことです。
参考:2021年末認諾 裁判その後...
YouTube〈森友学園問題 認諾 税金1億で疑惑もみ消し を許さない!〉
相澤冬樹記者 ニュースレター(無料・要登録)
ところで、相澤冬樹記者の思想信条を知っている人がどれほどいるでしょうか?森友スクープ、取材を続けるため、NHK退職余儀なくされて最初に出版された御著書にも書かれています。
昨今のTwitterでは政府批判をすれば「共産党」「左翼」という言葉が罵声の意味で簡単に使われてしまっています。
私がNetflixドラマ『新聞記者』に否と唱えれば、「どこの党の回し者だ」とヨソモノ扱いのレッテル貼りがなされます…それこそ同調圧力では?
今の御時世、本気で政権批判した作品、ましてや世界配信したともなれば電凸抗議だとか、米倉涼子のCMスポンサーが撤退するとか...聞きませんね?リベラル界隈の功名心、芸能界とのWin-Winで落としどころがついたと推測できませんか?巨悪をやっつけた気分になるガス抜きエンターテイメントだとは思いませんか?
森友問題の真相に本気で迫って干されなかった人がいたなら教えてください。
いま相澤冬樹記者はNHK、大阪日日新聞社を経て完全にフリージャーナリストのお立場に。
2022年参院選まで私は心に刺さった違和感を忘れませんから。
私の願い
私事、お世話になった方が約20年前に不幸な事件で自死しています。真相はわかりませんが、少なくとも真実ではない内容が新聞一面に晒されました。私は根深い人間不信を抱えたままです。赤木俊夫さん自死一報で「なぜまた人が命を落とさねばならぬのか」と大きなショックを受けました。どうしても森友問題と自分の経験を重ね合わせてしまい、ツラくなります。清濁併せ呑めない性格ゆえに約20年前のことを棚上げしようと心に決めたのは、つい数週間前だったはずなのに。時薬にも限界があります。
それもあって、Netflix『新聞記者』の視聴は致しませんことをご容赦ください。
赤木雅子さんのご意向を大切に、真実に誠実にあってほしい。私個人の気持ちもそっと重ねて、真相解明を祈っています。
右も左も 保守もリベラルも 関係ありません。
「嘘」に立ち向かえるのは「真実」しかないと信じたいのです。
追記:週刊文春2月3日号その後
※文春オンライン記事がでるのを察してか、望月氏はコメント欄を閉鎖しています。
※謝罪という行為があった。つまり事実をもとにしたドラマということの証左であり、「フィクションだから何をやっても許される」という理屈は、破綻しています。
ネットフリックス「新聞記者」プロデューサーが制作経緯巡り、森友遺族に謝罪 #スクープ速報 #週刊文春 #文春オンラインhttps://t.co/g2tMngFoRW
— 文春オンライン (@bunshun_online) January 26, 2022
ネットフリックスが配信したドラマ。公文書改ざんを命じられた官僚が自殺した事件を描く。森友事件の遺族・赤木雅子さんにドラマ化を持ちかけたのは東京新聞の望月衣塑子記者。写真も借りていった。しかし、制作陣は「全部フィクション」と言い始め、望月氏も連絡を絶ち——。 https://t.co/kjJMmXKbJH
— 週刊文春 (@shukan_bunshun) January 26, 2022
Yahoo!ニュース 境治氏
そして
ええぇ...
#Netflix #Netflix新聞記者#望月衣塑子#米倉涼子
— Veronique (@X2nkzLeITuaFpE4) January 28, 2022
台詞「声なき声を届けるのが記者の仕事」
(動画1:03~1:48)
1番声を聞いていたのは赤木雅子さんの了承得られていない以上は演じることはできないと、降板したキョンキョンでした。
🔗 公式宣伝YouTubeよりhttps://t.co/d7cb1Yf3D7 pic.twitter.com/n1GTtCgx1B
!!!
ミュージカル ...
【速報!!】#米倉涼子 ブロードウェイデビュー10周年記念!
— ミュージカル シカゴ公式 (@Chicago_Japan) January 1, 2022
日本人女優史上初、4度目のブロードウェイ主演抜擢&2022年12月、東京国際フォーラムホールCにて「シカゴ」25周年記念のプレミアムツアー開催決定!
詳細はブロードウェイミュージカル「シカゴ」公式HPにて▶ https://t.co/KcnU7WeGph pic.twitter.com/it8msh04DC