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ミュージカルが大好きなんです(3)~映画『ウエストサイドストーリー』2021年リメイク版情報

スティーブン・スピルバーグ監督によるリメイク版『ウエストサイドストーリー』2021年アメリカ公開。日本公開は2022年2月のようです。予告動画リンクはこちら。(タイトル略称・WSS)

1957年ブロードウェイ発祥の本作品は『ロミオとジュリエット』をモチーフに、ニューヨークの片隅で繰り広げられる10代の不良グループ(the Jets ジェット団:欧州系/the Sharks シャーク団:プエルトリコ系)の縄張り争いを描いています。1961年に公開された映画版はアカデミー賞10部門獲得。

最初のブロードウェイ来日公演は1964年故・浅利慶太氏(劇団四季創設者)が当時の外貨規制枠があるなか、故・田中角栄大蔵大臣(当時)に交渉してドル建てのギャラの支払いを確保したという逸話も。その経緯から劇団四季のWSS公演もブロードウェイ公認振付師が指導しています。

【あらすじ~劇団四季公式HPより】

劇団四季版は劇場で4回観ました。オリジナル版映画はDVDにて鑑賞。

スピルバーグ監督のこだわり

今回スピルバーグ監督が指揮したリメイク版はどこが変わったのでしょうか。制作にまつわる記事を読んでみました。(※網掛け部分は以下の記事本文からの抜粋です。)

Many Puerto Ricans and Latinos initially felt seen in the original 1961 “West Side Story,” the first large-scale film to acknowledge the presence of Puerto Ricans in the U.S. mainland. It was also beloved for its memorable musical score and choreography.

「アメリカ本土のプエルトリコ移民の存在を初めて描いたオリジナル版は記憶に残るミュージカル楽曲と振り付けも相まって愛される作品となった。」

【参考】1961年オリジナル版動画
作曲:レナード・バーンスタイン
振り付け:ジェローム・ロビンス 

But such visibility came at a price. The musical’s original creators, all of whom were accomplished white men in their respective theater fields, relied on centuries-old stereotypes about Latinos that portrayed women as virginal and childlike or sexual and fiery while the men were violent and clannish, said Frances Negrón-Muntaner, the founding director of the Media and Idea Lab at Columbia University. 

「しかし、その代償は高くついた。オリジナル制作陣全員がラテン系に対して古臭い先入観をもった白人男性だった。」

In the new movie, Spielberg and screenwriter Tony Kushner work to correct the original musical and movie's stereotypical depictions, adding more specificity and historical context around the Puerto Rican experience, and around the issues of racism and racial hostility.

「リメイク版ではスピルバーグ監督とシナリオライターによってオリジナル版にあった先入観に基づく描写を修正し、プエリトリコ移民の経験や直面した人種問題の特異性と歴史的背景を加えた。」

While Spielberg and Kushner's efforts to right some of the wrongs are evident in the remake, critics have argued that it still perpetuates the notion that Latinos aren't able to tell their own narratives in big Hollywood films.

「スピルバーグ監督とシナリオライターがリメイク版製作で修正の努力をしようとも、ハリウッド大作でラテン系が自分自身の物語を語れない現状については批評家からも異論がでるところ。」

Only 4.2 percent of directors who worked on 1,300 top-grossing films from 2007 to 2019 were Latino or Hispanic, according to the Annenberg Inclusion Initiative at the University of Southern California.

「2007年~2019年の間に公開された興行収入トップ作品に携わったディレクターのうち、ラテン系およびヒスパニック系ディレクターの割合は僅か4.2%。」

Sánchez-Korrol said Spielberg and Kushner’s attempts to make the portrayal of Puerto Ricans in 1957 New York more accurate wouldn't have been possible without the work of research institutions like the Center for Puerto Rican Studies at Hunter College and others that have spent decades documenting Puerto Rican history — resources that didn't exist when the original “West Side Story” was created.

「1957年ニューヨークに生きたプエルトリコ移民の実像に迫るスピルバーグ監督とシナリオライター試みも、オリジナル版が制作された頃には存在しなかったプエルトリコ移民研究資料の蓄積があってこそ成し得たこと。」

The new “West Side Story” includes a significant amount of Spanish dialogue without subtitles, reflecting the experience of more than 40 million Latinos who speak both English and Spanish. The dialogue is full of slang words that Puerto Ricans would recognize, such as "zángano,” which means "dummy" or "doof," and “prieta,” referring to a dark-skinned woman. However, enough is said in English for monolingual audiences to follow the plot.

「リメイク版では英語とスペイン語の両方を話したラテン系移民の実体験を反映させるべく、字幕なしで膨大な量のスペイン語会話が盛り込まれる。プエルトリコ移民の肌の色を指したスラングも。英語話者の観客にも物語の流れから十分に理解できる構成。」

In addition, all of the Puerto Rican characters are played by Latinos.

「プエルトリコ移民の配役全て、ラテン系俳優が演じる。」

Spielberg subtly hints at the difference between the police's sympathetic treatment of the Jets and their treatment of the Sharks. Jets member Anybodys is portrayed as a nonbinary character by the transgender actor Ezra Menas, not as an old-fashioned tomboy, as in previous versions.

Anybodys also uses the virtual invisibility of gender nonconformity as an asset, vigilantly observing from "the shadows" and reporting back to the Jets.

「ジェット団メンバー、エニィボディスはトランスジェンダー俳優が演じることで、女の子が男勝りにふるまうオリジナル版の古いイメージを刷新。既存の枠にとらわれないジェンダー像は陰からシャーク団の動きを探ってジェット団に報告する立ち位置に活かされている。」

近年マイノリティー役はマイノリティー当事者が演じるべきだという声が他作品でもありました。この欧米エンタメ業界の動きが吉と出るか、凶とでるかひっそり見守っています。

ミュージカルナンバー「アメリカ」比較

【1961年オリジナル版】

【2021年リメイク版】

"Is it better to stay in America, where people don't accept you, or is it better to stay in your country, where you're not living a free life but you're more accepted within that community?" Alvarez said. "That's why I love this number, 'America,' because it has these two different ideologies, these two people who think differently."

「アメリカ」はシャーク団(プエルトリコ移民)のナンバー。新天地アメリカの地に自由への憧れを抱きながら歌うアニタ(シャーク団リーダー・ベルナルドの恋人)。後からやってきた者に冷たいアメリカの仕打ちに対して不満を募らせるベルナルド。シャーク団の中にも様々な想いが交錯。

しかし、そんなアニタの心をも打ち砕くような事件が起こるのでした…。

この2つの動画をパッとみると色使いが明らかに変わっています。これも古い先入観を刷新するための演出なのでしょうか?劇団四季版もオリジナル版の色合いを踏襲しています。

アメリカには「紫色」に特別な意味があることを、2021年1月バイデン大統領就任式のときに知りました。ミシェル・オバマやカマラ・ハリスが紫色の衣装を身にまとっていた意味を改めて考えています。

【過去の投稿より(~紫色の意味)】

オリジナル版を超えることの難しさ

エンタメ業界が苦戦を強いられる昨今の情勢は、スピルバーグ監督にとっても厳しい向かい風。興行収入は出だし期待外れと手厳しい。やはりオリジナル版は偉大だったという結果に終わるのか?

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