読書感想文『ああ 正負の法則』美輪明宏 著(800字)
滅多にテレビをつけない生活をしてる私がたまたま電源をいれたら、画面に神々しいお姿の美輪明宏先生がご出演していらした。仮面をつけた人たちが美輪先生に自分の悩み相談をするという番組。その相談はさておき、番組終盤にこんな御言葉が。メモしていたわけではないけれど、こんなニュアンスだったと記憶している。
「自分を救えない者が、他人を救おうとするな」
ハッと我にかえった。
私の悪いクセ、思考パターンをまた繰り返していることに気付いた。いま心身のバランスを逸して休職中の私が、この世の終わりを心配してTwitterにのめり込んで情報に溺れるのはあまり得策ではない。そこで得た情報をもとに、私が世の流れを変えるほどの能力とタフな精神力を兼ね備えているのならばまだしも。自分で自分の悩み事、心配事を際限なく広げれば、消耗するのは当たり前だ。地獄の釜の温度を先回りして計測しようとして、「ああ、やっぱり熱かった」と変に納得して安心する。この繰り返しが延々と続く。
そこで私の書棚から美輪先生の御著書を久しぶりに開いてみた。
「腹六分」
これが美輪先生の説く、人付き合い、生き方のコツ。「水臭いと言われるくらいが丁度よい」のであって、求められてもいないのに相手の領分にまでグイグイ入り込んでしまっては良い関係は長続きしないというもの。
自分が心配してやったのだから、まわりから自分も大切にされて当然だと思い込めば、その期待が外れたときにタチが悪い。さすれば、往々にして妬みや恨みといった「負」の感情がふつふつと沸いてくるのだから。
「気にかけていますよ」という温度が相手に伝わるか伝わらないかの塩梅を保つことができたならば、自然と穏やかな環境に身を置けるはずなのに。私はいつもこの距離感を取り違えて自爆する。
不安や心配に満ちた未曽有の時代をどう生き抜くか。自分に足りないものは何なのか。自分の人生を生きる鍛錬と修行からやり直しである。