炭水化物ってなに?植物が次世代のために蓄えた「愛情の結晶」をヒトは頂いている。栄養の基礎知識【地球の栄養と人間の身体の仕組み】#2
「炭水化物」と聞くと、みなさん何を思い浮かべますか?
お米やパン、パスタでしょうか。
それとも、じゃがいもなどの芋類でしょうか。
今回は、三大栄養素のひとつである「炭水化物」について、植物の光合成から人間のエネルギーになるまでを分かりやすく解説します。
※本記事は、ベジタブルテック(株) 代表取締役 岩崎の動画のリライトです。栄養学について解説しています。動画はこちら。
炭水化物って?
炭水化物というと、代表的な食べ物はお米、パン、麺などの穀物などですね。また、芋類や果物も炭水化物です。
興味深いのは、これらがすべて植物だということです。
もともと、大気・土・水だった資源を、炭水化物にまで合成しているのは植物です。では、どうやって植物は炭水化物を作っているのでしょうか。
これはみなさんご存知のように光合成なんですね 。
植物が炭水化物をつくる「光合成」の仕組み
植物は、空気中の二酸化炭素(CO₂)と地中の水(H₂O)を材料に、太陽熱を得ることで、光合成をして炭水化物を作っています。この炭素と炭素が結びつく過程で、同時に酸素(O₂)を放出します。
このように光合成によって作られた炭水化物は、植物にとって「エネルギーの貯蔵庫」の役割を果たします。
炭水化物の構造と燃焼のしくみ
前回の記事で紹介したように、炭水化物には、太陽エネルギーが「炭素同士の結合」に保存されています。
炭水化物は、炭素が亀の甲羅のように結合しています。CO2が元となって、炭水化物の形になっているんですね。そして太陽エネルギーが炭素と炭素を結合する時、太陽エネルギーも保存されています。
この炭素をチョキンと切った時に、エネルギーが発生します。「燃焼」という反応です。例えば、ろうそくの火が燃えるのは、酸素を使って火が燃えて、二酸化炭素が出ていきます。
炭水化物を食べると、体内で「燃焼」が起きる
実は栄養の燃焼、炭水化物の燃焼も、全く同じような反応なんです。
炭水化物を食べて体内でどんどん代謝し、炭素を分解していく時に、酸素が炭素を切り取ります。そうすると、炭素と炭素の間に保存されていた太陽エネルギーが、ボッ!と燃焼します。
この時、酸素(O₂)が炭素(C)と結びつき、二酸化炭素(CO₂)となって呼吸で排出されます。呼吸で吐き出している二酸化炭素は、実は体内で燃焼された栄養素の痕跡なのです。炭水化物や脂質が燃焼された炭素が、出ていっているということなんですね。
こうして炭水化物は作られ、炭水化物を摂取した生物は成長していきます。
光合成で作られる2種類の炭水化物
炭水化物には2種類あります。どちらも光合成によって作られるものなので、材料は一緒です。
1.糖質 :人が消化してエネルギーとして吸収でき、カロリー源になる
2.食物繊維:人間の体では消化できず、腸内環境を整える役割を果たす
1.糖質
糖質は、消化して吸収することができるので、エネルギー源となります。なので、我々人間にとってはカロリーがあります。糖質は非常に使いやすく、 燃焼しやすいエネルギーです。
2.食物繊維
食物繊維は、植物にとって体を支える「骨格」のようなものです。
糖質がたくさん網目のようにくっついているので、我々は消化することができません。人間の体内では吸収できないため、カロリーにならず、全部大腸にいって便の材料になります。
だから、人間とよって食物繊維はカロリーゼロと考えられるんです。
人と植物の命のつながり
植物は、炭水化物を合成し、自身の体や果実を作ります。
そして糖質は、植物にとっても大切なエネルギー源です。植物は、種子の周りに果肉があり、果肉に糖質が蓄えられています。お米もそうですし、リンゴがわかりやすいですね。
なぜ、果肉は種子の周りに保存されているのか。
果実部分には、植物が「子供のため」に用意したエネルギーが込められているのです。
植物が次世代に命をつなぐ仕組み
植物が実をつけ、種をつけるためには、まず花を咲かせます。植物は生殖器があらわになっている姿をしていて、裸の状態です。 頭が土に刺さって、下半身が上に出ているイメージなので、人間と逆ですね。花にはおしべとめしべがあり、そこに花粉がついて受粉します。
「花を美しい」と思うのは、芸術でも裸の絵があるように、植物も一緒です。生命の根本は子作りに関係しますから、パッと花が咲くと、我々には美しく見えるわけです。
そうして植物は受粉して子供を産み、花が散り、実がなっていきます。実の中にできた種は大地に落ち、親から離れて生命を維持していきます。
光合成ができない種は、どうやって成長するのか?
種には葉がありません。 葉がなければ、植物は光合成ができません。
では、どうやって種から植物は成長していくんでしょう。
植物の実は、親木が種の周りに光合成して蓄えた糖質とともに、枝から離れていきます。大地に落ちた後は、親が蓄えておいてくれた糖質のエネルギーを使って種子は発芽します。芽を出して初めて、自ら光合成をして生きていくことができます。
食べることは命のつながりを引き受ける行為
つまり、我々が食べている果肉の部分は、植物からすると「子どものために蓄えた愛情」でもあります。それを奪えば種は生きていけないので、我々はその愛情と命のエネルギーを背負って生きていくわけです。
お米なんて、いったい何粒食べていますか?
一粒一粒に親の愛情が詰まっていることを考えると、なんとありがたいことでしょうか。「ごはんを残さず食べなさい」という教育は、命に対する尊敬や敬意の教えだったわけです。ごはんを残すのは「もったいないから」「汚いから」ではなく、私達は植物の命としての仕組みの間をいただいているので、「命への敬意を示して食べなさい」ということです。
こうしたことを子どもたちが知ったら、もしかしたらもっと「残さず食べよう!」という気持ちが生まれるかもしれません。栄養学は食育にも本当に大事だと思います。
美しい食べ方が示すもの
食事の後、茶碗にご飯がたくさんこびりついたまま「ごちそうさま」という状態は、なんだか汚く、行儀が悪く感じられるのはなぜでしょうか。
これはもう、美意識で分かっているんだと思います。植物や命に対する姿勢が「どうしても違う」「おかしい」と感じるから、 自然と「よくない」と思うのですね。
逆に、食べ物をきれいに食べることは、命に対する敬意も感じ取ることができるので、「あの人の食べ方は美しい」と感じるのかもしれません。
栄養学を通じた「食育」の大切さ
私たちが口にする食べ物は、単なる栄養源ではなく、植物が未来のために蓄えた「愛情の結晶」です。食事をいただくことは、命のつながりを引き受ける行為とも言えます。
栄養学は、食事の栄養素を理解するだけでなく、「食を通じて命を尊重する心」を育む上でも重要です。こうした学びがあると、私たちの食事が単なるエネルギー補給ではなく、命のつながりを大切にする行為であることが、より深く理解できるでしょう。
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