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徳島にし阿波の傾斜地農業と、   「そば米雑炊」を今に伝えるご夫婦


徳島県つるぎ町。
「にし阿波」と呼ばれる地域は四国の中でもとりわけ急傾斜が多い。

一般には、石積みをしたり、土を積み上げて階段状の「段々畑」にするが、あまりに急傾斜ゆえに、この地域では「土をナナメのまま」作付けする方法が選択されてきた。

「傾斜地農耕システム」と呼ばれ、国連FAOの世界農業遺産に認定された。

傾斜地で、そばなどを栽培し、80年暮らす西岡田さん夫妻。
切り立った山の下を流れるのは、貞光川

日本じゅうの農村を旅して感じるのは、日本人の半分は山岳民族なんじゃないかということだ。

平野部に人口が集中したのはせいぜい昭和からこっち100年ぐらいでそれまで人々は山あいの傾斜地でいかに食料を生み出すか知恵を絞り、技を編み出してきた。

それが今 里山 satoyama としてSDGSと合わせて再評価されているのを見ると、やはり戻るべきところへ回帰していると思えてきます。


斜面一面、そば畑、11月は収穫期

傾斜地どんだけ〜〜〜

と叫びたくなるつるぎ町貞光、その名も猿飼集落。
この日も猿が何十頭も集団で移動していた。
獣と同居するのは、ここでは今に始まったことで話ありません。

連れ添って55年、西岡田さんに夫婦二人三脚の山の暮らしについて伺うと、そばをまくのも刈り取りも1人ではできない。
もう片方に持ってもらわないと防鳥のテープも張れないと話してくれました。

傾斜地農業を継承してきたお二人は、地元新聞や様々なメディアに取り上げられる。
座敷の奥のふすまや壁一面に貼られた掲載紙。ご夫婦と傾斜地農業の記念館。


2017年の新聞。「にし阿波の傾斜地農耕システム」は「世界農業遺産」に認定された。
斜面そのまま畑に。土の流失を防ぐ技術。


斜面の土が下へ流れ落ちるのを防ぐため、下から上へ毎年、土を持ち上げるように耕す。
専用の道具。6本のつめのクワ。地元には専用の鍛冶屋がある。


そばの粒々、食べ応えがありおいしい。

米が取れないので、そばを粉にせず粒のまま雑炊にする「そば米雑炊」。
そばの殻をむいたものをいったん茹でてから天日干しした保存食。

秋にはきのこや根菜類をたっぷり。いりこだしに手づくり醤油。
そば米は、煮すぎると崩れるので、茹でた後、水洗いして水を切っておく。野菜などに火が通ったあと最後に加える。

いりこだしと醤油で、なんとも上品な透き通ったおつゆ。
サラサラッと1杯でごはんとお汁の一石二鳥で、水分もほどよく、おかわりしたくなる。
そば米なので、食べれば食べるほどお腹にもヘルシー。


そば米、ねぎ、ごぼう、ニンジン、しいたけ、しめじ、かまぼこ、ちくわ、出汁はいりこ。醤油も手づくり。

煮干しの出汁が効いて、山の野菜が具沢山で、そば米のつぶつぶ食感食べ応えあり、おいしいこと。

土地の特性に合わせて食料生み出す仕組み(適地適作)と、
それゆえに育まれた地域文化であり食文化。

そば米

私達のために、せつこさんが「そば米雑炊」を作って下さった。
ほかの地域では、「そば米汁」と呼び、汁がメインのところもあるが、
ここはそばの産地なので盛りだくさんの雑炊。

せつこさんがお椀にそば米雑炊をよそうと、すっとお盆を持って運ぶのは西岡田さん。

すっとお盆を持つ西岡田さん。

昔の男の人は家事を手伝わないなんていうのは嘘だと思った。
手伝うなんて消極的なことではない、そこには主も従もない、誰かがしないと次に進めない。
とても理に適った動き方に見えた。

自然と共生する知を合わせ持つ山の暮らしに学ぶことは多い。

傾斜40度のそば畑にて 世界農業遺産の旅 ベジアナ

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