『夏の名前』#虎吉の交流部屋初企画』
私は、夏が大嫌いである。
もう、何が嫌って。
そもそも暑いのがとにかく嫌なのだ。
私はもともと暑さに弱い生き物で、気温が25度を超えれば機嫌が悪くなり、30度を超えれば人様に当たり散らし、35度を超えれば、イライラを通り越して、“無“の感情になるくらい、嫌だ。
夏の中で好きなものなどない、と思ってた。
スイカは、まあ、嫌いじゃないけど別に好きでもないし、アイスクリームは年がら年中食べてるし、風鈴の音で風流を感じるほど侘び寂びを理解した人間でもないし、蝉の死骸がそのへんに転がってたら思わず蹴飛ばすくらい嫌いだし。
だから、虎吉さんの交流部屋企画に参加しよう!と思い立ったときも、「あ、エピソードなさすぎて無理かも」と思った。
花火大会とか浴衣とかお祭りとか。
そのテーマで書けなくはないけれど、すでに今年の気温が私の許容範囲を大きく通り越しているので、ネタをひねり出そうとしても頭が回らない。
うーん、うーん。
と締め切りギリギリまで悩んで。
そういえば、ひとつだけ。
夏の中で好きなものがあったことを思い出した。
私は、夏の夜が好き。
正確に言えば、夏の日の夕立のあと。
ほわっ、と香る、夏の匂いが好きだ。
蒸し暑い夏の夜。
水に濡れた草の香り。
雨のあと、ほんの少し涼しげな風が吹いて。
それにのって鼻をくすぐるほろ苦い土の香り。
冬や秋では嗅げない。
あの独特の夏の香りが好きだ。
いつから好きになったんだろう。
思い出をたぐり寄せるうちに、ふ、と10代の頃の自分が頭によぎった。
夏の夜。
東京からの帰りの新幹線。
プラットホームに降り立って。
安心している自分の姿。
私は10代のころ。
今よりもずっとジャニーズが好きだった。
今はどうか知らないけれど、その当時、ジャニーズオタクにとって夏といえばコンサート、と言えるくらい、毎日のようにどこかのグループがコンサートを行っていて。
私が追いかけていたV6と嵐も、よく夏にコンサートを開催していた。
強火のオタクだった私は、そのたびに東京に遠征していて、とにかく公演があるごとに東京に行くものだから、もう、夏の半分くらいは、東京で過ごしているようなものだった。
楽しい気持ちをたくさん抱えて。
戦利品のうちわやポスターや、買ったグッズを山ほど抱えて。
地元に無事に帰り着いたとき、いつも私を“夏の匂い“が迎えてくれた。
地元は雨の多い土地だから。
私が帰る日にはいつも雨が降っていた。
雨上がり、駅を出ると、高揚した体を冷やすような涼しい風と一緒に、優しく香る、夏の匂い。
それを感じると安心して。
「ああ、帰ってきたなぁ」ってホッとした。
東京は楽しいことがたくさんあるけど。
けれど、私の街は“ここ“だから。
そうか、それを覚えているから。
私は今も、夏の夜の匂いが好きなんだなあ。
V6は解散して、嵐は活動休止中。
東京に行くこともなくなって、新幹線に乗る機会もとんと減ったけど。
仕事帰り、職場から一歩外に出て、蒸し暑い夏の風が体を包み込むと思い出す。
楽しかった記憶を。
忘れられない、私の青春時代を。
だから私は、夏の夜が好きだ。
虎吉さ〜ん!
どうにか思いついたので、滑り込んでみましたが、ギリギリセーフですか?(笑)
素敵な企画に参加させていただいてありがとうございました(*´꒳`*)
やっぱり誰かの企画に参加するのって楽しいね!