この思いはただ自分のためだけにあることー凪良ゆう「わたしの美しい庭」
ここは私だけの庭、とてつもなく美しい、或いは、そう信じている。あなたにはあなたの庭があって、あなたが美しいと言うのなら、それはあなただけの美しい庭。
私はそれを否定しないから、どうか私の庭をあなたの言葉で形容しないで。
この小説の登場人物は、それぞれの庭を持っている。庭はそれぞれの人生であり、庭の草木はそれぞれの人生が育んだもの。その庭は、その人だけの庭であり、他人が語り草にすることは許されない。
たったそれだけのシンプルな願いを理解してもらうことは難しい。いや、そもそも誰に理解してもらう必要があるのだろう?私の幸せも不幸せも私が決めるものであって、誰かに説明して理解してもらう必要はないのだと、気付き、納得し、それでも込み上げてきそうになるものを飲み込んで、今日を生きていくことこそが難しいのだ。
私たちは、幸せや愛おしさ、そして、孤独や不安、苦々しい思いを誰かと分かち合いたいし、誰かに分かってほしいと思っている。
けれど、同時に、誰からも何も言われたくない、評価されたくない、この思いは私だけのものだとも思っている。
そんな人間の弱さや繊細さと向き合って、それでも強く生きていくことはできると背中を押してくれる本。
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