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 隣人を愛すること

※見出しの写真はロシアのソチに住むウクライナ系の人たちです

 2019年11月4日、民族統一記念日にて



 一昨日、仕事の現場が岩槻区だったため、帰る途中で大宮の「ロシア家庭料理ターニャ」を訪れた。

 本当に久しぶりだ。

 この一年、それぞれに色々と大変であったけど、こうして元気でいられたことを先ずは互いに喜びあった。

 とりあえず席に着き、大好物のボルシチとビーフストロガノフを注文する。

 ここの料理はリーズナブルだけれど掛け値なしにフクースナ(美味しい)だ。

 ロシアを何度も旅して、レストランやスタローバヤ食堂で食事したから判るけど、
さすがロシア人が作るだけあって、それは本場の味であり、
決して日本人の口に合わせて何かを変えたりはしていない。

ビーフストロガノフとボルシチ
いつ食べても美味しい

 久しぶりのロシア料理に舌鼓をうちながら、

彼女の近況報告に耳を傾ける。

 コロナ禍が始まってからというもの、ご存知の通り飲食店は壊滅的な打撃を受けた。

時短営業、人数制限、アルコール消毒、etc…

様々なハードルがかせられて、大小に関わらず多くの店が閉めざるを得ない状況は今も続いている。

 そこに来てこの戦争が追い打ちを掛けた。

材料や光熱費など物価の上昇は大打撃である。

それを料理のお代に上乗せすればお客の入りは更に減る。

家賃だって安くない。

 普通の飲食店でもこの惨状だけど、

ターニャさんのお店の場合はこれだけではない。

 断っておくが、ロシアは日本と戦争しているわけではない。

しかし、政府やマスコミの対応は完全な「敵国認定」に他ならない。

当事国以外は中立であるべきはずなのに。

 そして、感情的になりやすく乗せられやすい一部の人々は直接的な被害者でもないのに、
国内のロシア人たちに様々な嫌がらせを繰り返しているのだ。

 「まだわからないけど、来年の5月にお店を

閉めようと思う」

 「だから、その前に展示している写真を引き取りに来てほしい」

と彼女は言った。

 突然のその言葉に大きなショックを受けた。


そしてそれ以上に、そこまで彼女が追い込まれていることに今の今まで全く気づかなかった自分が情けなかった。


店内に展示させて頂いているロシアの風景写真



 
 ある時、三人組の若者が訪れて、ボルシチを注文したそうだ。

 最近ユネスコがボルシチをウクライナ料理に認定したため、
彼らは「これはロシア料理ではない」などと難癖をつけ始めた…

 全くどうでも良い話である。

そのことが彼らの実生活に何か影響するのだろうか?

 現在のウクライナは昔からそこに存在したわけではない。

様々な民族が入れ代わり立ち代わりその地を支配し、混ざり合ってきたから、人種や文化、宗教も含め厳密に区別など出来はしない。
 
料理だって同じだ。

ボルシチはロシアやウクライナの周辺諸国にもあるし、元々主な材料であるビーツもギリシャからのものだと何かで読んだ。

 話が逸れたが、お店の経営が大変である上に、そのようなクレーマーや暴力的な客がかなり増え、警察に相談しなければならないほどとなり、心が折れそうなまでにまいっているのだと言う。

 彼女は東日本大震災後に東北から大宮に避難して来て以来、一人で子育てをしながら店を開き、10年以上ここで頑張って来た。
 
税金だってロシアではなく、ちゃんと日本に払っている。
 
そして、彼女の親類にはウクライナ系の人たちもいて、彼女自身、多少はウクライナ語も理解できるのだ。

 いったい彼女がどんな罪を冒したと言うのだろうか?

因みに私のロシア語の先生もウクライナ系ロシア人だ。

 ロシアにもウクライナ系住人はたくさんいるし、ウクライナにもロシア系住人はたくさんいる。

 そうした背景を、国境が地続きで接していない島国に住む日本人にはなかなか理解出来ない。

 そして、我が国を支配している彼の国がそこで対立を煽っている事が、
より一層物事を複雑なものにしている。

 そう考えると両国とも被害者なのである。

↑オリバー・ストーン監督による「ウクライナ・オン・ファイアー」を見れば、これが現実だと解るだろう。

  無知とは本当に恐ろしい。

迫害を加える人々は実は何も知らず、ただ日頃の不満を何かにぶつけたくてスケープゴートになりそうなものを探し続けている。

 その根底には弱さが見え隠れしている。

彼らは自分の間違いを決して認められないほど幼稚なのだ。

 そのような動物的な人間と、どう関われば良いのか私にも解らない。
 
 を理解出来ない者、する気がない者にそれを理解させるのは難しい…

 それでも、必ず希望は見出だせると信じている。

世の中がどう変わろうとも、私にとってロシア人もウクライナ人も兄弟姉妹であることに変わりはない。

 この先もできる限りずっと、
平和的なことを彼らのためにするつもりだ。

「あらゆるタイプの愛の根底にある基本的な愛は、兄弟愛である。
特徴は排他的なところがまったくないことだ。」


無力な者や貧しい者やよそ者に対する愛こそが、兄弟愛の始まりである。」

       (エーリッヒ・フロム)

「永遠の炎」を見つめる親子
ターニャさんの故郷、ヴォルゴグラードは
ヨーロッパ戦線最大の激戦地
スターリングラードとして知られる
広島市と姉妹都市でもある
平和を願う気持ちはみな同じだ


愛は忍耐強い。愛は情け深い。ねたまない。

愛は自慢せず、高ぶらない。 礼を失せず、
自分の利益を求めず、いらだたず、恨みを抱かない。 

不義を喜ばず、真実を喜ぶ。 すべてを忍

び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐える。
(コリント人への手紙一 13:4-7 )

復讐してはならない
あなたの国の人々を恨んではならない。あなたの隣人をあなた自身のように愛しなさい。」(レビ19:18)

悲嘆にくれる母親の像
2019年、ヴォルゴグラードにて

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