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映画『ガザからの報告』が届ける声に…

イスラエルによる「過剰防衛」としか思えない猛烈な攻撃にさらされているガザにいる庶民の声を世界に届ける映画『ガザからの報告』を観ました。
約3時間半という長く重い映画ですが、長期密着取材に裏打ちされた迫力にたじろぎつつ前のめりになるような作品でした。

公式サイト

映画『ガザからの報告』ポスター


作品の概要はこちら。

「ガザの全てが終わってしまった——」
パレスチナ取材歴30年の土井敏邦による
過去と現在を繋ぐ渾身のレポート!

. 2023年10月7日、ハマスによる越境攻撃をきっかけに始まったイスラエルによる未曽有のガザ攻撃。1年が経過した今、死傷者は10数万人にも及び、住まいを失った住民は全人口の85%以上、190万人に達している。
. この間、パレスチナ・ガザ取材歴30年の土井敏邦のもとには現地ジャーナリストから定期的に報告が届いている。「電気、水が遮断され、深刻な食糧危機が続き、生活環境も治安も悪化する中で、人々は精神的にも追い込まれている――」。命がけで伝えられるその“生の声”を受け取った者の責務として、土井敏邦が世界に向けて放つ激動のガザ・30年の記録!

映画公式サイトより

本作は二部構成になっています。

第一部「ある家族の25年」(120分)
. 故郷を追われ、ガザ最大の難民キャンプ「ジャバリア」で暮らすエルアクラ家。土井敏邦は1993年9月の「オスロ合意」直後から住み込みで取材を開始した。職につけず、結婚もままならない息子たち。家族と共に故郷へ戻れる日を待ち続けている父。イスラエル軍の撤退、解放、パレスチナ自治政府の誕生――。「和平」ムードに人々が歓喜する一方で、父は「これは本当の和平ではない」と怒り、故郷への帰還を諦めて家の増築を始める。パレスチナ初の選挙が行われ、インフラが整備されたガザで、エルアクラ家の息子たちは仕事と家庭を持ち、新たな生活を送っていた。しかし自治政府の独裁・強権政治と腐敗が深刻化し…。25年の歳月をかけエクアクラ家の人々の人生をみつめた本作はガザ住民にとって「オスロ合意」とは何だったのかを問い、「ガザのパレスチナ人」と一括りにされる彼らが私たちと“同じ人間”であることを伝える。なお、エルアクラ家の人々は今回のイスラエルの軍事作戦により、消息が途絶え安否不明となっている。

第二部「民衆とハマス」(85分)
イスラエル国家を認めず、全パレスチナの解放、難民の帰還を掲げるハマス。彼らは貧困に苦しむ家庭への食料配布や孤児の救済、女性の職業訓練、医療支援といった慈善事業と、 パレスチナ解放をめざす武装闘争の両面で民衆の支持を拡げてきた。2006年の選挙と、翌年の内戦の勝利によってハマスがガザ地区を実効支配するようになると、イスラエルは封鎖政策を強化。さらにはハマスの悪政も重なり、人びとはかつてない貧困に喘ぐことになる。絶望した住民たちの中にはイスラム教で禁止されている自殺に走る者、ガザ脱出を図る者まで続出していた。本作は後にイスラエルに暗殺されたハマスの指導者やスタッフ、戦闘員、そしてガザ住民へのインタビューを重ね、ハマスが民衆から乖離していったプロセスを追い、今のガザの惨状の根源を浮かび上がらせる。そして今回のガザ攻撃を受けた現地からの報告を元に、インフラも人間も、すべてが破壊されてしまった現在のガザの厳しい現状を伝える。

映画公式サイトより

土井敏邦監督のメッセージ

私は1985年以来、34年間、パレスチナに通い続けてきた。遠い国の人たちに起こっていることを伝えるときにまずやるべきことは、現地の人びとが私たちと“同じ人間である”と伝えることだと私は考えている。私たちはニュースが伝える数字で現場の実態を「分かった」つもりになる。しかし、あの空爆や砲撃の下には犠牲になった一人ひとりの死の痛み、悲しみがあるのだ。遠いガザで起こっている事態を、日本で暮らす私たちに引き寄せるために、長年ガザと関わってきたジャーナリストの私がやるべきことは、そのための“素材”を提供することではないか。ハマスによる越境攻撃から2週間ほど経た10月下旬から、現地ジャーナリストMは1~2週間ごとにインターネットの画面を通して、現地の状況を伝えてくれた。自身も自宅が砲撃を受け、弟と義弟が殺されたMは、世界のメディアが伝えない市井の人びとの空気を私に伝えてきた。Mが命懸けで伝えてきたその“生の声”を受け取った私には、それをきちんと世界に向けて伝える責務がある。この映画はそういう役割を担っている。

映画公式サイトより


上映後のトークショー(私が観た回の登壇者は、土井監督と松原耕二氏)も含め、とても衝撃的な、学びの多い映画でした。
いくつか挙げておきます。

・「オスロ合意」に対して漠然と抱いていた「長年にわたる対立の解決策、落としどころとして、妥当なもの」というイメージが大きく揺らいだ。

・ハマスが何故パレスチナの人々の支持を得たか、何故それが失われたか、その経過が腑に落ちた(「権力を握ると必ず腐敗する」のですね)。

・イスラエルによる苛烈な攻撃は、パレスチナの民衆の家を、健康な体を、命を奪うだけでなく、精神面の健康、病気の治療を受ける機会、教育の場、農業や商いその他の生業を成り立たせる環境…などなど、生きる基盤の全てを破壊している。

・アメリカやドイツなどがイスラエルの暴挙に対して弱腰なのは、アメリカの建国の経緯やナチスドイツの所業に対する反省もあるが、キリスト教社会において、「キリスト再臨の前提条件は、ユダヤ民族が『約束の地』に帰還すること」という認識があることが大きい。

・ウクライナとロシアの紛争、パレスチナ他とイスラエルの紛争、いずれも百年単位、あるいは数百年単位の、長く複雑な歴史的な因縁の積み重ねの上に起こっている。


この映画を観て、さて、私に何かできるのか?
正直、具体的なことは思いつきませんが、とにかくまずは知ること、そして発信すること、だと思って、このような投稿をしています。

「知ること、
 目を塞がないこと、
 とりわけ『苦しい』という声に耳を塞がないこと」

第一歩はそこから、と信じて。




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