三谷幸喜の新境地:『オデッサ』観劇
当代きっての人気劇作家の一人、三谷幸喜の3年半ぶりの新作『オデッサ』を池袋の東京芸術劇場で観劇。
運よく、俳優たちの表情がよくわかる良席を確保できたこともあり、とても楽しめました。
何を書いてもネタバレになりそうですし、事前情報は入れない方が楽しめると思うので、話の筋には触れない、抽象的な感想のみにとどめますね(敬称略)。
まず、異色の分野を開拓して、これほど笑いの絶えない舞台に仕立て上げた三谷幸喜の力量に感服です。
『東京サンシャインボーイズ』時代の、笑いを追求する作風を強く感じると同時に、技術的に非常に高度なことをさらりと見せる、まさに「年月を経た三谷幸喜ワールド」が全開でした。
今作のテーマは「言葉」。
コミュニケーション・ギャップの連鎖で客席を笑いの渦に巻き込みながら、社会批評や文明批評っぽいスパイスも効かせ、開演アナウンスからカーテンコールまで、伏線の張り方と回収もおさおさ怠りなく、ウェルメイドの演劇としてまさしく絶品です。
そして、大奮闘を見せた3人の出演者。
膨大な量の、しかも実質3か国語の台詞を難なくこなしているように見えるのが凄いです。
言動がいちいちチャーミングな「好青年」、柿澤勇人、
役の人間性がご本人のイメージと重なり、とってもキュートな宮澤エマ、
緩急自在な芸達者ぶりを遺憾なく発揮した迫田孝也。
ただただ拍手です。
<こぼれ話>
『鎌倉殿の13人』でも共演していた3人に、小栗旬と小池栄子から差し入れがあったとか。交流が続いているんだなと温かい気持ちになります♪
舞台を支えるスタッフワークも「水も漏らさぬ」出来です。
三谷作品に欠かせない、演奏担当の荻野清子は、出で立ちからバッチリ。
そして、なんといっても「〇幕」担当の方々、幕の作りもオペレーションも素晴らしい!!
以下、少しだけ「ネタバレになるかも?」なことを。
物語には触れませんが、本作を観る予定がある方には、ここで引き返すことをお勧めします。
今作には、これまでの三谷作品の要素があれこれ顔を出します。
2024年、『リア玉』での『東京サンシャインボーイズ』復活が実現するのか? その時を前に原点回帰している?ような印象を抱きました。
たとえば…
『笑の大学』
ごく少人数での、緊密な構成
『12人の優しい日本人』、『愛と哀しみのシャーロック・ホームズ』
ロジカルな推理もの
『ショウ・マスト・ゴー・オン』ほか
アドリブの余地がないほど隅々まで計算されたシチュエーション・コメディ
『君となら』ほか
嘘が嘘を呼び、思わぬ騒動になる展開
『笑の大学』ほか
一件落着、と思わせておいて、意外などんでん返し
『日本の歴史』
テキサスを舞台にし、日本とアメリカを絡める
『ベッジ・パードン』
英語と日本語と日本の方言が入り乱れる遣り取り
……といった具合。
それでいて、自己模倣とか縮小再生産には決して陥らない所が凄いです。
正直なところ、長年、三谷作品を見続けてきて
舞台なら 『笑の大学』
映画なら 『ラヂオの時間』
ドラマなら 『王様のレストラン』
と、30代の作品が一番好きで、それが長いこと変わらないという点が、正直このところ引っかかっていたのですが、ホント「お見それしました」。
一番のお気に入り、舞台部門に『オデッサ』がめでたくランクイン~♪♪
集大成のような趣を見せつつ、誰も思いつかなかったような斬新な仕掛けで客席を笑いと驚きで包む、三谷幸喜の新境地に乾杯!
最後に、エンタメとセットの美味しいもの。久々にご紹介しましょう。
都内の某ホテルにて飲茶を頂きました。
ひとつひとつが上質でとても美味しく、大満足で池袋に向かったのでした。
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