見出し画像

M.eriのおいしんぼ横丁。


M.eriは、小さい。
ちなみに、M.eriのMは、mosquito から拝借している。

ボクシングのアマチュアのジュニアだけに存在する、最軽量の階級モスキート。
(※現在は、ピン級)
mosquito とは”蚊”のことを表す。



M.eriは強風の時、周囲から心配される。
「傘をさすのは、自殺行為だ、やめろ」と、
風力に敵わないレッテルを貼られる。



「お食べ」と、
たくさんの同僚が私のPCの脇におやつや、
カップ麺を習慣のように置いて去っていく。

患者さんの部屋に行けば、
「昨夜から煮込んだ黒豆を、ぜひあなたに」
と、掌に何かを包んでくれる。
それは大抵、
黒くて、小さくて、丸い、うんこだ。


M.eriは、痩せっぽっちなのだ。

17日現在、気象庁によると、強い台風7号は1時間に20キロのスピードで関東に接近しているという。

ニンゲン・メスの時速は10km/H。
なんだか敵いそうにない。

私は、西に逃げた。

三重県へ。

穏やかな伊勢湾と、
太平洋の荒波が押し寄せる熊野灘、
急峻な鈴鹿山脈と雄大な台高山脈、多くの清流と、美しい自然に囲まれている。
朝井リョウの、出身地としても有名だ。

台風だって、
モスキートeriを
単独で追いかける事もないだろう。


M.eriは、歩く。

食べ物を求めて。

伊勢神宮の内宮、宇治橋から歩いて5分。
おはらい町の中ほどに「おかげ横丁」という、50余りの店が軒を連ねる一つの町がある。


わくわくした。

風景は、江戸。
私は庶民。
全てを食す、そう決めた。


手始めに、
同僚の任侠ヘルパーおすすめの
赤福本店に入る。

大人かよ、あたし。


トーンタンタン トーンタンタン
というリズムが聞こえる気がする。

羌瘣と共に、縦ジャンプして、飛び込もうじゃないか



食す。
おお…

私は時折、糖で怪我をする。
これは、フライ級パンチだ。
若干涙が出た。

任侠ヘルパーは、食べ出したら永遠に食える代物だと豪語していた。

塩分を、早急に取り入れねば。
任侠ヘルパーに伝えたい。
警棒の出番だと。



塩分を求め、二光堂 松坂牛コロッケを頼む。

コロッケだった。


強めのコロッケだった。
コロッケには、
マイルドコロッケ、
ミディアムコロッケ、
ハードロックコロッケ
があると、勝手に分類している。

ちなみにマイルドコロッケは、お弁当に混入する、フニャっとした衣で、自身がコロッケであることを放棄したコロッケのことだ。
ミディアムコロッケは、学校帰りに友達と食べたであろう、薄めで安い、故郷の味。

これは間違いなく、ハードロックコロッケだ。
コロッケである、意思を強く感じる。
衣が強い、口腔内に留まろうとする味の豊かさ、時々感じる松坂牛。コロッケの種は、ベロの上で主張している。

「お前、松坂牛くったことねーべや?」

「へぇ、お見それした」
完敗である。

ベロに一生残るであろうこの濃厚ハードロックコロッケの味と共に、残りの道のりを歩いていく。

私は見つけた。
冷やしきゅうりだ。

若い、尻と見劣りしない。



岩戸屋。
冷やしきゅうり松坂牛味噌を添えて。

いざ、食らう。

「!!!」

きゅうりの概念、どこいった。
オアシスの始まりである。
触感は、ない。
ワタクシ、歯、ありましたっけ?

涼だ。
夏だった。

相乗し、昇華してくれる食べ物の最上級である。塩味だけを求めた、先ほどの私の浅はかさ。
ノールックカウンターだ。
またもや、完敗した…

その後も、伊勢うどん、てごね寿司…。
生搾りオレンジや、ココナッツ。

埋もれたい
1番人気のカッパを注文して、
負けた気がする私。


痩せっぽっちのM.eriは、
心がぽっちゃりとした気がする。

満腹は、
隅っこにあった心を、
体の真ん中に戻してくれる思う。


食べ物には、
味があると、時々忘れてしまう。
誰かが、誰かのために作った食べ物に、
味がない訳ないのだ。



思い出せて良かった。
ありがとうおかげ横丁。

みんな、おいしかったよ。


さあ、計量の時間だ。
私は、目を疑う。


おや?
-1.5kg

重量が軽ければパンチ力は当然軽くなる。
だが、mosquitoには、mosquitoの戦いが方がある。私は、その戦い方をまだまだ探す必要がありそうだ。


新たな食べ物を求めて、M.eriの旅は続く。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?