隠す、正義。
あのこが好き。
こんなところが好き。
もっと話したい。
一緒にいたい。
彼女が欲しい。
Z世代を生きる青年は、こんな気持ちをひた隠しにして生きてきたらしい。
「草食を通り越して、絶食ですね。
好きだって表現することが恥ずかしいんですよ。
私を見て、才能あるでしょう?
可愛いでしょう?
ってSNSを使って自己表現はできるんです。
でも、誰かを好きだって素直に伝える力が、圧倒的に俺らにはないんですよ。」
現実、彼の友人に、彼氏や、彼女がいる友人は数える程度で、その分、セフレ率が圧倒的に高いと言う。
「虚飾…
飾って飾って、実は何にもない。それを見つかるのが怖い。だから、自己表現してる、ふりをしている。誰かに好きと言えないのも、そんな理由なのかもしれないなぁ。」
20歳か、そこら。
虚飾という言葉が出てきてしまう。
胸が痛くなる。
気持ちは、その人にしかわからない。
葛藤も、本心すら表出できないこの時代の若者は思ったより、身動きが取れず、苦しんでいるのかもしれない。
隠す正義、虚飾。
今の子は、発信する場所がたくさんあって、いいよね、と言う風潮が少しあったのかもしれない。
そして彼はいま、徘徊する年寄りに振り回されている。
「あなたのことが、好き。イケメン、私と手を繋いでくださる??」
彼はいま、酷く困惑している。
私は、それを何も言わずに、眺めている。