2.上級レベルのクラス例:N1対策_Pの場合
Pは日本在住の研究者で、中国語と英語が母語の外国人です。
日本の研究所に勤務していますが、仕事は全て英語でこと足ります。ですが、本人は日本に住んでいるわけですから、日本語は流暢であるに越したことはありません。
Pにとって、日本語は息抜きのための趣味の一つでもあります。海外の大学院の博士課程にいたときは、研究の合間のささやかな楽しみが日本語学習だったそうです。私が初めてPに会った時点で、やりとりは全て日本語で問題なくできていました。
Pの目標は日本語能力試験(以下、JLPT)の1級に合格すること。
クラスは23年9月から開講。1コマ90分。同年12月の試験に向け、大体2週間に1度のペースでクラスを行っています。
Pは自律的に自学自習ができます。すでに日本語は高いレベルにありますし、クラスの頻度が多くある必要はありません。私はPが自学自習をさぼることのないよう、定期的ににクラスを開き、Pがわからないところを埋めてゆけばいいわけです。
ただ、Pが何かを疑問に思ったとき、それについてすぐに質問できる環境は必要です。そのため、私はクラスの補助ツールとしてGoogle Classroom (以下G.C. 詳しくはhttps://support.google.com/edu/classroom/answer/6020279?hl=jaを参照のこと)を利用しています。
クラス開講時、私がPに指示したのは以下の5つです。
自ら書店に赴き、自分との相性を判断基準に漢字語彙、文法、聴解、読解各分野のJLPT1問題集を1冊ずつ選び、購入する。
購入した問題集を私に知らせる。
JLPT試験日までに購入した問題集を消化するスケジュールを自分で立て、すぐに実行に移す。解いた問題は必ず自分で答え合わせをし、間違いがあった場合は、何故間違いだったのかを自分で分析する。
疑問が自力では解けない場合や自分なりの分析に確証を得たい場合、G.C.の「授業」タブ内にアップしてある「課題」機能を使って共有しているDocファイルに、どの分野の問題集の何ページの何番かを明記した上で、質問を日本語で書く。
一通りし終えたら、その都度その「課題」を「提出」する。
PがG.C.から「課題」を「提出」すると、G.C.から私宛にそれを知らせるメールが届きます。届いてから12時間以内を目安に、そのファイルの内容を確認し、説明やコメントを入力して、Pに「返却」します。このやりとりは次回クラスまでの間、Pの都合に応じ、何度でも行います。Pがそれを読んで納得すれば良し。わからなかったり、納得できなかったりすることがあれば、それはオンラインクラスで顔をあわせたときに口頭で補足説明をします。
この方法を取っているのは、Pの疑問を全てオンラインクラスで消化するには、時間が少なすぎるからです。2週間でPが自習する量はかなりのものです。口頭でやり取りをしていると、新たな疑問が発生し話があちこちに飛ぶこともあり、時間がいくらあっても足りなくなってしまいます。
とはいえ、こちらがいい加減な説明を書いても、Pの理解が進まず、次回クラスを90分で終えることはやはりできなくなります。そのため、ファイルへの入力はPの質問に応えるだけではなく、それに付随して整理が必要な事柄や確認しておくべき事柄も書き記します。書いたことはずっと残りますから、いい加減なことは書けません。わかりやすく、簡潔に、適切な例示を示しつつ、漏れなく書くことを心がけています。
このクラスは、オンラインで行われるクラスよりも、クラスと次回クラスの間に行われるG.C.上のやり取りが肝なのです。