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32. 学習プラン作り

 JLPTの試験が終わりましたね。みんな良い結果だといいですね。

 さて、クライエントの何名かはひと段落ついて、自分たちの新たな学習プランを立て始めました。この状況での私の仕事は、彼らに新たな学習目標を明確に言語化させ、その達成のために何をすべきか、そして彼らが私をレッスンでどのように使うかを考えさせることです。…そーなんです。ワタクシ、大枠の学習プラン作りはクライエントに任せちゃってます。

 あるクライエントの新たな目標は、以下の2点でした。

  1. ことばを探さずに流暢に自己表現し、仕事や社会的な場面で適切な言葉遣いすること。

  2. 自分の意見を正確に表現し、他者との会話を円滑に行うこと。

 この方が考えたプランは、次のようなものでした。

  1. 毎回のレッスンに私と交代で、興味を持ったWeb記事を提供する。

  2. まず記事を黙読しながら、不明な漢字の読みや語彙を都度口頭で私に確認する。

  3. 記事の内容の要約を口頭で話す。

  4. 記事の内容について私とディスカッションする

というものです。
記事の提供を交代制にしたのは、自分はどうしてもIT系の話題ばかりを見てしまうので、話題や語彙の偏りを防ぐためだそうです。…なるほど。

 別のクライエントは、語彙を覚えるのが特に苦手です。音は正確に捉えられるものの、その音を意味のある語彙として認識するのが難しい。さらに、わからないことを凄まじくストレスに感じるため、レッスン内の説明は全て英語です。学習スピードも正直、極端に遅いです。
 ひらがなを読むのも辛いとのことで、シャドウイング教材を使って耳をとにかく使ってみてはと助言しました。すると、最初は音声を聞いて、都度語彙の意味を私に口頭で確認し、そこから文を理解して満足していました。
 ところが数日後に同じ音声を聞かせてみたところ、習ったはずなのに、語彙の意味も文の意味も思い出せず、大パニックで泣き出してしまいました。

 そこで、私は聴解ができない人の問題点と対策を示して、学習プランを練り直すように提案しました。

問題点1 使われている単語や表現を知らない
対策: 単語や表現の意味をイメージと結びつけて覚える。
正しい発音も一緒に覚える。

問題点2 正しい発音を知らない
対策: 音声を聞いて真似をする。発音の正確さだけでなく、アクセントやイントネーションなどの音の特徴を捉えることが重要。

問題点3 日本語の音の特徴に慣れていない
対策: 耳で聞いて、口を実際に動かす。リピーティングでも、オーバーラッピングでも、シャドウイングでも構わない。特に日本語の音調やリズムに注意する。

問題点4  単語と単語がつながることで音が変化し、聞き取れない。
対策: 問題3と同じ

問題点5 音のスピードが速すぎて理解が追いつかない
対策: 自分の情報処理のスピードを上げるために、意味をイメージしながらの速音読やシャドウイングを行う。段階的にスピードを変えた音読も効果的。

 クライエントは問題点1と5に焦点を当てました。
 そして新たに考えられたプランは、シャドウイング教材音声を私と2人で聞いてから、私が同じ文をゆっくり発話し、それをクライエントが繰り返して発話するというものでした。ただし、色々と条件がついています。

  1. 単語の音と意味が繋がるまで繰り返し練習し、音と意味がすぐに繋がるようになったら、シャドウイング教材音声だけで内容を理解できるか確認する。

  2. 理解できない場合は前のステップに戻り、理解できるようになれば、その音声スクリプトを読み上げる。中途半端に先に進まない。

  3. スムーズに読めるようになったら、再度音声に戻り、今度はその音声をシャドウイングしてみる。

 教室レッスンではなく、プライベートをしてつくづく実感するのは、学習者によって最も心地よい学習スタイルは、まさに千差万別であるのだなということです。だからでしょうか、自分で自分の勉強の仕方を自由に決められるとなると、クライエントって学習に責任を持ってくれるんですよね。
 ところが、この責任感、自分一人だけだとすぐに薄れるんです。そこでその責任感を持続させるために教師が必要となる。プライベートレッスンの教師の役割って、「教える」というというより、一緒に並んで歩くことのような気がします。

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