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美しい映像が奏でる自閉症のドキュメンタリー映画
『僕が飛び跳ねる理由』、私はこの映画の元になっている東田直樹が13歳のときに執筆した世界的ベストセラー『自閉症の僕が飛び跳ねる理由』を読んだ事がない。というよりも恥ずかしながら原作の存在さえ知らなかった。映画館に別の映画を見に行った時、偶然に映画予告を見て知ったのだ。そのとき見た、五感をくすぐられるような美しい映像と音の描写に引きつけられて、映画館に足を運んだ訳である。
映画は、インド、イギリス、アメリカ、アフリカのシエラレオネの4カ国で自閉症を抱えて暮らす5人とその家族のドキュメンタリーである。原作本を日本人の妻と一緒に英訳したイギリスの作家、デイヴィッド・ミッチェル氏も出演していて、自身も自閉症の息子をもつ親として体験談などを語っている。
英語で自閉症は、Autismというのだが、日本語で自閉症と漢字で書くと自分を閉ざす病と書く。出演している自閉症の5人は確かにうまく話せていないし、会話にならない、奇声をあげたと思えば、じっと黙ってしまう。だからといって彼らが自ら望んで自分の世界だけに留まっている訳ではない事を、ナレーションによって流れる東田直樹の言葉で理解する。彼らも世界と繋がりたいのだ。
映画の冒頭の東田の言葉で特に印象的だったのが、物を見るとき、普通はその形から入るのだけれど、自閉症の人はまずdetail詳細から入るのだそうだ。まず物を見る視点が違うからなのか、インドのアミットという少女の描いた絵は、とても独特で色彩感覚もすばらしかった。その彼らの視覚や聴覚をイメージや音で表現するために映画の中では、多くの美しい自然の映像や音が使われていた。映画を見ている私たちにも分かりやすく、自閉症の人たちの脳内感覚をうまく表現していて、これもジェリー・ロスウェル監督の芸術的手腕だと思う。
今まで世間一般には理解されにくかった自閉症の人たちの心の奥底の感情や、思考を感じ取れる一つの手段として、是非この映画は見ていただきたい。映画を見終わった後、自閉症者の未来を悲観するよりも、むしろ彼らの明るい未来が垣間見れたようで心が軽くなった気がする。私は前後が逆になってしまったが、原作の方も近いうちに必ず読んでみたい作品である。